−甘嘘別館−  
♪ハッピーエンドのBL小説を連載します♪

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Author:りょう
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「出会わなければ」には、実在のバンド、メンバーと似た人物が出てきますが、実在の人物とは一切関係ありません。

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恋の行方…31
 俺はカズミを腕に抱きしめたまま、突然目の当たりにしてしまった現実に落胆しながらため息をついた。カズミは驚いたように唇を離し、俺の腕の中から逃げ出そうとしてもがいていた。

「ちょっとあんた達、何してんのよ!」
 俺を睨みつけながら良美さんが言った。クールダウンした俺の頭が少しずつ機能を回復していった。
「何って・・・見ての通り」
 自分でも驚くほど冷静な声だった。俺の言葉を聞いたカズミは慌てたように俺を見上げた。そんなカズミの姿が愛しくて俺は思わずカズミに微笑みかけた。するとカズミは困ったような顔をしたまま俺の腕から抜け出してしまった。
「あ・・・姉貴と間違えたんじゃない?」
 カズミが良美さんに背中を向けたままそう呟いた。
「間違えてないよ。僕はカズヨシとキスしていたんだ」
 俺は良美さんに視線を向けてそう言った。
その言葉が良美さんに対する宣戦布告のように思えたんだろう、カズミは俺の後ろに隠れ体を丸めて小さくなった。

 良美さんは眉間に深いシワを寄せたまま俺を睨んでいた。俺も視線をそらすことが出来ず、良美さんを見つめていた。
 自分の恋人と自分の弟がキスをしている場面を見たら、どう考えても気分悪いよな・・・。
俺、良美さんのことも傷つけてしまったんだ。
悪かったと反省している部分もあるけれど、もう後戻りは出来ない。別れる理由にもなるだろうし、このまま流れにまかせてみよう。

 怒り出すか嫌味を言われるか、どちらかだろうと思っていたのだけど、数分間の沈黙の後、良美さんは表情を緩めて笑い出した。
俺は驚いて良美さんの顔色を伺ってしまった。
「あ〜もう、いやぁねぇ」
 良美さんは怒っている様子も無く、俺たちに生暖かい視線を向けていた。 
俺とカズミはその様子に驚いてしまい、口をポカンと開けたまま、良美さんを見つめていた。

「最初から、何となくそんな気がしてたのよね」
 良美さんが笑いながら言った。「最初から」って、良美さんは俺の気持ちに気付いていたって言うのか?
「最初って何さ」
 背中の方からカズミの不満そうな声が聞こえてきた。
「うちに来た時に、もしかしたらそうなのかな? って思ったんだけど」
 良美さんが俺の顔とカズミの顔を見比べた。
「何でだよ!」
 カズミが俺の肩に手を置いて少しだけ顔を覗かせながら怒ったように言った。

「あのねぇ、あんたの事を見る目が違ってたのよ。卓志の・・・」
 カズミを見ていた良美さんの視線が、一瞬鋭く光った。
「通学電車で惚れちゃった子に、私が似ていた・・・とか、そんな感じじゃないの、卓志?」
 良美さんが俺を見ながら首を傾げた。女のカンは恐ろしい――。俺の背中をツーっと冷や汗が流れた。
「なぁ、姉貴・・・ドアの向うで、聞いてたんだろ?」
 カズミの声は不満そうだったけど、良美さんには勝てないと思っているのか、俺の後ろから出てくることは無かった。
「さぁねー。どうかなー」
 ニヤッと笑いながら良美さんが答えると、俺の後ろに居たカズミがズルズルと後ずさりした。

「ゴメン、良美さん」
 俺は良美さんに向かって頭を下げた。カズミを悪者にするわけにはいかない・・・カズミは俺にキスされて迷惑だったに違いないんだから。
 良美さんからどんな反応が返ってくるだろう――俺は恐る恐る顔を上げてみた。
だけど、驚いたことに良美さんは俺を見てニヤニヤ笑いながら頷いているじゃないか。これはこれで怖い反応かもしれない。
「何だかなぁ〜。情けないわ私。弟に彼氏取られちゃうなんて」
 良美さんがフウとため息をついてからそう言った。俺はとにかく謝るしかないと思い、ベッドからおり、床に座ると額を床にくっつけるようにしながら土下座した。
「本当にゴメン。良美さん・・・」俺が謝ると、良美さんが俺の肩をポンと叩いて「卓志は別に謝らなくても良いわよ」と優しい声で言った。
ホッとした気持ちで顔を上げたら、さっきまで笑顔だった良美さんが鋭い目でカズミを睨みつけていた。

「別に・・・僕・・・取ったわけじゃないし・・・」
 カズミの声が震えていた。カズミが悪いワケじゃないのにと思い、俺は再び焦り始めた。
だけど、一瞬の沈黙の後、良美さんが声を上げて笑い出した。
「バーカ。カズミぃ、そんなに恐がらなくても良いわよ。私さ、やっぱり年下の彼氏はダメだわ。お金も持ってないし、デートの仕方も知らないんだもん。疲れちゃった。ね、別れましょ、卓志」
 良美さんが俺の方に振り向いてそう言った。
俺はすぐには何も答えられなかった。「ありがとう」と言うべきなのか、もっと謝るべきなのか・・・迷ったままだった。

「卓志にあげるわ。弟のカズミ」
 カズミに何の返事ももらっていないのに、良美さんにそんなことを言われてしまった。
俺としてはラッキーなんだけど・・・。
「そ、そんな・・・さぁ、僕はモノじゃないんだから・・・」
 カズミがベッドに立ち膝になり、慌てたようにそう言ったんだけど、良美さんは笑ったままで、カズミのそばに行って頭をグリグリ撫でた。
「何言ってんの、カズミ。あんた、今まで彼女も作れなかったんだから・・・これを逃したら、恋人が出来る機会なんて無いかもしれないのよ!」
 良美さんがそう言うと、カズミがムッとしたように良美さんの手を振り払った。
「そんなわけ、ないだろ!」
「そんなわけ、あるのよ!」
 だけど、やっぱり良美さんは強くって、すぐに言い返してからカズミの額をバチンと叩いた。

「良美さん、ありがとう。ありがたく、カズミを頂くよ」
 こんなチャンス二度と無いだろう――俺は、困惑しているカズミには悪いと思いつつ、良美さんの両手を握りながらそう言った。
「ちょっとー、そこのお二人さん、だから、僕はモノじゃなくて・・・」
 カズミが不満そうにそう言ったけれど、良美さんも俺もあえてそこには反応しなかった。

「じゃあね。実は私、これから合コンなのよ」
 良美さんがそう言って俺の肩をポンと叩いた。
「なぁ、姉貴ったら・・・」
 何も答えない良美さんに相変わらず不満そうなカズミ・・・ゴメンな、カズミ。良美さんの了解をもらったから俺は真剣にカズミにアタックするよ。
「それじゃ、卓志、カズミをよろしくね」
 良美さんがそう言いながら、俺に向かって右手を出した。
「まかせてよ、良美さん。俺、カズミを幸せにするよ」


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