「楽しかったよなー」
観覧車から降り、出口にむかって歩きながら俺が言った。
「あぁ……。なぁ、立木、さっきの写真、俺にも送ってな?」
隣から神楽の声が聞こえた。
「オッケー。あ、でも、そう言えば俺、お前のメアド知らなかったんだよ」
「そうだっけ? じゃ、これ、渡しておくよ」
神楽が財布から出した名刺には、名前や携帯番号の他に、かわいいキャラクターが印刷してあった。本当に、神楽らしいよな。
「今送る?」
「後でいいよ」
ちょっと考えてから神楽がそう言った。
今日の事を色々と話しながら帰る電車の中、神楽と居られるのも後少し。学校でも毎日会えるけど、それとは違う、何か特別な感じがした。
そして、楽しい時間はあっという間にすぎてしまい、2人で電車を降りると、それぞれ別々の方向に歩き始める。
「じゃあな。また学校で」
神楽が右手をパッと振った。
「おう」
「写真、よろしく」
「オッケ。後で送る」
リュックにしまっておいた「ウシ」を渡すと、あいつが嬉しそうに笑った。
「ただいま」
深呼吸してから玄関を開けると、台所の方からおフクロの足音、そして、二階からは妹の足音が一気に聞こえてきた。
そして2人は、俺の顔を見た途端、ニヤッと厭らしい笑顔を向けたのだ。
「どーだった? 神楽クンとのデートは?」
おフクロのニヤケた声が不気味だ。
「デートじゃないって」
2人の顔を無視しながら俺は答えた。
「ふーん。手でもつないだ?」
続けざまにおフクロが聞いてくる。
「アホか? 何言ってんだよ」
俺は、ムッとしたまま靴を脱いだ。
「ただの冗談なのに……。顔赤いよ、お兄ちゃん」
梨子もニヤニヤ笑っている。
「っせーなぁ」
ホントにデリカシーの無い女どもだ。
「ところでさ、お弁当は美味しかったでしょ?」
「あのな、何で、あんなハートだらけにすんだよ! すっげー恥ずかしかったじゃないか!」
「だって、かあさんは神楽クンが大好きだもん」
俺がマジに怒ってるっていうのに、おフクロの奴ったら、何が悪いのよ? って顔をしながら、堂々と言いやがった。
「だもん! じゃねぇよ」
くそう! 何だか羨ましいじゃないか。
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