俺はしばらく、我を忘れてあいつの横顔を見つめていた。
その時、音楽準備室のドアが開く音がして、誰かがあいつの側に近寄って行った。音楽の佐藤先生だ――。
神楽は先生を見つけると、恥ずかしそうに笑って何か話し掛けた。先生は微笑みを返えしながら、神楽の肩を軽くたたいて、ピアノの所に置いてある楽譜を見ようとした。すると、慌てたように神楽が楽譜をかくす――。俺は、急に2人のやり取りを見ているのが辛くなり、目を逸らした。
もしかしたら――あいつは、こうやって放課後を過ごしていたのだろうか? 音楽室で、佐藤先生と2人で……。そうか、あいつの好きな人って、訳ありの相手って――。
俺は音を立てないようにドアを閉めて、その場を離れた。
家に帰るまでずっと、2人の事が気になっていた。
夕食後、部屋にこもって音楽を聴いていた。しばらくして、ふと、ベッドに投げてあった携帯に目をやると、小さな光が点滅して、メールが来ている事が分かった。
─ 初詣、年越しで行かない? ─
携帯を開いて、最初に目に飛び込んできたのは、神楽からのメールだった。
年越しって……夜からみんなで、騒ぐのも疲れるのもなぁ――携帯を眺めながら考えていると、再びメールが来た。
― メール読んだ? 年越しすんの、立木と2人がいいんだけど ―
え、マジ?
― いいけど、何で? ―
送信してから、急に恥ずかしくなった。俺の期待する返事が来るはずは無いから――。
― また、欲しいのが、あるんだ ―
はぁ? またかよ。夜中に行くこたなでしょ? そう思いつつも、俺は、神楽の誘いは断われない。だって、俺はあいつの事が好きだから。あいつと一緒にいたいから。
― わかった ―
― サンキュ ―
2学期も無事に終わり、冬休みが始まった。
冬休みと言っても、コーチの予告通り、バスケの練習はあるし、おまけに、家ではおフクロから年末の大掃除の予定を入れられてしまったし――。
学校で勉強を……いや正しくは居眠りをしてた方がよっぽど楽なのに。
そして、部活が休みに入ると、毎日おフクロにこき使われる日々が始まった。
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