「あ、所で部活って毎日あるの?」
「んっと、水曜日と日曜日は無いけどね。まぁ、水曜日も無いと言うか、自主練って感じ」
山崎が今度は嬉しそうな顔をしながら説明を始めた。
曜日によって練習内容も違うんだって、内容まで詳しく教えてくれた。
筋トレのやり方や走るスタイルとか、あまりにも熱心に教えてくれて、「この場で実演しちゃうんじゃないか?」なんて、ちょっと心配したくらいだ。
本当に走るのが好きなんだなぁ…。山崎のそういう所、羨ましいと言うか、少し憧れる――そう思いながら僕は山崎の話している横顔をジッと見つめた。
「もしかして、朝練とかもあるわけ?」
山崎が、映画や音楽の話の時よりも、もっと生き生きしているので、思わず僕は聞いていた。
「そうそう。毎日やってる奴もいるけど、俺は月水金かな。時々サボったりするし…」
前を向いて、キラキラした目で話していた山崎が、僕の方を見た。でも、僕と視線が合うと慌てて視線を窓の外に戻してしまった。
僕の顔見て照れるの、もういい加減やめて欲しいんだけどなぁ――。
あ、そういえば、朝練がある日は電車の時間が違うのかもしれない――。
「朝練の日って早く出るんだろ?」
山崎の変な登場が無くて気が抜けちゃった日には、『何で会わないんだろうなぁ? あいつ寝坊でもしたのか?』ってちょっと気になっていたのだ。別に、毎日会わなくたって全然構わないんだけど…。
「あぁ、30分以上早く出るよ。冬なんか辛いんだよなー」
やっぱりそうか。それなら納得――。
「凄いなぁ。僕は絶対、運動部には入れないや」
ただでさえ朝が辛い僕は、冬になると週に何度も電車に乗り遅れるからなぁ。それを考えると、山崎をますます尊敬してしまう。
「あれ? もしかして、昨日はサボったって事?」
昨日は水曜日、朝練があったはずだけど、昨日も一緒の電車に乗っていたぞ? 僕は急に気が付いた。
別に突っ込む必要はなかったんだけど、思わず聞いていた。
すると、僕の言葉に、山崎が困ったような笑顔を向けた。
「あー…まぁね。俺、カズミと朝会うの楽しみなんだよね。朝練出るとあえないじゃん。…だもんで、たまにはサボっちゃおうかな〜とかさ」
頭をかきながら山崎が言った。
まぁ、僕も山崎と話すのは楽しいけど、僕をサボりの理由にするなよ…って感じかも。
「僕も山崎と話すの楽しいけどさ、部活はちゃんとやんなよ。走るの好きなんだろ?」
僕がそう言うと、山崎がジッと僕を見て、眉間にシワを寄せた。
「そうだよな。頑張らなきゃな」
ポツンと呟いてから、山崎はしばらく窓の外を眺めていた。
山崎は、時々黙り込んでしまうことがある。僕が何か気に触るような事を言っているのかもしれないけど、何でかわからなくて、次の会話を探すのに気を使うんだ――。
「えっと…、あぁ、所でさ、姉貴とはデートしてる?」
会話の内容を考えていたけど、思いつかなくて、仕方なく姉貴の話題を出してしまった。
「ん〜…まぁ、ボチボチかな。良美さんは色々と付き合いが忙しいみたいだし、俺も部活があるし…」
山崎がボソボソと呟くように言った。横顔を見ると、耳まで赤くなっている。
「ねぇ、所でさ、どうして姉貴と付き合うことにしたのさ?」
姉貴の話をするのは好きじゃないだろうな……ってわかっていたのだけど、気になっていたし、やっぱり照れているだけなんだろうって思った僕は、つい聞いてしまった。
だって、姉貴の今までの彼氏とは全然タイプが違うもんなぁ――
「えっと…そうだなぁ…」
手すりに掴まっていた手を離し、山崎が落ち着きなく、鞄についているキーホルダーの人形を触り始めた。
もしかして、姉貴にもらったやつなのかなぁ? そう思いながら僕は、山崎の大きな手が弄っている人形を眺めた。
――何だよ山崎。カワイイじゃないか、そのヒヨコ――僕は心の中でクスッと笑った。
「山崎ったら照れない、照れない…」
僕がそう言うと、山崎の顔がますます赤くなっていった。
「別に、照れてるわけじゃないけどさ」
いや、絶対に照れてる…。普通の話の時とは、全然表情が違うもんな――。
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