−甘嘘別館−  
♪ハッピーエンドのBL小説を連載します♪

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Author:りょう
BL小説を書いてます。
よろしくお願いします☆
別館では18禁小説は連載しません。
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☆おことわり☆ 
「出会わなければ」には、実在のバンド、メンバーと似た人物が出てきますが、実在の人物とは一切関係ありません。

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お知らせ
いつも読みに来てくださる皆様、ありがとうございます。

これからちょっと忙しくなるので、しばらく更新をお休みすることになりそうです。

スミマセン

時間があれば更新したいと思うのですが・・・

しばらくお待ち下さいね



姉貴の彼氏…13
「あ、いつまでも立ってないで、座ってよ」
 狭い部屋に背の高い山崎が立っていると、もっと狭く見えるよな・・・そう思いながら、僕は部屋の真ん中に置いてある、小さなテーブルの脇に座った。
「あ、うん。ありがとう」
 山崎が微妙に照れたような顔をしながらテーブルの方に来た。

「カズミは何か予定あったんじゃない? 大丈夫だった?」
 しばらくモジモジと落ち着かない感じだった山崎が、急に意を決したように話し始めた。
「あぁ、大丈夫だよ。別に何も予定は無かったし」
「そっか。良かった・・・。良美さん、都合が悪いなら俺に連絡してくれれば良かったのに・・・」
 山崎が少し拗ねたような顔をしているように思えた。僕は山崎の言葉になんて返事をしたら良いのか、一瞬戸惑ってしまった。
 まったく・・・姉貴は罪な女だよなぁ――。
「・・・あ・・・えっと、多分、姉貴は携帯に登録してる数が多くて、わからなくなってんじゃ無いかな? 色んな名前で登録してたりするみたいだし・・・」
「そっか・・・」
 僕の話を聞いて、山崎がボソッと呟いた。
 ――ヤバイかな?――

「え・・・っと、あぁ、なんか僕はすぐ変な言い方しちゃうみたいで・・・ゴメン。ホントはさ、姉貴のフォローしないといけないと思うんだけど・・・あの・・・山崎には悪いんだけど、僕は姉貴とは性格があわなくてさ・・・」
 口に出してしまったものは、もう消せない・・・ならば、正直に謝ってしまえ・・・という気持ちで、僕は山崎に向かって頭を下げた。
「良いんだよ。何となくわかるよ、カズミと良美さんがあわなそうって。カズミは真面目だもんな」
 山崎が優しげな瞳で僕を見つめていた。
 さっきまで落ち着かない感じだったのが、嘘のように落ち着き払っている――。

 今までの姉貴のチャライ彼氏達に比べると、常識人で、ちょっとそそかしい事もあるけど、本当に良い奴。カッコよくてスポーツマンで、誠実で――山崎なら、姉貴よりもっと良い子を選べると思うのに、本当に・・・何で姉貴なんだろうなぁ――。

「う〜ん・・・真面目って程でもないけどさ。ただ僕は、姉貴みたいになるのは嫌なだけ」
 姉貴は僕にとっての反面教師だからねっ・・・て思いながら僕はそう呟いた。
「・・・え・・・?」
「あ・・・ゴメン。また失言」
 山崎と一緒に居ると妙な安心感があって、つい本心を言いたくなってしまう。山崎は姉貴の彼氏だって言うのに・・・。

 僕の言い方に腹をたてたかもしれないと思って、恐る恐る山崎の顔をみたけれど、山崎は相変わらず穏やかな笑顔で僕の方を見つめていた。
「うん・・・まぁ、良いよ。姉弟だと言いたい事も色々あるだろうし」
 山崎がそう言いながらテーブル越しに僕の頭をポンと叩いた。
 ホッとしたのと同時に、山崎って大人なんだな・・・って感心してしまった。だから我が儘で自分勝手な姉貴とも上手くやっていけてるのかもしれない。


「ねぇ、山崎って兄弟いるの?」
「あぁ。妹がいるよ。生意気でさ、よく喧嘩してる」
 表情を崩しながら山崎が言った。山崎は妹と仲が良いのかもなぁ・・・。
「そっか。やっぱり兄弟って、そんなもんだよね」
「そうそう」
 僕は弟で山崎は兄・・・だから、山崎のほうが少し大人っぽく思えるのかもね・・・。
ただ、僕も姉貴に「生意気な弟」って言われているんだろうなぁ・・・って思うと、微妙な気分だけど――。


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姉貴の彼氏…12
「まぁ、そうなんだけど・・・良美ったら、山崎君の携帯番号わからないみたいなのよ。とにかく宜しくね」
 母さんがそう言いながら台所の方に行ってしまった。
「まったく・・・信じられん女だ――」
 僕はブツブツ文句を言いながら階段を上って、自分の部屋に向かった。

 そういえば姉貴は、残るとマズイ着信履歴は残さない人だったかな?・・・電話帳にも登録してないって事は、山崎は本当の彼氏じゃ無いって事なのか? 
 僕は、改めて姉貴の性格に疑問を、そして山崎に対しては同情を覚えてしまうのだった。

 部屋に戻って着替えをしていると、玄関のベルの音が聞こえて来た。
――あいつ、絶対部活出てないよな・・・頑張らなきゃとか言ってたくせに――
ジーパンをはきながら僕はそう思っていた。

「ゴメンなさいね。良美ったら、山崎君と約束しておいたくせに、帰ってくるのが遅くなるみたいなのよ」
 玄関から母さんの声が聞こえて来た。
「・・・そうなんですか? じゃあ・・・俺・・・帰ろうかな・・・」
「あ、あのね、勝手で申し訳ないんだけど、良美が帰ってくるまで和美と話でもして待って居てくれるかしら?」
 母さんがそういう声が聞こえ、僕は焦って着替えを終わらせた。我が家のマイペースな女達に振り回されてる気がする――。

「和美! 山崎君が来たから」母さんの必要以上にデカイ声が聞こえた。
「わかったよ」面倒くさそうに答えながら、僕は部屋を出た。
「え、あの・・・」
 山崎はきっと、うちの母親に向かって困った顔をしているんだろうなぁ・・・。

「いらっしゃい、山崎君」
 玄関に着くと僕は、母さんに言われる前に山崎に挨拶をした。
山崎ったら、困った顔をしているのかと思ったら、意外と嬉しそうな顔をしているじゃないか・・・。
「や・・・やぁ」微かに頬を染めながら、山崎が挨拶した。
「じゃあ、和美の部屋ででも、時間潰してくれる? 良美もそのうち帰ってくると思うから」
「は、はい。じゃあ、お邪魔します」
 山崎が母さんに向かってペコリと頭を下げた。

「こっちだよ、山崎」
「あ、うん・・・」
 山崎を連れて僕は部屋に戻った。焦って着替えたから、制服が脱ぎっぱなしだよ・・・。
「適当に座ってて。ちょっと前に帰ったばかりなんだ」
 僕は、脱ぎ捨ててある制服やワイシャツを拾い集めながら言った。
「ゴメンな。急に」
「別に・・・良いけどさ。それにしてもひでーよな姉貴。山崎に部活サボらせておいて、自分は遅れるからとか勝手なこと言ってさ」
 ハンガーにかけた制服を、壁際のフックにかけながら、僕はつい、姉貴の悪口を言ってしまった。
「え・・・まぁ・・・」
 振り返って山崎を見ると、微かに眉間にシワを寄せて、困ったような顔をしている。
――シマッタ・・・どんなに酷い姉貴だとしても、山崎は姉貴が好きなんだよな・・・多分・・・。それとも・・・? 何か深刻な話し合いでもするんだったのかな――

「え・・・っと。あぁ、そう言えば今日は部活だったんじゃないの? 出なくて良かったの? もしかして、姉貴が・・・」
 無理やり誘ったんじゃないの? って僕はまた余計な事を言いそうになってしまい、焦って話を止めた。
「今日は休みになったんだよ。先生の都合やら何やらで急にね。だからまぁ、良美さんに呼ばれて、サボったわけじゃないんだ」
 僕がまた姉貴の事を悪く言おうとしているのがわかったのか、山崎がそう言って笑顔を作って見せた。
「そっか」
 イケナイケナイ。
僕に対しては意地悪な姉貴だとしても、山崎にとっては全然違うかも知れないんだ。僕は心の中で反省した。


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姉貴の彼氏…11
「じゃあ教えてくれたって良いじゃない」
 食い下がる僕に山崎が助けを求めるような顔を向けた。
「まぁ……好みのタイプだったから……って感じ?」
 ニヤニヤしながら答えを待っていた僕に、山崎が横を向きながらボソッと呟いた。

 山崎のそんな態度が妙にツボにはまってしまい、僕はもっと色々聞いてみようと思った。
というのも、根性悪で嫌味な姉貴に打ち勝つネタが聞けるかも…なんて、ちょっとブラックな僕が目覚てしまったからで――。
「ねぇねぇ、好みのタイプなんだ? 姉貴って」
 山崎の鞄をグイグイ引っ張りながら僕は聞いた。
「う〜ん・・・それがさ」
 何か聞けると思って、ワクワクしていたら、急に車内放送が聞こえてきて、山崎が話をやめてしまった。

「それが・・・何?」
 間延びした声のアナウンスが終わると、僕は話の先を聞こうと思い山崎を見上げた。
「まぁ。。。詳しくは秘密」
 しばらくの沈黙の後、山崎そう言って話をやめてしまった。横顔を見ると、何だか憂いを秘めているような感じがして、これ以上聞いたらマズイのかも知れないって思った。
 もしかしたら、飽きっぽい姉貴と既に上手く行ってないとか? 
 やっぱり、姉貴の話はまずかったかも。残念だけど、ネタにする話も聞けないか……。
「ふーん、そっか」
 僕はとりあえず、そう答えるしかなかった。

 その後、気まずい沈黙が続いてしまった。
何だか話しかけたらいけないような雰囲気が漂ってしまい、僕の降りる駅まで結局お互い黙ったままだった。

「じゃ、また。来週な」
 僕が降りようとすると、山崎が声をかけてきた。
「あ、うん。じゃあ・・・」
 そうか。明日は金曜日、朝練があるんだったっけ。それに、月曜日もだったな――。
 ちょっと寂しいような、ホッとしたような、微妙な気持ちになりながら、僕は人の波に流されながら電車から降りた。

 ホームをゆっくり出口の方に進みながら、動き出した電車を何気なく見ていたら、山崎がボンヤリ外を眺めている姿が目に入った。
そして、山崎は僕を見つけると右手を窓に押し付け、何か呟いたように見えた。



 翌日の夕方、学校が終わって家に帰ると、母さんが「お帰り」を言うよりも先に話を始めた。
「あ、和美、後で良美の彼氏・・・えっと、名前何だったかしら・・・」
「山崎?」
「そうそう。その山崎君が・・・あら? あんたよく覚えているわね」
 母さんが話をやめて、僕の方を見た。 
「で、山崎君がどうしたの?」
 母さんの話はすぐ脱線して長くなる事を思い出した僕は、話の先を促した。

「あ、あのね、山崎君が後で遊びに来るらしいんだけど、良美ったら帰るの、少し遅くなるみたいなのよ。だから、良美が帰ってくるまで、あんたに山崎君の相手してて欲しいって」
「何で平日の夕方に彼氏呼んでるんだよ、姉貴の奴。それに、用事があるなら姉貴が直接山崎に連絡して、予定変更するとかすれば良いじゃんか」
 確か山崎は今日部活があるはずなのに・・・姉貴が無理やり呼びつけたんじゃないか? しかも、呼んでおいて、自分は遅くなるってどういう事なんだよ・・・。

 部活に出ていたら、遊びに来る時間なんてないだろ? もしかして、部活もサボらせたとか?
熱心に練習の事を話していた山崎を思い出し、身勝手な姉貴に対する腹立たしさを感じた。

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姉貴の彼氏…10
「あ、所で部活って毎日あるの?」
「んっと、水曜日と日曜日は無いけどね。まぁ、水曜日も無いと言うか、自主練って感じ」
 山崎が今度は嬉しそうな顔をしながら説明を始めた。

 曜日によって練習内容も違うんだって、内容まで詳しく教えてくれた。
筋トレのやり方や走るスタイルとか、あまりにも熱心に教えてくれて、「この場で実演しちゃうんじゃないか?」なんて、ちょっと心配したくらいだ。
 本当に走るのが好きなんだなぁ…。山崎のそういう所、羨ましいと言うか、少し憧れる――そう思いながら僕は山崎の話している横顔をジッと見つめた。

「もしかして、朝練とかもあるわけ?」
 山崎が、映画や音楽の話の時よりも、もっと生き生きしているので、思わず僕は聞いていた。
「そうそう。毎日やってる奴もいるけど、俺は月水金かな。時々サボったりするし…」
 前を向いて、キラキラした目で話していた山崎が、僕の方を見た。でも、僕と視線が合うと慌てて視線を窓の外に戻してしまった。
僕の顔見て照れるの、もういい加減やめて欲しいんだけどなぁ――。


 あ、そういえば、朝練がある日は電車の時間が違うのかもしれない――。 
「朝練の日って早く出るんだろ?」
 山崎の変な登場が無くて気が抜けちゃった日には、『何で会わないんだろうなぁ? あいつ寝坊でもしたのか?』ってちょっと気になっていたのだ。別に、毎日会わなくたって全然構わないんだけど…。
「あぁ、30分以上早く出るよ。冬なんか辛いんだよなー」
 やっぱりそうか。それなら納得――。
「凄いなぁ。僕は絶対、運動部には入れないや」
 ただでさえ朝が辛い僕は、冬になると週に何度も電車に乗り遅れるからなぁ。それを考えると、山崎をますます尊敬してしまう。


「あれ? もしかして、昨日はサボったって事?」
 昨日は水曜日、朝練があったはずだけど、昨日も一緒の電車に乗っていたぞ? 僕は急に気が付いた。
別に突っ込む必要はなかったんだけど、思わず聞いていた。
 すると、僕の言葉に、山崎が困ったような笑顔を向けた。
「あー…まぁね。俺、カズミと朝会うの楽しみなんだよね。朝練出るとあえないじゃん。…だもんで、たまにはサボっちゃおうかな〜とかさ」
 頭をかきながら山崎が言った。
 まぁ、僕も山崎と話すのは楽しいけど、僕をサボりの理由にするなよ…って感じかも。
「僕も山崎と話すの楽しいけどさ、部活はちゃんとやんなよ。走るの好きなんだろ?」
 僕がそう言うと、山崎がジッと僕を見て、眉間にシワを寄せた。
「そうだよな。頑張らなきゃな」
 ポツンと呟いてから、山崎はしばらく窓の外を眺めていた。
 山崎は、時々黙り込んでしまうことがある。僕が何か気に触るような事を言っているのかもしれないけど、何でかわからなくて、次の会話を探すのに気を使うんだ――。


「えっと…、あぁ、所でさ、姉貴とはデートしてる?」
 会話の内容を考えていたけど、思いつかなくて、仕方なく姉貴の話題を出してしまった。
「ん〜…まぁ、ボチボチかな。良美さんは色々と付き合いが忙しいみたいだし、俺も部活があるし…」
 山崎がボソボソと呟くように言った。横顔を見ると、耳まで赤くなっている。

「ねぇ、所でさ、どうして姉貴と付き合うことにしたのさ?」
 姉貴の話をするのは好きじゃないだろうな……ってわかっていたのだけど、気になっていたし、やっぱり照れているだけなんだろうって思った僕は、つい聞いてしまった。
 だって、姉貴の今までの彼氏とは全然タイプが違うもんなぁ――

「えっと…そうだなぁ…」
 手すりに掴まっていた手を離し、山崎が落ち着きなく、鞄についているキーホルダーの人形を触り始めた。
もしかして、姉貴にもらったやつなのかなぁ? そう思いながら僕は、山崎の大きな手が弄っている人形を眺めた。
――何だよ山崎。カワイイじゃないか、そのヒヨコ――僕は心の中でクスッと笑った。

「山崎ったら照れない、照れない…」
 僕がそう言うと、山崎の顔がますます赤くなっていった。
「別に、照れてるわけじゃないけどさ」
 いや、絶対に照れてる…。普通の話の時とは、全然表情が違うもんな――。


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姉貴の彼氏…9
 それから、通学時間に山崎君と会う機会が多くなった。

 山崎君は、朝、僕が電車の窓からボーッと景色を眺めていると、急に声をかけてきたり、「今日は会わなそうだな」とか思って気を抜いていると、突然僕の横にスッと現われたり…初対面の時の印象が悪かったからやっぱり変な奴なんだ…と思っていたけれど、そのうち、山崎君の変な登場の仕方にも慣れて来た。
それに、色々と話をするようになると、映画以外の趣味も似ていることがわかった。

 そして、お互いの呼び方も「山崎君」から「山崎」に、「カズミくん」から「カズミ」に変わっていった。
「カズミ」って呼ばれるのは、微妙に抵抗があるのだけど、何度訂正しても直してくれないから、結局そのままになってしまった。

 そうやって、週何度か顔を会わせるうちに、山崎と話をするのが習慣になって、前は、ボンヤリしているのが朝の憩いの時間だったけど、今では山崎と話しているのも楽しくて良いかも…と思うようになっていた。

 良い友人が出来てよかった……って、生まれて初めて姉貴に感謝したかもしれない。
まぁ、本人に言うと天狗になるから、姉貴には言わなかったけれど。


 そして、山崎と知り合って一ヶ月程過ぎたある朝のことだった――。

「俺、陸上やってるって言ったじゃん」

 前の日の夜に見てテレビ番組の話が終わった後、山崎が急に話をふって来た。
 確か、最初に部活の話を聞いたとき、いかにも爽やか系スポーツマンの山崎の事だから、絶対女子にモテルはずだと思うのに、なんで姉貴のような顔だけの女を彼女にしたんだろうなぁ…とか密かに思っていたんだっけ。

「あぁ、そうだったね。練習とかきついんだっけ?」

 僕がそう聞くと、山崎はちょっと不思議そうな顔をした。俺、前に聞いたことがあるのかもしれない。
でも、部活の話をした頃って、まだあまり心を許してない頃だったから、その頃のにした話の内容はあんまり覚えていないのだ。

「まぁね。でも俺走るの好きだからさ、あんま気にならないんだけどね」

 そっか。やっぱり、前にも話したような気がする。運動音痴の僕からしてみたら、走るのが好きだなんて、凄い事のように思ったんだっけ。
「へぇ、カッコいいよなぁ、そんな風に言えるのって羨ましいよ」
「え? いやぁ…」
 僕の言葉に山崎は微かに頬を赤くして俯いた。

 どうやら山崎は、姉貴似の俺が言う褒め言葉に、弱いようだ。
これはこの一ヶ月の間にわかった事。最初は変な反応する奴…って思ったけど、考えてみると姉貴は褒めたり、優しい言葉をかけたりなんて事は滅多にしない人だから…僕から言われているって感じより、姉貴に言われているような気になるのかも知れない…。
 ちょっと不憫だよなぁと思ったのは内緒。

「だって、僕は運動系は全然ダメだかさ。走るのが好きなんて嘘でも言えないよ」
「あはは。そっか。でも、そんな感じするよね」
 山崎がそう言いながら僕の背中をポンポンって叩いた。
「え〜…やっぱそうなの? って、そんな感じなんて失礼だよなぁ、相変わらず」
 僕が不貞腐れたように言うと、山崎が僕を見てクスクスと笑った。
「いや、ゴメンなー。カズミって言いやすいから。色々と」
 お腹を押さえて笑いながら山崎が言った。「言いやすい」ねぇ……。

「姉貴には言えないからでしょ?」
 笑いながら僕がそう言い返すと、山崎が一瞬眉間にシワを寄せた。
「ま、そっかな」
 ほんの少しの間の後、山崎がポツンと呟いた。
姉貴のお守りで苦労しているんじゃないかな――って僕は思った。僕だったら絶対あんな我がまま女、彼女にしたいなんて思わないもんなぁ。
 まぁ、山崎には、言わない方が良いよね…。


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