「そうだシュン、これ、預かってたやつ。書き直しするんだろ?」
伊東さんが鞄から書類封筒のような物を取り出した。
「そうそう。あ、そうだ、鷹人これ読んでおいて。本の下書き。まだまだ、直すんだけど、こんな感じなんだ。後で俺も読みな直すから・・・」
シュンが、伊東さんから受け取った封筒を俺に渡した。
「分かりました。読んでおきます」
「じゃあ、行って来るね」
シュンが可愛らしく手を振った。
「いってらっしゃい。頑張ってください」
「うん頑張るよ。あ、そうだ、今日も来るからね。今日は、一度家に寄って着替えとか持ってくるから、少し遅いかも」
玄関を出かけたシュンが振り向いてそう言った。何だかすごく照れてしまう・・・。
「・・・わかりました」
「鷹人! もう、さっきから敬語ばっかリ。イヤだなぁ」
急にシュンが剥れたような顔をして、そう言った。
「でも・・・あの、伊東さんも居るし」
俺が伊東さんを見ると、伊東さんは困ったような顔をしながら、俺たちに背中を向けた。
「あー、えっと、私、聞こえませんし・・・何も見てませんから」
「それじゃ・・・行って来るね。鷹人」
「頑張って」
そう言った俺に、シュンは柔らかく微笑むと、両腕を俺の身体に巻きつけ唇にキスをした。
「ほら・・・もう行きますよ」
背中を向けていた伊東さんが、溜息を付きながら、俺たちの長い長いキスにストップを掛けた。
「ごめん、お待たせ。今日も張り切って歌うぞ」
シュンが嬉しそうにそう言った。
「よろしく頼みますよ。あと2週間の予定ですからね」
「えーまだそんなにあったっけ? ねぇ、レコーディング終わったら、一週間休みちょうだいよ」
「ダメです。先週渡したスケジュール通りですからね」
「ちぇ」
エレベーターに向うシュンが、笑顔で俺に手を振っていた。
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