母さんが僕に向かって聞いてきた。
まったく・・・姉貴ったら、ギリギリの内容じゃないか・・・母さんが気づいてないみたいだから良いけどさ――ホントに気づいて無いよな――
「さぁ・・・? 全然わかんないけど・・・」
母さんの言葉にビクビクしながら、手に汗握っている状態だったんだけど、僕は冷静に言い返した。母さんに動揺している姿を見られたら絶対マズイもんなぁ・・・。
「お母さん、すみません。良美さんとは・・・別れることになったんですけど、カズヨシ君とはこれからも仲良くさせてもらいたいと思ってます――よろしくお願いします」
山崎が深々と頭を下げながら言った。
僕は母さんや山崎の言葉に冷や冷やしっぱなしだった。でも、まぁ、山崎の言葉に嘘は無いよな・・・うん・・・。
「あら、全然構わないわよ。良美ったら本当に好き勝手やってる子だから・・・ゴメンなさいね。山崎君も疲れちゃったのよね・・・きっと」
母さんが申し訳無さそうに言った。母さんもわかっていたんだ?って感じなんだけど・・・。
「え・・・いえ・・・まぁ・・・」
まっすぐ山崎を見ている母さんに対して、山崎が困ったように言葉を濁した。どう考えても、僕と恋人同士になった・・・なんて事を母さんに話すわけにはいかないもんな・・・。
「そうだよ・・・姉貴は・・・その・・・マイペース過ぎるし」
僕は山崎をフォローしようと思ったのだけど、言葉が上手く出てこなかった。まぁ、姉貴には、山崎と僕の関係をあっさり許してもらった・・・借りもあるから――。
「まぁ、でも、和美に良い友達が出来て、母さん安心したわよ。良かったわね、和美」
僕と山崎が微妙に戸惑っている事には全然気づいていない母さんが、僕に向かって心底安心したような笑顔を見せた。
「うん・・・良かったよ」
僕は隣にいる山崎に視線を向けながら答えた。
山崎は僕を見て、微かに頬を赤くした。
とりあえず、母さんには良い友達って事にしておかなくちゃな。先のことはわかんないけど、大事な友達ってことには変わらないから。
「じゃ、また連絡する」
「うん」
山崎が僕の肩をポンと叩いて玄関を出て行った。
――こうして僕と山崎の恋人としての付き合いが始まった――。
「カズミ〜彼ね、医大生なんだよー」
「あっそ。良かったじゃん」
「何よ、その冷たい反応」
「・・・だって、姉貴の彼氏になんて興味ないし」
「ふーん・・・興味無かったんだ? 卓志にも」
「え・・・いや、別に・・・」
その夜、合コンから帰ってきた姉貴は、例によって新しい男がもう見つかったらしく、明後日の土曜日にデートするとか言っていた。
で、姉貴曰く、今度の彼氏は山崎と違ってメチャメチャ金持ちなのだそうだ。そいつが、我がまま女の姉貴を上手く扱えるのかどうかはわからないけど・・・。
とりあえず、山崎の事を引きずってない姉貴には感謝かも――。
「姉さん、デートってどこに行くとかもう決めてんの?」
「んー? 彼が車で海に行こうか? って言ってたけど、買い物にも行きたいのよね」
「そっか。・・・車とか良いじゃん」
「まぁねー」
土曜日には僕も山崎と初デートだし・・・。姉貴達と街でバッタリなんてイヤだからなぁ・・・
なんて、密かに姉貴のデート先を街から遠ざけようとしている僕だった。
それにしても・・・まさか同性の恋人が出来るなんて、考えもしなかったよ・・・。
でも、まぁ、え〜と、こうやって、僕らは色んな事を経験しながら大人になっていくわけなんだよね・・・・・・
ん? 色々な経験?
・・・・・・うーん。
もしかしたらこれから、未知の世界が待っているかも知れない。
山崎と二人で 勉強していかなくちゃ――
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