山崎が僕の右手を握りながら言った。
「・・・あぁ、そうだよね」
僕は慌てて山崎の肩から頭をあげた。
山崎から体を離すと、僕は急に寂しいような気持ちになってしまい、自分でもかなり驚いた。
二人っきりで居たこの数時間の間に、僕はすっかり山崎の事を好きになってしまったのだろうか・・・。
僕って、こんなに流されやすい性格だったのかな?
イヤイヤ、同性同士だから自分でも気づかなかっただけで、山崎に告白されてやっと自分の気持ちに気づいたのかも知れない。
素直に認めよう。僕は山崎と居るのが好きなんだ・・・山崎が好きなんだ!
「明日、朝練サボろうかな」
山崎が帰る用意をしながらボソッと呟いた。
山崎の言葉に心臓がまたドキドキしてくる。凄く嬉しいけれど、それはいけないような気がする――。
「ダメだよ。山崎は走るの好きなんだろ?」
僕がそう言うと、山崎が不満そうな顔をしながら、ベッドに腰掛けたままの僕の前に戻ってきた。
「だって、今は走ることよりもカズミと居る方が好きなんだもん」
山崎が拗ねたようにそう言った後、僕の両肩に手を置きゆっくり体をかがめ、僕の額にチュッとキスをした。
そう言えば、やけにキスに慣れている感じがするんだよな・・・山崎って――。
嬉しいような恥ずかしいような気持ちになりながら、僕はさり気なくキスが出来る山崎の過去に、ちょっぴりヤキモチを妬いていた。
「あさって、会えるじゃない。映画観てからどっかに遊びに行こうよ」
僕がそう言うと、山崎が僕の頭の周りに腕を回し、ギュッと抱きかかえながら「どっか・・・・・・ねぇ」と呟いた。
山崎のおへその辺りに顔を埋めるような感じになっていて、僕は緊張のあまり冷や汗をかき始めた。
「あ、えっと、CD見に行くとかさ」
「うーん。そうだな。どこが良いか、お互いに考えておこう」
山崎の声が身体の中から聞こえてくるような変な感じだ・・・。顔を上げて山崎を見ると、山崎が僕を見て、メチャメチャ嬉しそうに微笑んだ。
山崎と二人きりになれる所に行きたいな・・・って思っている自分の気持ちに焦りながら、僕はもう一度山崎の身体に顔を押し付け、両腕を山崎の腰の辺りに回した。
「う・・・うん。了解」
「そうだ、アドレス交換しておこう」
しばらく二人とも黙ったままだったんだけど、山崎が「ホントにもう帰らなきゃ」って呟いた。
「あ、うん・・・そうだね」
僕達はお互いにどうしようもないもどかしさを感じながら体を離し、カバンから携帯を取り出した。
メアドの交換を終わらせると、二人で並んで階段を下りた。
山崎がスッと手を繋いできたんだけど、僕は母さんに見られないか気になってしまい、一人でドキドキしていた。
「あら? 帰るのね」
急に母さんの声が居間から聞こえて来て、僕が慌てて手を離すと、山崎が残念そうに溜め息をついた。
「はい、おじゃましました。ケーキとっても美味しかったです、ご馳走様でした」
「あら、良かったわ〜。また遊びに来てね。あ、そういえば、良美が変なこと言ってたのよ・・・何だか山崎君とはもう別れたからとか・・・」
母さんが困ったような顔をしながら居間のドアを開けた。
「あ・・はい。そうなんです。すみません・・・」
山崎が母さんに向かってペコリと頭を下げた。山崎が謝る事も無いような気がするなぁ・・・
「そうなの? まぁ、良美は何だか全然気にしていないみたいだったけど・・・でも、良くわからないこと言ってたのよね」
僕と山崎の事を見比べながら、母さんが首を傾げていた。
姉貴の奴、母さんに一体何を言ったんだよ? まさか、彼氏と弟が抱き合ってたから別れたとか何とか言ったんじゃないだろうな?!
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