−甘嘘別館−  
♪ハッピーエンドのBL小説を連載します♪

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Author:りょう
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「出会わなければ」には、実在のバンド、メンバーと似た人物が出てきますが、実在の人物とは一切関係ありません。

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恋の行方…27
 俺は目の前にある二つのケーキを交互に眺め、どちらも捨てがたいよな・・・と迷っていた。
フルーツたっぷりのタルトも魅力的だけど、このキラキラと輝くようなチョコレート、絶対美味しいに決まってる――。
「美味そうだな」
 カズミが再び俺の前に座るのを確認してから、もう一度ケーキに視線を戻し、そう言った。
「好きなほう食べて良いよ」
 カズミの楽しそうな声が聞こえて、俺は自分の頬が緩んでいくのがわかった。
「マジ? どうしようかな……このフルーツも美味そうなんだよな〜甘酸っぱそうで。でもこっちのチョコ
は多分ビターな感じだよな。洋酒がきいてて絶対美味いよな」
 目の前の2つのケーキを見比べながら俺は呟いた。迷う迷う。どちらかを食べたら、もう片方を食べられ無いだろうし・・・あぁ、でも、俺がフルーツタルト食べている姿を見たらカズミがまた笑うかもなぁ――。
 
「じゃあ、こっちのもらうな。チョコレートのやつ」
 俺はそう言いながら、光沢のあるチョコでコーティングされたケーキの乗っている皿を引き寄せた。
「良いよ。僕はどっちでもいいから」
 カズミがタルトの乗った皿に手を伸ばし、自分の前にコトリと置いた。
「おう。それじゃ、遠慮なく頂きます!」

 まず初めに俺は、まわりのチョコレートの部分をフォークの先で少しはがし、ゆっくりと味見した。その後、ココアスポンジを小さく切って口の中に入れた。ホンリ洋酒の香りがしてメチャメチャ美味い。
「マジ、うめーよ。あ、これってもしかして、隣駅に出来た新しい店のケーキじゃないかな? この間、朝のニュースの時にやってたよ」
 ケーキの下から見えている紙ナフキンを確かめると、店の名前が書いてあった。しかもそのケーキ屋は、この間から俺とおフクロが話題にしていた店だった。
そう、俺のケーキ好きは、おフクロ譲りなのだ――。

「へぇ。そうなんだ? 良く知ってるね」
「あぁ、俺のおフクロもケーキが好きでさ、この間おフクロと『あの店のケーキ食べたいよな』って話していたんだ」
 話をしながらザッハトルテを少しずつ口に運んだ。これがこんなに美味しいなら、タルトも絶対美味いだろうなぁ――そんな思いが、顔に出ていたのだろうか? それとも、無意識にタルトを見つめていたのだろうか…
「山崎、良かったら、僕のタルトも食べる?」
 カズミが俺の顔を見てニコッと笑いそう言った。・・・そして俺は、タルトの誘惑には勝てなかった。
「いらないの?」
 声が弾んでいるのが自分でもわかるくらいだった。

「うん。僕はそんなにケーキ好きじゃ無いんだよね」
 俺のためにそう言っているのか、本当にケーキが好きじゃないのかわからなかった。だけど、くれるというものを断わる理由も無い・・・。
「えぇ? ホントにイイの?」
「良いって。気にすんなよ」
 カズミが俺の前にタルトを置いた。俺は嬉しいやら恥ずかしいやらでカズミから視線をそらして礼を言った。

「甘酸っぱくて、良い香りだなぁ」
 手で持ってかぶりつきたい所だったけれど、とりあえずフォークを使ってタルトをサクッと切った。
「あ、まった!」
 フォークに乗ったタルトを口元に近づけ、パクッと食いつこうとしていると、カズミが急にそう言った。
「何だよ〜カズミ。今さら『やっぱり返せ』とかは無しだよ」
「違うけどさ…。一口だけ味見しておきたいなーと思ってさ」
 カズミが可愛らしくニコッと笑った。俺はカズミの笑顔を見た途端、図々しいことを思いついてしまった。

「良いよ。んじゃ、ハイ。あーんして」
 俺はカズミの目の前にフォークを差し出した。
「え?あ、……フォークかしてよ」
 やってる俺も恥ずかしいけど、カズミの方がもっと恥ずかしいらしい。だけど、俺はこのチャンスを絶対に生かしたいと思っていた。
「良いじゃん別に。俺とカズミしかいないんだし」
 自分でもワケのわからない理由を言ってるとは思っていた。
「…まぁ、そうだけど…」
 誰かがいるから恥ずかしい…とかじゃなくて、食べさせてもらうって事が恥ずかしいだろ? 気づいているけど、気づかないふりをして俺はフォークをカズミの口元に近づけた。
「はい、あーん」
 俺がそう言うと、カズミが渋々と言った感じで口をパクッと開けた。

「すっごいおいしい!」
 モグモグと口を動かした後、カズミが満面の笑みを浮かべながらそう言って目をキラキラさせた。
「カズミ、もう一口食べる?」
 俺はもう一度カズミの輝くような笑顔を見てみたくてそう聞いた。だけどカズミは顔をフルフルと横に振って、「もう良いよ。山崎、食べなよ」とアッサリ言った。
 残念だと思いながらも、カズミが口に入れたフォークを使えると思い妙にドキドキして顔がニヤケそうになってしまう俺だった。


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