おフクロが何の迷いも無くそう言いきった。俺だって……俺だって……。
「……ったく」
ムキになって言い返してもきっと無駄なんだろう。うちのおフクロは、そんな母親だよ。
「何よ?」
黙ってしまった俺に、おフクロが不満そうな顔を向けた。
「ん……別に。あ、そう言えば、あいつ喜んでたよ、弁当美味いって。母の愛を感じるってさ」
微妙な敗北感を味わいながら、神楽のコメントを伝えておいた。見た目があんな弁当でも、かなり美味かったから、お礼は言わないと……と思うけれど、おフクロの態度を見ていると、どうしても自分の言葉として言う気にはなれなかったのだ。
「そりゃ、そうだよ。愛がこもってからね」
正直に伝えすぎた……おフクロが天狗になっちまう。ちょっとは謙遜しろ。
いい加減、付き合っていられないよ――。
俺は、まだ色々聞きたそうな2人をその場に残し、風呂に入ることにした。
夕食後、部屋に戻り、さっそく携帯を手に取った。
さっき観覧車で撮った写真を表示してみると、嬉しそうに笑ってる俺の横には、何故か微かに悲しそうな顔をした神楽が写っていた。あいつ、こんな顔していたんだ――俺は、心の中で呟いた。
もう一枚撮っておけば良かったかな――俺は、笑顔のあいつの方が、好きだから。
――好き――か……バカみたいだな、俺。
神楽に写真を送ると、すぐにお礼のメールが来た。
「今日は本当にありがとう」それだけだったけれど、あいつからのメールがやけに嬉しかった。
そして月曜日の朝、俺は、いつもよりウキウキした気分で学校へ行く用意をしていた。
「あら、悟、珍しいわね。こんなに早いなんて」
洗面所で顔を洗っていると、後ろからおフクロの声が聞こえてきた。
「お兄ちゃん、学校に行くのが楽しみなんだよね」
いつの間にか、梨子も側にいて、「神楽さんに会えるからねぇ」なんて呟いていた。
否定するのも面倒だったので「そーだよ」と投げやりに応えてやった。
「なーんだ。やっぱり?」
梨子にあっさりそう言い返されわれ、ちょっとムッとしたけれど、その後、放っておいたら、梨子はそれ以上何も言ってこなかった。きっと、からかい甲斐がなくなって、つまらなかったんだろう。
いつもこうやって、上手くかわしてれば、墓穴を掘らないはずなんだよな――溜息をついてから、タオルで顔を拭き、洗面所を出た。
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