「あ、俺ちょっと疲れたから、少し休んでるわ」
皆は海に入ると言っていたんだけど、俺は砂浜に残ることにした。
ビーチバレーと言っても、最初のうちは、輪になって普通にボールを打ちあっていた。
だけど、その後、竹田が入って暫らくすると、急に3対4で試合しようって事になり、何故か俺が女の子チームに入れられて、ヤロー3人から総攻撃を受けてしまったのだ。
ヘトヘトに疲れきっていた俺は、ドカリとシートに座り込んだ。
「そっか。じゃ、皆も荷物こっちに持って来れば? 立木が見ててくれるし」
村上が爽やかな笑顔で、女の子達に言った。この笑顔に大体の女の子がコロッとひっかかるんだよな――。
「うん、そうする。ちょっと待ってて。今荷物とって来る」
彼女達が戻ってきてから、俺は皆の荷物番をしながら、一休みする事にした。
女の子はみんな、ほどほどに可愛いかったし、遊んでいて普通に楽しかった。
だけど、1人砂浜で寝転がっているうちに、俺は急に神楽に会いたくなってしまった。新しい出会い所じゃないよなぁ――。
俺はシートの上で、1人で溜息をついた。
「立木君?」
声が聞こえて、目を開けると、確か、ミドリって名乗っていた子が俺の横にしゃがんでいた。
「あれ? 皆は?」
「まだ、海で遊んでるよ」 ミドリが海のほうを指差した。
「そっか。元気だよなぁ、あいつら」
「ホント。でも、私は疲れたから、ちょっと休もうかなーって」
そう言うと、ミドリはシートの端に座って、自分の足に砂をかけて山を作って遊んでいた。
しばらく彼女と一緒に、お互いの学校の話とか、部活の話とかをしていた。
フッと視線を移すと、神楽には無い柔らかい身体の線が目に入った。それでも、何も感じない自分に密かに驚いていた。
胸が大きいわけじゃないけど、確かに女性の身体だ……なのに、全然ときめかない俺って、どうなってしまったんだろう――。
「あのさぁ、立木君て、彼女とかいるの?」
話題が途切れた後、急にミドリに聞かれた。
俺の頭の中には女性の身体とは程遠い、神楽の姿が浮かんでいて……。
「え……?」
俺は一瞬何を言われたのか、頭が回らなかった。
「立木君が彼氏だったら、いいなーって思って。あの、もし、彼女いなかったら――」
ミドリが恥ずかしそうに笑いながら、俺の事を見つめていた。
可愛らしい顔と女の子らしい身体――ここで彼女がいないって本当の事を言ったら、ミドリと普通の恋が出来るのかもしれない――。
「あのさ、ごめん……」
だけど、俺の口からは『彼女なんて居ないよ』って言葉は出てこなかった。
「なーんだ。やっぱり彼女居るんだよね。残念・・・」
「うん……」
ちょうどそこに皆が戻ってきて、俺達はちょっとだけ冷かされた。
ごめんな……彼女は居ないんだけど、どうしようもなく好きな奴が居るんだ。
本当に、どうしようもないんだけど……。
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