−甘嘘別館−  
♪ハッピーエンドのBL小説を連載します♪

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Author:りょう
BL小説を書いてます。
よろしくお願いします☆
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☆おことわり☆ 
「出会わなければ」には、実在のバンド、メンバーと似た人物が出てきますが、実在の人物とは一切関係ありません。

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姉貴の彼氏…28
「そろそろ帰らないと・・・」
 山崎が僕の右手を握りながら言った。
「・・・あぁ、そうだよね」
 僕は慌てて山崎の肩から頭をあげた。
 
 山崎から体を離すと、僕は急に寂しいような気持ちになってしまい、自分でもかなり驚いた。
二人っきりで居たこの数時間の間に、僕はすっかり山崎の事を好きになってしまったのだろうか・・・。
僕って、こんなに流されやすい性格だったのかな?
 イヤイヤ、同性同士だから自分でも気づかなかっただけで、山崎に告白されてやっと自分の気持ちに気づいたのかも知れない。
 素直に認めよう。僕は山崎と居るのが好きなんだ・・・山崎が好きなんだ!

「明日、朝練サボろうかな」
 山崎が帰る用意をしながらボソッと呟いた。
山崎の言葉に心臓がまたドキドキしてくる。凄く嬉しいけれど、それはいけないような気がする――。
「ダメだよ。山崎は走るの好きなんだろ?」
 僕がそう言うと、山崎が不満そうな顔をしながら、ベッドに腰掛けたままの僕の前に戻ってきた。
「だって、今は走ることよりもカズミと居る方が好きなんだもん」
 山崎が拗ねたようにそう言った後、僕の両肩に手を置きゆっくり体をかがめ、僕の額にチュッとキスをした。
 そう言えば、やけにキスに慣れている感じがするんだよな・・・山崎って――。
 嬉しいような恥ずかしいような気持ちになりながら、僕はさり気なくキスが出来る山崎の過去に、ちょっぴりヤキモチを妬いていた。

「あさって、会えるじゃない。映画観てからどっかに遊びに行こうよ」
 僕がそう言うと、山崎が僕の頭の周りに腕を回し、ギュッと抱きかかえながら「どっか・・・・・・ねぇ」と呟いた。
山崎のおへその辺りに顔を埋めるような感じになっていて、僕は緊張のあまり冷や汗をかき始めた。
「あ、えっと、CD見に行くとかさ」
「うーん。そうだな。どこが良いか、お互いに考えておこう」
 山崎の声が身体の中から聞こえてくるような変な感じだ・・・。顔を上げて山崎を見ると、山崎が僕を見て、メチャメチャ嬉しそうに微笑んだ。

 山崎と二人きりになれる所に行きたいな・・・って思っている自分の気持ちに焦りながら、僕はもう一度山崎の身体に顔を押し付け、両腕を山崎の腰の辺りに回した。
「う・・・うん。了解」

「そうだ、アドレス交換しておこう」
 しばらく二人とも黙ったままだったんだけど、山崎が「ホントにもう帰らなきゃ」って呟いた。 
「あ、うん・・・そうだね」
 僕達はお互いにどうしようもないもどかしさを感じながら体を離し、カバンから携帯を取り出した。

 メアドの交換を終わらせると、二人で並んで階段を下りた。
山崎がスッと手を繋いできたんだけど、僕は母さんに見られないか気になってしまい、一人でドキドキしていた。
「あら? 帰るのね」
 急に母さんの声が居間から聞こえて来て、僕が慌てて手を離すと、山崎が残念そうに溜め息をついた。

「はい、おじゃましました。ケーキとっても美味しかったです、ご馳走様でした」
「あら、良かったわ〜。また遊びに来てね。あ、そういえば、良美が変なこと言ってたのよ・・・何だか山崎君とはもう別れたからとか・・・」
 母さんが困ったような顔をしながら居間のドアを開けた。

「あ・・はい。そうなんです。すみません・・・」
 山崎が母さんに向かってペコリと頭を下げた。山崎が謝る事も無いような気がするなぁ・・・
「そうなの? まぁ、良美は何だか全然気にしていないみたいだったけど・・・でも、良くわからないこと言ってたのよね」
 僕と山崎の事を見比べながら、母さんが首を傾げていた。
姉貴の奴、母さんに一体何を言ったんだよ? まさか、彼氏と弟が抱き合ってたから別れたとか何とか言ったんじゃないだろうな?!


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姉貴の彼氏…27
「カズミも友達やめるのはイヤだろ?」
 僕が黙って一人で百面相していたら、山崎が心配そうに僕の顔を覗き込んだ。
「そ、そりゃそうだよ。せっかく趣味があって、一緒に居ると楽しいって思える友達が増えたのに・・・」
 僕が焦ってそう答えたら、山崎が安心したようにフッと溜め息をついた。
「だったら、そんなに悩まないでよ」
「え・・・あ・・・うん。そうだな」
「じゃあ、付き合ってくれるってことで良いよね」
「え? あぁ、まぁ・・・」

 曖昧な返事をしたのに、目の前の山崎はとっても嬉しそうで・・・なんか、こんな感じも良いのかもなぁ・・・
なんて僕はボンヤリ思っていた。
すると、不意を付いて山崎が僕の身体をギュッと抱きしめ、耳元で「大好きだよ」なんて囁いた。
「カズミは?」
 僕の身体を抱きしめ、顔を覗き込みながら山崎が聞いてきた。この体勢で、その質問は凄く困るかも・・・。
「うん・・・まぁ・・・あのさ、好きか嫌いかって聞かれたら、好きなんだけど・・・」
 思いっきり視線を浮かせたまま僕は答えた。ありえないくらい恥ずかしい・・・。
「それでも良いよ。俺の『好き』とは違うのはわかってる。でも、嬉しい」
 僕は居てもたってもいられず、思わず山崎の胸に顔を埋めてしまった。

「あ、あのさ、受験勉強頑張ろうな」
 山崎の腕の中から逃げ出しながら僕はそう言ってベッドに腰掛けなおした。
このまま抱きしめられていたら、心臓がパンクしてしまいそうな感じだよ。
「何だよ〜そんな事、思い出させるなよ・・・」
 山崎が頭を振りながら僕の隣に座った。腕と脚が触れ合っていて、緊張するような、フワフワするような変な感じだ。
「だ、だって、一緒の大学に行くんだろ?」
 僕は必死に自分の感情を抑えながらそう言った。冷静になれる話題をしなくちゃ――。
「そーだったな。なぁ、講習会、一緒に行こうな」
 一言云うたびに山崎が僕の身体のあちこちに微かに触れて、僕のドキドキはずっと治まらないままだった。
冷静になるどころじゃ無いよ・・・この感じって、やっぱり僕も山崎と同じ気持ちって事なのかな・・・?

「う・・・うん。あ、映画にも行くんだよね?」
「そうそう。週末に行こうぜ。やった、デートだ」
「いや、そのデートって言うほどのものじゃ・・・」
 僕が照れていると、山崎が僕の右手を両手で包み込んで、自分の唇に押し当てた。体に電気が走ったような感じがし、焦って僕は山崎の手をふり払った。
「ゴメン・・・」
「ううん。僕こそゴメン。ビックリしただけだから・・・」
 

「夏休みになったら、海にも行こうな」
 しばらくの沈黙の後、山崎が深呼吸してからそう言った。
「え、まぁ・・・受験生だけど・・・一回くらいなら良いかな」
「部活引退したら、毎日一緒に学校行こう」
「・・・そ、そうだね」
「学校帰りに一緒に勉強しようぜ」
 左手を僕の肩に回しながら山崎が言った。
「あ、うん・・・」
「大学に行ったら、一緒に住もうか?」
 山崎は次々に言葉を繋いで、まるで僕に話をさせないようにしているみたいだ。
僕が拒絶するのを恐がっているのかな? そんな風に考えながら、僕はいつの間にか山崎の肩に頭を乗せて、ボーッとなっていた。

「え? イヤ、まだそんな」
「カズミ・・・大好きだよ」
「何か・・・僕も大好きみたい」
「みたい・・・って何だよ」
 僕の頭にコツンと額をぶつけながら、山崎が少し拗ねたように呟いた。
「だって・・・まだ、何となく・・・」
「ま・・・良いや。すっげー嬉しい」

 その後、僕達はずっと身体を寄せ合ったまま話しをしていた。
僕から離れることも出来たんだけど、このドキドキ感が凄く幸せなように思えて、山崎を大事にしたいとか思い始めていたりして・・・・・・。

 もしかしたら、これって、恋なのかな・・・?


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姉貴の彼氏…26
「カズミ、こっち向いて」
 山崎の大きな手が、僕の頬に触れた。ビビッて電気が走ったみたいで僕はピクッと飛び跳ねてしまった。
「・・・・・・」
 僕は恥ずかしくて、無言のまま山崎を上目づかいでチラリと見た。
 すると、山崎が「ワッ」って言って、嬉しそうに笑った。
何? 何が「ワッ」なわけ? 僕は目を瞬かせて山崎を見上げるばかりだった。

「あのね、改めてカズミに言いたいんだけど」
 山崎が咳払いを一つしてから僕を見つめた。
「な・・・何?」

「カズミ、俺と付き合ってくれる?」
 僕の両肩に手を置いたまま、頬を真っ赤にしながら、山崎がそう言った。
「付き合うって・・・もう友達じゃん・・・」
 言いたい事はわかるような気がするけど、わかるのも恐いような気がして、僕はそんな風に答えていた。

「あのさ、ただの友達じゃなくて――俺はカズミと、将来的にはエッチな事もするような、そんな付き合いをしたい・・・って思っているんだ」
 わかるのが恐いって思っていたのに・・・ストレートな答えが返ってきて、僕は視線を泳がせてしまう。
「またまた・・・エ、エッチなこと・・・だなんて・・・」

 あー、もう。ドキドキして仕方がない。
誰かに好かれるのは嬉しいし、好きだと言ってくれるのが山崎だってことも、僕自身イヤじゃないみたい・・・でも、僕の中では同性と付き合うとか、ましてやエ、エッチなことするとかなんて・・・考えられないっていうか、あり得ないっていうか――やっぱ、恥ずかしすぎる・・・・・・。

 僕は思わず眉をひそめてしまった。だけど、山崎は真剣な表情を崩さないまま、僕のことをジッと見つめている――。
真剣だって気持ちは・・・伝わってきてる。だけど・・・だけど・・・

「すぐにじゃなくて良いんだよ。少しずつ俺のことわかって行って欲しい。俺もカズミのこと、もっともっと知りたい。カズミと一緒に居るのが楽しいってわかったから・・・もう、離したくないし、良美さんにも嘘ついていられないって思った・・・」
「そりゃさ、僕も・・・山崎といるのは楽しいけど・・・」

 僕がボソッと呟くと、山崎がものすごく嬉しそうな顔をした。そんなに・・・僕のこと好きなのかな?そう思ったら、すごく変な気持ちになった。でもそれは嫌悪とかそういう部類の感情では無いみたいだ。

「なぁ、カズミ? キスもイヤじゃなかったでしょ?」
「え・・・・まぁ・・・」
 うーん。そう言えば、イヤじゃ無かった。それって、僕の気持ち的にOKってことなのかな・・・?
でも――男同士で付きい合うって、一体何なんだろう? そんなのあって良いのかな? 確かに芸能人とかで同性愛の人って居るみたいだけど・・・何だか、別の世界のことみたいに思っていたから、考えられないと言うか、想像もつかないと言うか――

 一人で悶々と考えていると、山崎が急に僕の頬に軽く触れるだけのキスをした。
その途端、僕は胸の真ん中がザワザワするような、それでいて、心地良いような、不思議な気持ちでいっぱいになった。
「ちょっと、や、山崎・・・」
「な? あんまり深く考えなくても良いよ。取り合えず、このまま友達のちょっと延長みたいな感じで居られたら俺、すごく嬉しいし・・・」

 その言葉に、「友達の延長なら・・・良いか?」 なんて思っているってあたり、もしかしたら僕は山崎に流されちゃうのかな? でも、山崎なら良いのかもなぁ・・・。
 そうだよね。まずはお友達からって、いうのが基本だし・・・って、本当にそれで良いのかな? 
うーん? ま、良いか。姉貴のお許しも出たことだし・・・
え、それで良いのか? 何だか、それは違うような気がするけど・・・。


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姉貴の彼氏…25
「あのね、二人で勝手に僕のことを、『あげる』だの『もらう』だの言ってるけどさ、僕はモノじゃないんだからね!」
 僕が必死に訴えかけたけれど、姉貴も山崎も、僕を見て嬉しそうにニコニコ笑うだけだった。
ホントに、二人とも・・・ちょっとは僕の気持ちも考えてくれない?

「はいはい、わかってるわよ、カズミはモノじゃなくて、『恥ずかしがり屋で無愛想な男の子だ』って事」
「ちょっと、姉貴! 何だよその言い方!」
 何が「恥ずかしがり屋で無愛想な男の子」だよ・・・まぁ、確かに、そうなんだけどさ――。

「ねぇ、それよりカズミ、二人でイチャイチャするのはかまわないけどさ」
 姉貴が部屋から出て行こうと、ドアノブに手をかけながら言った。
「・・・イチャイチャって・・・何だよ・・・」
 さっきの場面を見られたことを思い出し、急に恥ずかしくなった僕は、再び消え入りそうな声で呟いていた。
 
「だって、さっきギューッて抱き合ってたじゃないの」
 姉貴が僕と山崎の顔を交互に見てウインクした。
「いや、そうじゃなくて・・・」
 「抱き合っていた」わけじゃなくて、「抱きしめられていたんだ」・・・って・・・そんな事、恥ずかしくて言えるか!

「まぁ、それは良いんだけどさ。ねぇ、あんた達」
 姉貴は慌てている僕を見て、心底嬉しそうな顔をした。何だか嫌な感じがするんだけど――。
「何だよ・・・」
 僕が恥ずかしくて、不貞腐れたようにそう言うと、姉貴がクスッと笑った。

「家ではエッチぃことしたらダメだからね」
 姉貴が口元に手を当てながら、小さい声で言った。
「はぁ?」
 何だよ? 何言ってるの姉貴の奴、信じらんない。
するわけ無いだろ? 自分の部屋でエッチな事なんて母親がいつ入ってくるかわからないんだから・・・・・・


じゃなくて! 男同士でそんなのあるかよ!


「姉貴のアホ!・・・・・・そんな事するかーーーー!」
 僕は思わず姉貴に向かって怒鳴っていた。姉貴は、そんな僕の様子を見て、声を立てて笑い出した。

「まぁ、カズミが声を我慢すれば、色々と出来なくないけどね」 
「・・・声って・・・・・・?!」
 僕は絶句したまま、姉貴が部屋を出て行く姿を眺めていた。
姉貴は嬉しそうに手をヒラヒラ振ってから、僕らに向かって投げキスをした。

 それからすぐに、姉貴の楽しそうな鼻歌が、階段の下の方に消えて行った。

 僕は放心状態のまま、ベッドの上にペタリと座った。
「何なんだよ、姉貴の奴・・・・・・」
 僕がボソッと呟くと、山崎がベッドに近寄り、僕の横に腰掛けた。
「さて・・・良美さんのお許しも出たことだし」
 山崎が深呼吸をしてから、僕と向かい合わせになるように座りなおし、僕の肩に手を置いた。
「・・・な、何?」
 あまりにも落ち着き払っている山崎を見て、僕はあたふたと慌てるばかりだった。
胸の鼓動は激しいし、山崎が触っている所から、熱が伝わってくるみたい。おまけに山崎ったら、あつーい視線で、ジッと僕を見つめているし・・・。
 僕はどうして良いかわからなくなって、思わず山崎の視線を避けてしまった。


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姉貴の彼氏…24
「ゴメン、良美さん」
 山崎が深々と頭を下げた。 
すると、意外にも姉貴は微笑んだままで(ニヤケ気味なのはなぜ?)、山崎に向かってウンウンと頷いていた。

「何だかなぁ〜。情けないわ私。弟に彼氏取られちゃうなんて」
 姉貴がそうボヤクと、山崎が焦ったようにベッドから下り、床に土下座した。僕はその様子をボンヤリ眺めながら、ベッドの上に座っているだけだった。
「本当にゴメン。良美さん・・・」
 山崎は床に額をくっ付けながら謝っていた。
「卓志は別に謝らなくても良いわよ」
 姉貴がそう言って、山崎の肩をポンと叩いてから、チラッと僕のほうに視線を向けた。姉貴の微笑みが不敵な笑顔に変わっていくのを見て、僕は恐くなり、体中に鳥肌が立ってしまった。

「別に・・・僕・・・取ったわけじゃないし・・・」
 僕は冷や汗をかきながら姉貴の言葉に反抗した。
 大体、山崎が好きだったのは姉貴じゃ無くて、僕なんだから・・・心の中でそう思うと、妙にドキドキして仕方がなかった。
いやいや、そうじゃなくて、僕と山崎は付き合うとか、そんな話もしてないし、好きとか言われたって、僕も山崎も男同士じゃないか!

 心の中で色々と考えていると、嫌味な笑顔で僕を観察していた姉貴が、可笑しそうに笑い出した。
「バーカ。カズミぃ、そんなに恐がらなくても良いわよ。私さ、やっぱり年下の彼氏はダメだわ。お金も持ってないし、デートの仕方だって良くわかってないんだもん、疲れちゃったわ。だから、ね、別れましょ、卓志」
 姉貴があっさりとそう言い放った。
だけど、僕には一瞬、姉貴の瞳にキラリと光るものが見えた。でも、それに気付くのも悪いような気がして、僕は姉貴からパッと視線をそらした。


「卓志にあげるわ。弟のカズミ」
 しばらくしてから聞こえて来た声に驚いて顔を上げると、そこには、いつもの、ちょっとイジワルそうな顔をした姉貴が立っていた。
「そ、そんな・・・さぁ、僕はモノじゃないんだから・・・」
 思わず姉貴に反論すると、姉貴は右手を僕の頭に乗せ、グリグリと撫で始めた。
「何言ってんの、カズミ。あんた、今まで彼女も作れなかったんだから・・・これを逃したら、恋人が出来る機会なんて無いかもしれないのよ!」
 何て失礼なことを言うんだ・・・って思いながら、僕は姉貴の手をパッと払った。
「そんなわけ、ないだろ!」
「そんなわけ、あるのよ!」
 姉貴が僕の言葉に即答しながら、僕のおでこを平手でパチンと叩いた。その時の姉貴の顔は、いつもの嫌味な顔じゃなくて、意外にも真剣な表情で・・・・・・もしかしたら、本当に僕のことを心配してくれているのかも――なんて思えてしまった。

「良美さん、ありがとう。ありがたく、カズミを頂くよ」
 山崎が立ち上がり、姉貴の手を取って両手で握手していた。
「ちょっとー、そこのお二人さん、だから、僕はモノじゃなくて・・・」
 僕がそう言いかけたんだけど、姉貴は僕の言葉をまるっきり無視して、山崎と話し始めてしまった。

「じゃあね。実は私、これから合コンなのよ」
 ペロンと舌を出しながら姉貴が山崎の肩をポンポンと叩いた。
「なぁ、姉貴ったら・・・」
「それじゃ、卓志、カズミをよろしくね」
「まかせてよ、良美さん。俺、カズミを幸せにするよ」
 姉貴と山崎が手を取り合ってうんうんと頷きあっている。

 おいおい、そこの二人、ホントに・・・ちょっと待ってくれよ! って感じなんだけど――? 僕の意思はどうなるのさ? なぁ?


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姉貴の彼氏…23
 非力な僕の抵抗は、無駄な努力に終わってしまった。僕は壁際に追い詰められ、山崎に抱きしめられていた。
目の前には目を閉じた山崎の男らしい顔・・・押し付けられた山崎の唇は、柔らかくて温かくて――僕の胸の鼓動は異常な程に激しかった・・・。

今、姉貴が入ってきたらどうしよう?! そうは思っているんだけど、キスが心地よく思えてしまって、段々と、頭の中が真っ白になっていく感じ――。

 いつの間にか、僕は、夢見る少女のように、ドキドキしながら山崎に抱きしめられていた。
こんなのあり得ないはずなんだけど、でも、山崎に抱きしめられるのがイヤじゃない・・・って言うか、微妙に嬉しいみたい――ヤバイよ。一体これはどういう事なんだ?!

 そんな風に自分の気持ちに戸惑っていると、部屋のドアが急にガチャガチャと音をたてた。
「ただいま〜。ねぇ、カズミ、たく・・・」
 ドアが開く音がして、姉貴の言葉が途中で止まった。
 姉貴は、山崎が僕を抱きしめている場面を見てしまったのだろう・・・僕は背中に冷や汗をかきながら、山崎の腕から抜け出そうとした。だけど、身体中の力が抜けたままで思うように動けず、僕は思わず俯いて山崎の胸に顔を埋めるような格好になってしまった。

「ちょっとあんた達、何してんのよ!」
 姉貴の声が背中の方から聞こえて来た。
 あぁ・・・これって、思いきり抱き合っている姿だよな――少しずつ動き出した脳みそが、僕と山崎の様子を冷静に判断していた。

「何って・・・見ての通り」
 山崎が僕を抱きしめたまま姉貴に向かってそう言った。僕は焦って山崎を見上げてしまった。すると、山崎は僕を見て、眩しそうに微笑んだ。
至近距離で見つめられ、僕は焦って山崎の腕から這うようにして逃げ出した。

「あ・・・姉貴と間違えたんじゃない?」
 山崎から離れ、姉貴に背中を向けたままで僕は呟いた。・・・姉貴が信じてくれるとも思えないけど・・・。

「間違えてないよ。僕はカズヨシとキスしていたんだ」
 山崎が僕に向けていた視線を姉貴の方に移しながらそう言った。

 お、おい、山崎? そこで正しい名前を言うのか? そんな事言っちゃって良いのか?!
僕は這ったまま山崎の後ろに行き、姉貴の視線から見えなくなるように身体を縮めた。怖いやら、恥ずかしいやらで、僕は姉貴の顔を見る事も出来なかった。

 しばらくの間、姉貴と山崎は無言で見詰め合っていたようだった。
・・・いや、見詰め合うと言うよりは、睨み合っていたって言うのが正しいんだろうな。
 居た堪れなくなった僕は、山崎の後からチラリと姉貴の様子を覗いてみた。

「あ〜もう、いやぁねぇ」
 僕と視線が合うと、姉貴が急に笑い始めた。
 姉貴の奴・・・弟と彼氏が抱き合っているのを見て、おかしくなったのか?
 なおも可笑しそうに笑っている姉貴が怖くて、僕はもう一度山崎の陰に隠れた。

「最初から、何となくそんな気がしてたのよね」
 笑いながら姉貴が言った。
「最初って何さ」
 山崎の陰から顔を覗かせながら姉貴に聞いた。山崎にしろ姉貴にしろ、最初最初って・・・

「うちに来た時に、もしかしたらそうなのかな? って思ったんだけど」
「何でだよ!」
 僕は思わず逆切れ状態だった。本当は姉貴が怒っているはずの場面なのに・・・姉貴の奴、まだ笑ってるよ・・・。
「あのねぇ、あんたの事を見る目が違ってたのよ。卓志の・・・」
 姉貴の視線を感じて、山崎の身体が一瞬ビクッとした。山崎・・・良いのかよ?姉貴を敵に回しても・・・。

「通学電車で惚れちゃった子に、私が似ていた・・・とか、そんな感じじゃないの、卓志?」
 怒った様子も無く、姉貴が山崎に向かって淡々と話し始めた。
「なぁ、姉貴・・・ドアの向うで、聞いてたんだろ?」
 僕は山崎の陰に隠れたまま、姉貴に抗議した。
「さぁねー。どうかなー」
 姉貴の目の輝きを見て、僕は思わずブルッと身震いをした。


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