誰かに好意を持たれるのは、正直嬉しい。でも、その「好き」がどの程度のものなのか・・・聞くのが怖いような、聞きたいような・・・って相手は同性の山崎なのに――。
「男なのは知ってるさ。別に俺はホモとかそんなんじゃない。だから、男のカズミには声かけられなかったんだ」
山崎が僕の顔を見ながらちょっぴり苦しそうな顔をした。あぁ・・・これは本当の気持ちなんだな・・・って感じ、胸が熱くなるような思いがした。
「そっか・・・」
何て言ったら良いんだろうなぁ・・・僕の頭の中は山崎を傷つけたくないって思いでいっぱいだった。
「単純に『可愛いな』って思っていた気持ちが、『好きだ』って気持ちになっていって、俺、自分でも困ってたんだ。今まで同性を好きになった事なんてないし・・・」
「僕も・・・男に告られたこと・・・ないなぁ」
僕がそう言ったら、山崎が苦しそうな笑顔を向けた。
こんなに女の子にモテそうな山崎が、僕のことを思って苦しんでいたなんて・・・僕は申し訳ないような気分になってしまった。
「でさ、3年になってしばらく経った頃、学校帰りの電車で、カズミによく似た女子大生に時々会うようになって・・・」
「・・・」
それが姉貴だったんだな――って僕は複雑な気持ちで山崎の話を聞いていた。
「女子大生なら、年上だけど、女の人だろ? だから、この人になら声かけてみても良いんじゃないかって思って・・・」
「へぇ」
「で、何度目かに会えたとき、声をかけたんだ。そしたら、話しやすくて良い感じで」
カッコいい奴に対しては、良い女ぶるんだよな・・・最初は――僕は心の中で思わず姉貴の悪口を言ってしまった。
「それで?」
「それで・・・彼氏が居ないなら、俺と付き合って欲しいって言ったんだ」
山崎君の行動力に僕は驚いていた。さすが陸上部・・・って言うのか? ちょっと違うような気もするけど・・・。
「付き合ってくれって言ったのって、声かけたその日?」
「うん・・・まぁ、そう」
「山崎って結構軽いんだね」
初めて声をかけた人に付き合って欲しいって言っちゃうなんて・・・という思いと、僕には声もかけなかったくせに・・・なんて姉貴に対する競争意識みたいなものを感じた。何だかすごく変な気持ちだ――。
「イヤ軽いわけじゃ・・・でも、そうなのかな。正直わかんね。今まで知らない人に声かけたことなんて無いし・・・。でも、この人を逃したら、朝電車で会うカズミの事、襲うかもしれない・・・なんて思ってたから」
「え?!」
真剣な顔のまま言った山崎の気持ちを量りかねて、僕は慌ててベッドから立ち上がろうとした。襲うとかって何だよ?!
「冗談・・・。その位、カズミの事が好きになっててさ。でも、男のカズミに付き合ってくれなんて言えないし・・・だから、その人と付き合えたらなって・・・」
山崎の大きな手が、僕の腕を優しく掴み、僕がベッドから立ち上がるのを止めた。
「う〜ん・・・」
話を聞けば聞くほど、僕は答えに困ってしまって、大人しく山崎の横に座っているしかなかった。
「でも・・・良美さんの家に呼ばれてビックリだよ。朝会う大好きな奴が、良美さんの弟だったなんて」
困りきった僕は、両手をひざの上に握り締め、俯くしか術が無かった。
胸の中では相変わらず心臓が煩いし、顔はポッポと火照っているし・・・。
「俺、やっぱりカズミが好きだ、良美さんじゃなくて・・・。カズミじゃないとイヤだ」
僕が黙って固まっていると、山崎の声がすぐ耳の横で聞こえた。
「あ・・・ダメだって。こんなのマズイよ」
山崎の顔が、僕の顔のすぐ横にあった。
僕は姉貴の鬼のように怒った顔を想像しながら後ずさりを始めた。
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