−甘嘘別館−  
♪ハッピーエンドのBL小説を連載します♪

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Author:りょう
BL小説を書いてます。
よろしくお願いします☆
別館では18禁小説は連載しません。
本館へ行かれたい方は、コメント等でお問い合わせ下さい。
(メールアドレスをお忘れなく…)

☆おことわり☆ 
「出会わなければ」には、実在のバンド、メンバーと似た人物が出てきますが、実在の人物とは一切関係ありません。

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恋の行方…8
 その後、良美さんと携帯のアドレスを交換して、次の電車に乗り家に帰った。
俺は歩いている間中、フワフワの雲の上に居るような気分で、自分がどんな表情をしているのかもわからないような状態だった。
 家に帰った途端、母親に「気持ち悪い笑顔やめて」と言われて、自分が笑ったままだったと気づいたくらいで――。

「何、その変な笑顔・・・熱でもあるんじゃないの?」
 洗面所に手を洗いに行く途中、妹にも言われた。いつもの俺だったら「ウルセーよ」とか言いそうな場面だったのに、その時も俺は「別に」って言って妹をやり過ごしていた。
 でもその後、洗面所の鏡で自分の顔を見た時には、『本当に気持ち悪い笑顔かも・・・』と思ったけど――。
 でも、それ位、俺は上機嫌だったんだ。好きで好きでたまらなかったあいつと・・・イヤ、あいつに似ている良美さんと付き合える事になったんだから。

 これであいつの事を忘れられる――風呂に入った後、俺はそう思いながらベッドに寝転んでいた。
だけど、その直後、俺は電車の窓から外を眺めながら癒しオーラを放っていた、あいつの事を思い出していた。

 いつの間にか、あいつの事ばかりを考えていると、枕元に転がしてあった携帯がメールの着信を告げた。

「うゎ、良美さん、メールくれたんだ」
 ドキドキし始めた胸をおさえながら、俺は携帯を眺めていた。

――こんばんは。今日は嬉しかったよ。カッコいい卓志君に告白されて、超ドキドキでした――

 絵文字がたくさん入っていた可愛い良美さんのメールは、充分俺を幸せにしてくれた。
俺の頭の中を占めていたあいつの事も、一瞬にして忘れる事が出来た。

 携帯を抱きしめたまま、俺はしばらく、ベッドの上をゴロゴロと転がっていた。

「えっと『俺こそ、メチャ嬉しかったです。ありがとう』・・・で良いかな?あんまり長いのもウザイだろうからなぁ」
 ベッドに仰向けに転がってブツブツ言いながらメールを打ち込んだ。 マジ「嬉しかった」のは俺のほうだよ――。
 それにしても、良美さんがドキドキしていたなんて・・・全然思えなかったよな、あの時。
俺は、帰り際に俺の頭をポンポンと叩いていた良美さんを思い出していた。思い出すだけで、顔がニヤケて来る――。


――良かったら、土曜日に買い物に付き合ってくれる?――

 良美さんからすぐに返って来たメールには、そんな、嬉しい誘いの言葉があった。
……今週の土曜日の予定って――俺は、部活の日程表を出し、予定を調べてみた。午前中に練習があるけど、午後なら大丈夫だろう。って言うか、サボってでも良美さんに会いに行くぞ……。

――昼過ぎならOKです!――

 こんなにトントン拍子に話が進んでしまうなんて、ビックリを通り越して、やっぱり夢?って感じだ。

 ベッドの上で夢心地のまま、週末のデートの予定が決まっていた。
 男としての俺は、自分で計画したいような思いもあったのだけど、どうも年上の良美さんには遠慮してしまう感じだった。まぁ・・・仕方ない事なのかな・・・。
 付き合えるようになった、って事だけでも超ラッキーなんだから――ま、いいか。

 その後、興奮冷めやらず・・・って感じで、俺はしばらく眠れなかった。



 そして・・・数日間をウキウキした思いで過ごしているうちに、あっと言う間に金曜日の放課後になっていた。

「なぁなぁ、山崎〜 明日暇だろ?」
 田部が背中をポンポン叩いてそう言った。俺がいつも暇だと思うなよ――って心の中でニヤケながら思っていた。
「暇じゃねーよ。部活あるし」
 鞄に教科書を詰め込みながら、俺は緩みそうになる頬を必死に引っ張り上げた。
「部活って午前中だけだろ? 美加が友達連れて来るから、俺にも誰か連れて来いって言ってさぁ」
 隣の机に腰掛け、俺の机をトントンと蹴飛ばしながら田部が言った。
美加ちゃんの友達と一緒に遊びに行こうとか言う話を、前に田部がしていたような気がする。ボンヤリとその話を聞いていた俺は、暇だったら付き合うとか答えてしまっていたかも――でも、明日は本当に暇じゃないんだぜ。

「悪い。午後も予定あるんだ」
 気持ち良いよな、暇じゃないって言えるって!
「何だよ〜、いつも暇なくせに。せっかく誘ってやったのになぁ・・・。あ、まさかデートとか?」
 田部が急に机から降りて、俺の近くに詰め寄ってきた。
「そ、デート」
 その言葉を言った途端、俺は思い切り笑顔になっていた。そして田部は、俺が笑顔を向けた瞬間、驚いたように俺のそばから飛び退いた。

「おいおい、いつの間に彼女作ってんだよお前?」
「つい最近だってば。んじゃ、俺部活だから」
 鞄を肩にかけ教室を出ようとすると、田部がノコノコ俺に付いて来た。
「どこで見つけたんだよ? ってか、もしかして前に言ってたやつ?」
 俺の緩みきった頬を引っ張りながら田部が言った。
「ん・・・まぁ、そう・・・」
 俺がそう言った途端、田部は俺の頬を引っ張っている指に力を入れた。
頬の痛みを感じないのは・・・夢だから? それとも、逆上せきっていて感覚が麻痺しているから?

「黙ってるなよ〜そういう話は」
 頬から手を話した田部が、今度はムッとしたように俺の脇腹を拳骨でグリグリした。
「照れくさいじゃん・・・なんかさ」
「何が照れくさいだよ。俺なんて美加ちゃんとの出会いからずっと教えてやってんのに」
 田部がそう言いながら、廊下に落ちていた誰かの消しゴムをポンと蹴飛ばした。
「お前の場合は『教え過ぎ』。美加ちゃんに会ったらどんな顔したら良いんだよ?ってな事まで話すじゃん。俺はそう言うのは出来ないからな」

 まず最初に惚れたのは――あいつ――しかも、あいつは男だったんだよ。それで最近、あいつに似てる女子大生に会ってさ・・・なんてそんな話、田部には絶対言えるわけないだろ? だから、今後聞かれても適当に誤魔化させてもらうからな。

 ま、取りあえず、明日は初デート。何着て行こうかな?――

 部活に行くまで、俺の隣でずっと田部が何かを言っていたけど、俺は明日のデートの事で頭が一杯だった。



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恋の行方…7
 2駅くらい過ぎると、良美さんの友達が電車を降りていった。

 こんなチャンスもう無いかも知れない。どうにか話しかけるきっかけはないだろうか――そんな事を考えながら、俺はさり気なく良美さんの居る方に振り返ってみた。
 良美さんは、カバンの中から文庫本を取り出すと、片手で手すりを掴みながら、もう片方の手で本を持ち読書し始めた。
 
 本を読んでいる横顔を見つめているうちに、電車は良美さんの降りる駅に着いてしまった。良美さんは右手に本を持ったまま、人の流れに乗ってドアのほうに歩いて行ってしまった。
彼女が電車を降りようとしている姿を見ているうちに、俺は無意識にドアに向かう人に続いて電車から降りようとしていた。

 気がつくと俺は、ホームの上に立っていた。そして俺は、改札の方に向かって歩き出した良美さんの後姿を眺めながら――これからどうしよう――って戸惑っていたのだ。

 ――次の電車に乗って帰ってしまう前に、今の俺に出来る事って・・・?

 良美さんの背中を呆然と見送っていると、後の方から人をかき分けながら走ってきた学生が、良美さんにぶつかった。
「あっ」
 学生にぶつかられた瞬間、良美さんが手に持っていた文庫本を地面へ落としてしまった。
良美さんが困ったように本の行方を追っていたのに、ぶつかった学生は何も言わず、そのまま走り去って行った。

 俺は一瞬、その学生を追いかけようかと思った。でも、それよりも、誰かに蹴飛ばされてどこかへ行ってしまった良美さんの本を探した方が得策のように思えてきた。

――チャンスだよ!――

 頭の中で声がした。俺は良美さんの落とした本を探し、急いで近寄っていった。
そして俺は、良美さんがその本の落ちている場所に着く前に、良美さんの本を拾う事が出来たのだ――。

「あの、それ・・・」
 俺の側まで小走りできた良美さんが、遠慮がちに声をかけてきた。
「はい、どうぞ。これ、貴方のですよね」
 俺がそう言うと、良美さんが嬉しそうにニッコリ笑った。可愛い――俺は良美さんの顔をジッと見つめてしまった。
「どうもありがとう」
 俺から本を受け取ると、良美さんがそう言ってそのまま改札の方に歩いていこうとした。

「あ、あの・・・」
 ドキドキする胸を押さえつつ、俺は良美さんの肩に手を置いて、彼女が行ってしまわないように引きとめた。
「はい?」
 良美さんがビックリしたように俺の方に振り返った。
「あの、すみません」
 引き止めてはみたものの、俺は何て話をしたら良いのか迷っていた。

「何?」
 良美さんが俺の顔をジッと見上げている。

――ヤバイ・・・頭の中真っ白だ――

「・・・いま時間ありますか?」
 口をついて出てきた言葉は、まるで妖しいキャッチセールスの誘い文句のようだった――。
「え・・・まぁ、少しなら」
 良美さんが少し困ったような顔をしながら答えた。警戒されているよなぁ――と思ったけれど、ここまで来たら頑張るしかない。
「ありがとうございます。えっと、その・・・すぐに終わりますから」
 良美さんが俺をジッと見ながら、何か考えるような顔をしていた。うわぁ、顔が熱くなる・・・って言うかもう真っ赤なんじゃないだろうか?

「あの・・・どこかお店に入る?」
 良美さんがそう言って、固まったままの俺の肩をポンと叩いた。 かっこ悪いなぁ・・・俺。 
「い、いえ、すみません。俺、今日は金持ってないし・・・」
「わかったわ。じゃあ、駅のベンチにでも座ろうか?」
 そう言って良美さんがガチガチになっている俺を、さり気なくベンチまで連れて行ってくれた。

「話って何?」
 二人で並んでベンチに腰掛けると、良美さんが早速聞いてきた。早く話をすませたいんだろうな・・・。
「あの・・・もしかして、大学生さんですか?」
「・・・えぇ。そうよ。君は高校生だね?」
 彼女が小首を傾げながら答えた――うわぁ、ヤバイ。ドキドキする!

「はい、そうです」
 俺は背筋をピンと伸ばしてそう答えた。すると、良美さんはクスッと笑ってから「可愛いねぇ」と言った。その言葉を聞いた途端、俺の心臓の鼓動はますます早まってしまった。

 可愛いのは良美さんの方ですよ・・・心の中で俺は呟いた。

「あの、名前・・・教えてもらっても良いですか?」
「え・・・良いけど・・・」
 どういうつもりなのかな? って探るような目をしながら良美さんが俺を眺めていた。
「あ、俺は山崎卓志、東高の3年」
「私は須藤良美です。K女短大の1年よ」
 俺が名前を言ったら、安心したように良美さんが名前を言ってくれた。K女短大だったのか・・・俺の高校から、そんなに遠くないじゃないか――

「あの、それで・・・突然なんですけど、良美さんって、彼氏とかいるんですか?」
「んー、今は居ないよ。何で?」
 ここまで来たら、頑張れ俺! 
「良かったら、俺と付き合って欲しいと思って」
 俺の一世一代の告白に、彼女は軽く笑いながら「それ何かの冗談? 友達と賭けてるとかじゃないの?」
そう言って周りを見回していた。
 初対面の人間に急に「付き合って欲しい」なんて言われたら、警戒するのも当たり前だよな。

「違いますよ。俺、本気です。あの、電車で見かけて、ずっと憧れてて」
 良美さんの少し冷たい反応にめげそうになったけど、それでも俺は頑張った――ホントは、憧れていたのは、良美さんにじゃなくて、あいつだったんだけど・・・。
「ふーん、そっか。ありがと。私、年下君と付き合ったこと無いんだけど・・・たまには良いかもね」
 良美さんがそう呟きながら頷いた。
「ホントっすか?」
「うん、良いよ。付き合ってみようか?」

 バンザイ! 俺ってすごいかもしれない。
と言うか、よくそんな事しちゃったな・・・って言うか、よく良美さんが付き合うって言ってくれたなぁ・・・って言うか・・・
 それにしても、付き合うって言ったって、どうするんだよ、俺――
 

 良く考えたら、良美さんって結構軽い人なんじゃないか? って気づきそうなものだけど、その時の俺は、良美さんが付き合ってくれると言ってくれた事に、ただただ舞い上がっていた。


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恋の行方…6
 あいつに会える日を待ち遠しく毎日を過ごしているうちに、高2の3学期はあっと言う間に終わってしまった。短い春休みが過ぎると、俺はめでたく高校3年生になっていた。

 そして・・・それは、高3になってすぐの頃だった――。

 俺はいつものように家に帰るために電車に乗り込んだ。
 部活帰りで疲れていた俺は、出来れば座りたいと車内を見回していた。すると・・・
俺は少し離れた座席に、周りの友達と一緒に楽しそうに笑っているあいつの姿を見つけてしまった。
 学校帰りにまであいつに会えるなんて、超ラッキー! とは思ったものの・・・周りに居るのは女の子ばかりじゃないか・・・あいつって女友達の方が多いのか? 
イヤ・・・待てよ、考えてみたら、あいつに彼女とかがいても不思議じゃないんだよな。今までそんな事考えてもみなかったけど――
 と、1人で必要以上に落ち込みそうになっていた。

 ん? あいつによく似ているけれど、あれはあいつじゃない・・・。
化粧もしているし、服だってどう見ても女の子の服。おまけに、ちゃんと胸があるじゃないか――。
 俺は思わず安堵の溜め息を付いていた。

 多分、大学生ぐらいじゃないかな? それにしても、パッと見はとてもよく似ている。あいつよりも、少し目がキツイ印象だけど――。可愛らしいあいつに比べると、どちらかと言えば綺麗系だろうか・・・まぁ、化粧をしているからそう見えるのかも知れない。

 俺はその後、その人が見える側のドアの所に移動し、さり気なくその人達の様子を眺めていた。
 友達の話に相槌を打ったり、ケラケラ笑ったり・・・可愛いよな――あいつも笑ったら、あんな顔になるんだろうなぁ。そういえば、あいつの笑顔を見た事が無かったっけ――って、電車の中で1人で笑ってたら怖いけどさ・・・。
 そんな風に考えていたら、急にその人が笑顔のまま俺の方にチラッと視線を向けた。俺は焦ったけど、急に目をそらすのも変な気がして、さり気なく視線を上にずらし、彼女の後ろの窓から外を見ているふりをした。
 俺は一瞬、彼女の笑顔が俺に向けられていたような気がして、その後ずっと心臓がバクバクしたままだった。

 もしかしたらこれって、運命の出会いなのかも知れない・・・
きっと、俺が不毛な恋に走らないように、彼女と巡り合わせてくれたんだ――そんな勝手な事を思いながら俺は、再び話に熱中し始めた彼女をボンヤリと眺めていた。

 そして、電車がいつもあいつの乗ってくる駅に着いた時だった――
「良美! ほら、おりるんでしょ」
 彼女の友達の1人が彼女の肩をポンと叩いた。
「あ、ゴメン! じゃあ、またね」
 話しに夢中だった彼女が慌ててその友達と電車を降りて行った。
残っていた他の友達が、笑いながら電車を降りた彼女達に手を振っていた。

 ――良美さん・・・か――
 彼女の名前を聞けて嬉しくなっていた俺は、その後自分の降りる駅で電車を降りそこねてしまった。電車で戻っても良いんだけど、それほど歩く距離が変わらないので、俺は次の駅から歩いて帰る事にした。
 
 いつもより長い道のりを歩く間、俺はずっと「良美さん」の事を考えていた。
 朝会うあいつが、あの人だったら・・・そうすれば俺は自分がホモになったんじゃないか? とか悩まずにすむのに・・・。田部にだって、堂々と話が出来るんだけどな・・・。
 ・・・そうか、あいつじゃなくて、彼女に会えるようになったら、俺は不毛な恋から卒業出来るかも・・・でも、朝の時間と違って、帰りの電車が同じになるのなんて、可能性としてはかなり低い――だけど、またこの時間の電車で会えたとしたら、本当の運命の出会いなのかも知れないぞ・・・。

 それから俺は、妙にウキウキした足取りで、家に帰って行った。



 そして・・・

 ――運命なんて言葉に酔っていた俺って、ちょっと恥ずかしいよな――

 一週間後、俺は思い込みの激しい自分をバカな奴だったと思い始めていた。

だけど――

「超面白かったね、あの人。良美はどう思う?」
「えー、でも私はパスだよ」
「せっかく途中で降りて、お茶付き合ってあげたのにー」
「だってぇ」

 今日も会えなかったなぁ――そう思いながら電車のドアのところに立って外を見つめていると、後ろの方から、そんな会話が聞こえて来た。
 ドキドキしながら振り向くと、良美さんと友達がすぐ近くの吊革にの所に立っているのがわかった。

――今の駅から乗ってきたんのかな?――

 これは奇跡かもしれない、イヤ、やっぱり運命?
 萎みかけていた俺の気持ちは、満開の花盛りになっていた。


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恋の行方…5
 電車を降りると、いつものように駅から学校までダッシュする。これも朝練のうちだ――そう考えながら、俺は5分間のランニングをすませ、校門をくぐった。
 駅から走ってくれば、校門から下駄箱までは少しゆっくり歩いても間に合う。
 あいつに会うために遅い時間の電車に変えた俺だったけど、今ではすっかりリズムが決まり、遅刻する事が無くなっていた。

 それは、3学期も残すところ後1ヶ月となったある日の事だった。
「髪型変えたんだなぁ」って、電車の中で見たあいつの事を考えていると、後から誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。

「よー、おはよ! 山崎」
「おう。何だ、田部かよ。遅いじゃん」
 田部は、いつもはもっと早く来ているはず。珍しいこともあるものだ。
「あー、単純に寝坊。美加ちゃんの夢を見てたらさ、起きた時に大変な事になっちゃってて」
 嬉しそうな声で田部が話し始めた。

「はいはい。わかりましたよ」
 田部は美加ちゃんの話をし始めると長いので、俺はさっさと聞き流すことにした。
「んだよ、反応薄いなぁ。お前だって大変になる事あんだろ?」
 ムッとしたような声で田部が言った。
「んー? 別に」
 本当はある。さすがにマズイとは思うんだけど・・・あいつの夢見て・・・って事がここ最近、何度もあった。
「なんか、お前、余裕じゃん? 変だなぁ・・・。お? 山崎ぃ、こんなキャラに合わねーの、誰にもらったんだよー」
 俺のカバンを引っ張りながら田部が大きな声で言った。朝から一気に疲れた気分になるぜ。

「お・・・あれ?」
 田部が引っ張っているカバンを引き戻すと、電車を降りる時にはカバンの中に隠しておいたはずの俺の大切なヒヨコちゃんが、カバンの外に出てしまっている事に気づいた。
「何、誤魔化そうとしてるわけ?」
 イヤらしい笑顔を浮かべながら、田部が言った。
「別に誤魔化してないし」
 俺はカバンのチャックを開け、ヒヨコちゃんを田部の目から守るためにカバンの中にしまい込んだ。

「なぁなぁ、冬休み中に告白でもしたとか?」
 校庭を歩きながら、田部がハイテンションのまま言った。そばを居た奴らがチラチラ見ながら、ゆっくり歩いている俺達を追い越して行った。
「テメー声でかすぎだよ」
 俺は恥ずかしくて、田部の頭をバシッと叩いた。
「なぁ、前に言ってた人だろ?」
 田部は俺の意思をまるっきり無視して、話を続けた。
仕方なく、俺は煩い田部の視線を避けるように横を向こうとした。すると運悪い事に、冬休み前に俺に告白してきた隣のクラスの村山が俺達のすぐ側を歩いていることに気づいてしまった。
「わ・・・」
 小さい声で呟いて、慌てて村山から目を逸らすと、俺の変な行動に気づいた田部が、そばを歩いていた村山を見つけてしまった。

 村山は俺が「付き合えない」って言ってからも、何度か手紙をくれたり、一緒に帰ろうと誘ってきたりしていたのだ。

「そっか、彼女が出来たんだ?」
 田部が村山をチラッと見ながら、わざとらしく大きな声で言った。
「ちが・・・」
「そりゃ良かった。もうやっちゃったんだな。だから余裕なわけか」
 ガハハと笑いながら、田部が俺の背中をバンバン叩いた。
 田部の声を聞いた村山は、「何よ!」と言い捨てると、パッと走り出してしまった。

「イヤ、そんなんじゃなくて」
 俺は焦って田部に言い返した。
村山には俺に彼女が出来たと思われても構わないけれど、事実じゃない話を田部に広められたらやっぱり困る。
「何々? そうじゃなくて、告白されちゃったの? ヒヨコちゃんに」
 田部に、ヒヨコちゃんと言われた途端、あいつの顔を思い出し、俺は頬が熱くなる思いがした。
「だから、そうじゃなくて・・・」
 俺は必死に言い返そうとしたのだけど、田部が話をするすきを作ってくれなかった。
「わーぁ! 山崎くんたら、ホッペが真っ赤になっちゃって・・・図星か?」
「全然違うって。告白なんてしてないし、されてない。自分で買ったんだよ、ヒヨコちゃん」
 この事実を言うのは、もっと恥ずかしかったのに――俺はブツブツ文句を言いながら下駄箱に向かった。

「なぁ、どうしてまた、ヒヨコなわけ?」
 教室に入って、席にカバンを置くと、田部がまた煩く付きまとってきた。
「え? ・・・店で一目ぼれ」
 俺は説明が面倒なので、そう答えて話を終わらせようとした。だけど――
「ふーん。可愛い? お前の好きな人って」
 田部が簡単に諦めるわけも無かった。
「可愛い方かな・・・」
「どんな奴なんだよー気になるよなぁ」
「まぁ、そのうち・・・な」

 そのうちも何も、田部には言わないさ――



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恋の行方…4
 冬休みが始まる前、俺は田部から、彼女の話ばかりを聞かされていた。
「クリスマスには美加ちゃんと大人の階段を上る」とか、「新年の最初に美加ちゃんに会いたい」とか「初詣には美加ちゃんに着物を着せてみたい」とか・・・そんな話を何度も聞かされていた俺は、とってもブルーな気持ちで冬休みを迎る事になってしまった。
 こんなに惨めな気分になるのなら、村山に告白された時に、断わらずに付き合ってみれば良かったのかも・・・などと思い始めてしまった俺は、即効でバイトを決め、冬休みを忙しく過ごす事にした。

 バイト場所は、夏休みの間もバイトしていたコンビニなので、新しく覚えることはそれ程無く、すんなり俺のバイト生活を始める事が出来た。
この時期は普段のバイトやパートのおばちゃん達が休みたがる時期だし、時給もアップするので、出来る限りシフトに入れてもらう事にした。

「山崎君、昨日これ預かったんだけど・・・」
 バイトを始めて3日目、ロッカーの前で制服に着替え終わった頃、この時間で帰るパートの岡田さんが、可愛い絵のついた小さな紙袋を俺に向かって差し出した。
「え? 誰からですか?」
「西林さんからよ。西林さんったら、『私、これからずっとお休みだし、私が戻って来る頃、山崎君は学校始まって来れないだろうし・・・』なんて、グズグズ言ってたわよー。あんたもすみに置けないわねぇ」
 西林さんはコンビニでバイトをしながら絵の勉強を続けている人だ。昨日も入れ替わりだったから、あんまり接点が無いんだけど――。
「イヤ、別に・・・何もないですよ・・・」
 わけがわからず、俺がそう言ったら、岡田さんがガハハと豪快に笑いながら、俺の背中をパンと叩いた。岡田さん、良い人なんだけど、いかにも近所のおばちゃんって言うか何て言うか・・・。

「あの子、いい子だから・・・って言っても、山崎君より8つ位年上だけどねぇ。うーん、ちょっと惜しいわねぇ」
 岡田さんが何を言いたいのかも良くわからないまま、俺は岡田さんが差し出している紙袋を受け取った。
「それじゃ、私はちゃんと渡したからね。今度、西林さんにお礼を言いなさいよ」
 岡田さんはそう言うと、タイムカードを押してから嬉しそうに帰っていった。
「何だろう?」
 気になって袋を開けてみると、そこには手紙とペンとガムが入っていた。
そのペンは、昨日俺が帰るときに西林さんに貸してあげたものだった。

――昨日はありがとう。マネージャーはケチだから、ペンを忘れたら、また嫌味を言われる所だったわ。助かりました♪ 西林――

「何勘違いしてんだよ・・・岡田さん・・・」
 俺は苦笑いしながら、ペンをポケットに入れて、マネージャーの待っているレジへと向かった。



 バイトをしていたら、可愛い女の子や綺麗なお姉さんもお客で来るから、少しは気が紛れるんじゃないだろうか・・・というか、もしかしたら、あいつよりもいいと思う相手が現れるんじゃないか? なんて、淡い期待を胸に頑張っていたのだけれど、俺ときたら、全然目移りする事も無く、今時の派手な女性を見るたびにあいつの事を思い出すばかりだった。

 バイト以外の予定が無かった俺は、クリスマスも新年も、家族と一緒に、まぁ、それなりに平和に過ごした。でも、健全な高校生としては、少し虚しいって気持ちも残ってしまったけれど――。


 そして、学校が始まる前日、俺は部活用の新しいシューズを買おうと思い、バイトで稼いだ金を持って街へ出かけた。
 まずはスポーツ洋品店で、シューズや靴下などを買い、その後、何か面白物でも無いかと、ハンズの中を見てまわる事にした。

 上の階からジックリ見て来たのだけれど、欲しいものは値段が高くて手が出せなかった・・・と言うか、バイト代をはたいてまで必要なものだろうか? って考え、結局諦める事にした。
 
 それから――エスカレーターで2階に下りて来た俺は、ストラップやキーホルダーが沢山並んでいる一角に、小さなマスコットのコーナーがあるのを見つけ、何の気なしにそこに近づいて行った。

 ――わ、何かこれ、あいつみたいなんだけど――

 猫やブタのマスコットの中に埋もれていた、黄色くてフワフワした可愛いヒヨコが、俺には眩しく輝いて見えた。
そのヒヨコは、まわりのマスコットに押されながら、売り場の透明の棚に顔をくっつけるようにしてぶら下がっていた。その姿が、電車の窓からジッと外を見つめている、あいつと重なった。

 マジ可愛い、超癒し系だよ・・・。

 俺は、ブタに取り囲まれていた、そのヒヨコをそこから救い出すと、少しドキドキしながらレジに向かった。
「プレゼントですか?」
 ヒヨコをレジの台に置くと、店員がニッコリ笑って聞いてきた。
まさか自分の為に買うんじゃないよね? って言っているように聞こえてしまった俺は、思わず「はい」と答えていた。
 これって、やっぱり俺には似合わないのかな――でも、ま、良いか? 部活の先輩も、顔に似合わないキティを鞄に付けてたし……。


 家に帰ると早速、学校に持って行っているかばんにヒヨコを付けた。
俺らしくない・・・って、自分でもわかっているんだけど、この可愛らしいヒヨコが、あいつのかわりに俺のそばにいてくれる、そんな風に思うと、少しは自分の暴走しそうな気持ちも落ち着くような気がした。
 それにしても、こんなに乙女チックな事をするようになるなんて、昔の俺は考えもしなかっただろうなぁ――。


 そして、翌日。
 3学期が始まった。
 久しぶりにあいつに会う事が出来た。その日は一日は、何をやっても楽しく思えていた。

 それにしても――あいつの事で左右されてしまう俺って、ホントにどうなんだろうなぁ・・・。
 俺、このままで良いのかな? 男に惚れて、そいつに似てるってヒヨコのマスコットなんか買ってしまって――。

 俺、何か間違えてないか・・・?


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コメントありがとうございます。
コメント頂いた皆様、ありがとうございますキラキラ

キャラに対する感想まで頂けて、とっても嬉しかったですjumee☆LoVe3
これからもよろしくお願いしますハート

尚、本館のURLを知りたい方は、連絡の出来るメールアドレスを知らせて下さいませ。
(本館は18禁ですので、年齢に達していない皆は、18才になるまで我慢して下さいね)

りょう
恋の行方…3
「よっ、山崎」
 今朝はあいつに会えなかったな――そう思いながらボンヤリとしていると、急に田部のだみ声が聞こえて来た。
「ん・・・何?」
 いつもの時間の電車に乗ったのに、何で居なかったんだろう? 風邪でもひいたのだろうか――朝練以外の日に会えないと、妙にへこむんだよな……。

 返事をしたものの、あいつの事を考えていた俺は、目の前で俺に話しかけている田部の声ががちっとも耳に入ってこなかった。

「おい、山崎!」
 反応の無い俺に腹を立てた田部が俺の頭をパコンと叩いてきた。
「いてーなぁ」
 俺が顔を上げて田部を睨むと、田部は呆れたように溜め息をついた。

「なぁ、お前、最近、妙にボケーっとしてる事多いよな? 大丈夫かよ」
 田部がそう言いながら俺の隣の席に座ると、心配そうに俺の額に手をあて、自分の額の温度と比べた。
「わっ、大丈夫だって! 何か、そういうことする田部ってキモイ」
 俺は慌てて田部の手を払い除け、ガタガタと椅子ごと逃げ出した。
「何言ってんだよ、アホ。人が心配してやってるのに!」
 田部がムッとした顔をして、俺の机の上にあった教科書とノートを俺めがけて投げつけてきた。
「人の物投げるなよ! ったく」
 俺は、ブツブツと文句を言いながら、足元に落ちている教科書を拾おうと体を屈めた。

「恋でもしちゃっているとか?」
 顔を上げた途端、田部にそう言われ、俺は焦って手に持った教科書を落としてしまった。
「そんなんじゃないって。別に何でもない」
 俺は体を屈めたまま、ぶっきらぼうに答えた。
 
 あいつの事を考えると、妙に元気になったり気持ちが沈んだり――そんな感じなんだよ…。
ってこれはやっぱり「恋」なのか?
 ヤバイよなぁ。一番仲がいいとは言え、田部にだって相談出来ないってば……。

 教科書とノートを拾うと、俺は何も無かったかのように、椅子を引きずりながら田部の隣に戻った。

「ま、何でもないなら良いけどさ」
 田部は、微妙に疑いの眼差しを向けたまま、机に肘をついて鼻で笑った。
「あぁ、平気平気」
 本当はかなりヤバイかも知れないんだけど――俺は思わず心の中で苦笑した。

「さっきの話の続きだけど」
 机の中に教科書を押し込んでいると、田部が急に声を潜めながら言った。
「さっきって…何? 悪いけど聞いてなかった」
 俺がそう言うと田部が文句を言ってから、もう一度話始めた――。

「西高に行った吉井って覚えてるだろ?」
「あぁ、中3の時、一緒だった奴だろ」
 吉井と言えば、頭は良いしスポーツは出来るし、優しいし、おまけに男前。女にモテル奴だったよな。
「そうそう。その天才吉井君がさ、1組の秋山に告白したらしいぞ」
「え? 秋山って…誰? 俺、1組の女子の名前あんまり知らないんだよね」
 吉井ってかなりメンクイだったよな…? 俺の知っている限りでは吉井のメガネに敵う女子なんて居ないような気がするけど――。
「女じゃねーよ。秋山保。中3で同じクラスだったじゃん」
 俺は田部の言葉の意味を理解するまで、しばらく時間がかかってしまった。

 吉井は優等生のモテ男。秋山は男のくせに可愛らしくて、ちょっと頼りなくて、お世話したいタイプの女子から絶大な支持があったっけ――。あの2人、結構仲が良かったよな……。
考えてみると、雰囲気的にも似合っているような気がする――。
 
「吉井が秋山に…ってマジで?」
 そういう世界もありで良いのか? なんて、俺は、ほのかな期待を胸に、田部に聞き返した。
「そ、ありえねーだろ?」
 田部の嫌そうな顔を見て、期待するだけバカだったって事が改めてわかった。
 俺の気持ちは、やっぱり田部にも話出来ないよなぁ――。

「だって、吉井って彼女居ただろ? 毎年違ってたけど」
 考えてみたら、噂話なんて、どこかで間違って伝えられているのかもしれない。吉井にはいつだって、頭が良くて綺麗な彼女がいたはずだ。秋山に告白した…なんて、誰かが話を捻じ曲げて伝えているのかもしれない。
「そうなんだよなー。女に飽きたのかねぇ? なんて言ってたぜ」
 田部がニヤケ顔を向けてそう言った。
「誰が?」
「秋山が」

「で、秋山はどうしたんだよ?」
 多分、前の俺だったら、「気持ち悪い奴」って吉井の事を笑っていたんじゃないかと思う。だけど、今の俺は、秋山が吉井の気持ちを受け入れてやってると良いんだけど――って思っていた。
「何て答えたか言ってなかったけどさ、もう友達ではいられねーかな、とか言ってたぜ」
「それって、どういう意味さ?」
「…どう…ってさ、そりゃ、もちろん男には興味ないから無理って事だろ?」
 俺の頭の中では、吉井が嬉しそうに秋山の方を抱いている姿が浮かんでいた。だけど、現実はやっぱり厳しいようだ。
「やっぱ、そうだよな」
 ……何だか胸が痛いんですけど? 俺がもし万が一告白したとしても、吉井と同じような運命を辿るんだろうな。
でも、待てよ? もともと友達じゃ無いわけだし――って、ダメだ。卒業する頃ならまだしも、今、会えなくなるような事をしちゃマズイ。

「同じ学校じゃなくて良かった…とも言ってたなぁ、秋山」
「そっか。」
 俺は吉井に同情していた。
多分、吉井は一大決心をして秋山に告白したんだろう…。友達で居られなくなるかもしれないのに……
それでも、気持を伝えたかったんだ――。

「なぁ、田部はさ、もし男に告られたらどうする?」
「え? 俺かぁ……メチャメチャ可愛い奴だったら、ちょっとは考えるかな――って、やっぱ無理。俺には美加ちゃんが居るし。男同士なんてあり得ないっしょ? 胸は無いし、ヒゲは生えるし、アレだって付いているんだぜ?」
 田部の一言一言が心臓に突き刺さる感じ。。
「そーだよなー」
 あいつも、俺と同じ、男の体なんだもんな――元気なく答えた俺に、田部が訝しげな顔を向けた。
「何だよ? 山崎ぃ。もしかして、お前俺のこと好きだとか? わかった。だからそれで悩んでたのか?」
「はー? 何でそうなるんだよ。ありえねー」

 そうだよ。男同士とか関係なくて、俺はあいつが好きなんだよな――そう思うと、胸はドキドキするし、顔まで熱くなってきた。

「冗談だったんだけど……何その顔。なぁ、お前、その誘うような目、止めろって」
 秋山が冗談とも本気ともつかないようんないような事を言って俺をからかった。

「アホか!」
 俺は座ったまま田部に蹴りを入れた。

 やっぱ、ありえない。男のあいつに惚れてしまったなんて――でも……。


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