今俺は、隣のクラスの女の子に告白されている。
もうすぐ冬休みだから、クリスマス用の恋人をゲットしようとしているのかな?
なんて思ってしまう俺なのだけど・・・。
「ねぇ、山崎君、彼女居なかったら、私と付き合って欲しいと思っているんだけど・・・」
寒いこの時期に、今にも雨が降り出しそうな空の下、屋上に呼び出された寒がりな俺は、凍えそうになりながら、彼女の告白を聞いていた。
目の前の彼女、村山静香(むらやましずか)が俯いたまま俺の返事を待っている。
この時の俺の正直な気持ち――面倒くさい事になってるな――。
俺、今彼女とか居ないけど、村山とは付き合うつもりもないし・・・あぁ、でも、告って来たのが他の女でも同じかな。今の俺は誰とも付き合う気が無いって言うか――
ボンヤリと考えていると、返事を促すかのように村山が上目使いで俺の事を見た。
――あぁ、村山って、かなり可愛いんだ――そうは思ったけど・・・
「悪い、村山・・・。俺、村山とは付き合えない」
俺はそう言ってペコリと頭を下げた。
――さっさと終わらせて、暖かい教室に戻りたい――
頭を上ると、村山の悲しそうな表情が視界に入ってきた。
多分・・・一大決心をして、告白しているんだろうから、付き合えないって言われたら、ショックだよな――なんて、俺はちょっと冷めた目で、目の前の村山の様子を観察していた。
可哀想かも知れないけど、俺、本当にダメ。村山は可愛いし、結構モテルんだから、俺じゃなくて、他をあたってよ・・・と言いたい気分だ。
「彼女とか、いるの?」
悲しそうだった村山の目が、一瞬鋭く輝いたように見えた。
「そうじゃないけど・・・」
俺のあやふやな言葉に村山が口を尖らせ、眉間にシワを寄せた。どんな表情をしても、可愛らしく見える奴って得だよな・・・俺はそんな事を思いながら俯いて苦笑した。
「ねぇ、彼女居ないなら、付き合ってよ・・・お願い」
両手を合わせ、首を傾げながら村山が言った。
女の子ってすごい。俺にもこれぐらいの度胸があったら良かった。イヤイヤ、俺の場合はこんなんじゃ通用しないよ・・・・・・。
「ゴメン。彼女はいないけど、好きな奴が居るんだ。今は誰とも付き合いたくないから」
そう、俺は只今乙女チックに片思い中。だから、他の奴は目に入らないって言うか何ていうか・・・。
「・・・そうなんだ。・・・それなら仕方ないや」
村山はそう言うと、パッと俺に背を向けて走り出した。
あぁ、良かった・・・これで開放される。もし、逆切れとかされたらどうしようと思ってたよ・・・。
さて、用が済んだから、教室に戻ろう――。
急に強い風が吹いて、体中に鳥肌が立った。俺は慌てて屋上の入り口から校舎の中に入った。
「よう、山崎」
声のする方に顔を向けると、入り口のすぐ脇に同じクラスの田部が座り込んでいた。
田部は俺が顔を向けると、ニヤニヤと笑いながら立ち上がった。
「何だよ田部、お前盗み聞きすんなよ」
俺が不貞腐れたようにそう言うと、田部は「ふん」と鼻をならした。
「人聞きの悪い事言うなよ。俺はただ、一服しようと思ってきたら、お前がコクられてたってだけだぜ」
田部がタバコとライターをこれ見よがしに俺の前に突き出した。
「はーん。そうなんだ?」
俺はムッとしたまま田部に言い返した。
「なぁなぁ、何で振っちまうの? 村山ならOKだと思うけどねぇ。可愛いし胸デカイし。お前、彼女居ないなら、とりあえず付き合っちゃえば良かったのに。もったいねぇなぁ」
田部が俺の肩に腕を回し、反対の手で俺の頭をグリグリと撫で回した。
「じゃあ、お前が付き合えよ。俺は好きな奴がいんの。お前聞いてたんだろ?」
俺は田部の腕から抜け出し、田部の腹を拳で殴る真似をした。
「おっと、あぶねーなぁ。俺は無理。美加ちゃん一筋だし」
田部が、幼稚園時代から片思いしていた美加ちゃんと付き合うようになったのは、つい二週間前だったっけ。こいつはチャライ見かけに似合わず一途なんだよな・・・。
「まぁ、お暑い事で・・・」
俺がふざけたように言うと、田部がニヤッと笑ってから「ま、俺の事は良いから」と言って、さらに俺の話を聞こうとした――。
「それよか、誰なんだよ、お前の片想い中の相手って? クラスの奴とか?」
「・・・違う」
言いたいけど・・・やっぱマズイよな――俺は心の中で葛藤を続ける。
「もしかして、3年のお姉様とか?」
「ちげーよ」
「お前、親友の俺にも言えないっていうのか?」
「だって、お前の知らない奴だもん」
「ふーん、そうなんだ? でも、気になるよなー。お前が好きになるって、どんな女なんだろうな」
田部が興味津々の目で俺を見ていた。いくらなんでも、やっぱり・・・今俺が好きな相手は、女じゃなくて男なんだよ・・・とはいえないよな――。
「お前にはヒミツ。お前、口軽いし」
そう。こいつ、チャラいわりに真面目なんだけど、どうも俺の事に関しては口が軽いと言うか、何でもネタに使おうとしているんじゃないか? って感じもするのだ。
「そんな事ねーよ。俺、お前が言うなっていうなら、絶対言わないって」
「マジ?」
一瞬、気持ちが揺らいでしまうしまったけど、俺の片想いはきっと、お前にとってはカッコウの笑いのネタ。
「まじまじ」
田部が興味津々の顔をしながら俺を見ている。
「でも、教えねー」
「んだよ、お前!」
田部が俺の頭をグシャグシャと両手で撫で回した――。
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