−甘嘘別館−  
♪ハッピーエンドのBL小説を連載します♪

■ プロフィール

Author:りょう
BL小説を書いてます。
よろしくお願いします☆
別館では18禁小説は連載しません。
本館へ行かれたい方は、コメント等でお問い合わせ下さい。
(メールアドレスをお忘れなく…)

☆おことわり☆ 
「出会わなければ」には、実在のバンド、メンバーと似た人物が出てきますが、実在の人物とは一切関係ありません。

■ 最近の記事

■ 最近のコメント

■ 最近のトラックバック

■ 月別アーカイブ

■ カテゴリー

■ FC2カウンター

■ FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

■ ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

あふれる想いを唄にして・・・56
「え? 立木君も帰っちゃうの?」
 陽子が驚いたような顔をした。その横では、いつの間にか席を移動していた智也が、ムッとした顔をして俺を見た。
「ちょっと用事があってさ。そうだ、ついでに神楽の彼女でも見てこうかな」
「おう、見て来い。見て来い」
 智也がそう言って、俺に向かって追い払うポーズをした。智也の奴、嫉妬心丸出しじゃないか……。
「んじゃな」
 俺は陽子になんて興味ないんだから、安心してくれっての。そう思いながら皆に向かって右手を上げた。
「バイバーイ! 立木」
 竹田と村上が声を揃えて言った。
「神楽クンの彼女がどんな人だったか、今度教えてね」
「おう、分かったし」
 皆が俺に向かって嬉しそうに手を振っていた。もしかして、俺ってちょっとかわいそうだったりして?

 店を出ると、神楽の姿を探して駅の方に向かって走って行った。しばらく行くと、あいつの華奢な後ろ姿が見えてきた。
「神楽!」
 声をかけながら背中をポンと叩くと、神楽が驚いたような顔でこちらを振り向いた。
「あれ? 立木も帰えんの?」
 神楽の顔を見た途端、俺は嬉しくて笑顔になる。
「智也に追い払われた。3対3で遊びに行きたいらしいよ」
「なるほどね。立木は? 行かなくて良かったの?」
「うーん。俺、眠いし」
「そっか」

 初詣に行く人や、待ち合わせの人で溢れている駅に着くと、人の間をぬってコインロッカーから荷物を出した。正月以外も人が多い所だが、今日は一段と人が多い。

「所でさ、これからマジでデート?」
 券売機に並びながら、さり気なく神楽に聞いた。もしかすると、デートじゃないのかもしれない。
だって、「彼女にもらった」ってみんなに言った指輪は、本当は神楽が自分で買ったものなんだから……。
「ん? 違うよ。帰って寝る」
 その言葉を聞いて、すごくホッとした。だけど、彼女が居なくたって、俺に何かチャンスがあるわけでもないんだよな――。

「あのさ、何も予定無かったら、俺の家に寄ってかない?」
 ホッとした途端、俺はそんな事を提案してしまった。昨日の夜から一緒だったけど、もっともっと神楽と同じ時間を過ごしたかった。
「え? 立木の家?」
 神楽がしばらく考え込んでいた。
「そう。良かったらさ……」 
「うーん……。行きたいんだけど、後でまた出かけないといけないし」
 神楽が俺の目を覗き込みながら、そう答えた。何だか、見つめられているようでドキドキした。
「そっか」
 残念……。前もって約束しておけば良かった。そうすれば、今日も神楽と一緒に居られたのに――。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・55
「帰っちゃうの? えー残念」
 神楽が帰るっていうのを聞いて、あずさも京子も、ますますガッカリした顔をした。
「あのな、男は神楽だけじゃないだろ。ここにだって、いい男がいるじゃん」
 うな垂れてしまった2人の様子をみて、竹田がそう言うと、村上も横で「そうそう」って頷いていた。
「ね、せっかく会えたんだから、皆で一緒に遊びに行こう」
 すっかり元気を無くしていた2人に向かって、かわいい系の村上がニッコリ笑ってそう言うと、あれだけ神楽クン! と言っていたはずのあずさ達も途端に嬉しそうな顔をして「村上くんがそう言うなら――」とか言いだした。
 まったく、女って奴は、一体どうなってんだよ?

 どこに行くか皆が話し合っている横で、神楽がトレイを片付け、帰る用意を始めた。
「じゃ、俺帰るから。また学校でな」
「んじゃな。デート楽しんでこいよ」
 智也は完全にデートだと決めつけているけど……本当はどこに行くんだろう?
 神楽から、この後の予定を教えてもらえなかった事に微妙に寂しさを覚えつつ、階段の上から1人で神楽を見送っていると、急に智也が近寄って来て、コソコソと囁いた。

「おい、立木、送ってかなくていいのか?」
 智也の言葉に、ドキッとして、俺は慌てて視線を泳がせた。
「はぁ? なんで俺があいつを送くんなきゃなんねーんだよ?」
 どんな表情をしているんだろう、俺? 智也の顔が見れず、俺は1人で焦りまくってしまった。こいつ、どういうつもりなんだよ? お前、俺の気持ち、知ってるのか?
 必死に動揺を隠しつつ、智也を睨みつけたら、あいつは、右手の指と左手の指を3本づつ立てて、片手ずつ順番に見せてから、両手をあわせてペコリと頭を下げた。
「だからさぁ……」

――あぁ、そう言うことかよ……焦ったじゃないか。心の中でホッと胸をなでおろしながらも、しっかり文句は言っておく。
「なんかさ、なんで俺が? って感じなんだけど」
「だって、神楽と一番仲いいのって、立木じゃん」
「いくら神楽と仲が良いからって、俺を追いかえす理由にすんなよ」
そう言いつつ、実はあいつと帰る理由が出来たことが嬉しくて、思わずニヤついてしまった。
 そんな俺の様子に、訝しげな顔を向けていた智也の存在なんて、しっかり無視して、みんなの所に戻ると、先に帰る事を告げた。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・54
「おめでと。今年もよろしくね」
 心の中で京子に文句をたれていたら、神楽が、京子に向かって律儀に新年の挨拶をしていた。――チェッ……おもしろくない。

 それから、すぐ隣りのテーブルについた陽子達は、すぐにハンバーガーを頬張り始めた。
「どこか行ってたの? 原田くん」
 陽子に名前を呼ばれ、智也の機嫌が、一段と良くなっている。背筋が急にピンって張ったよ、あいつ。ホントわかりやすい奴――。
「初詣行って、それから皆でメシ食ってたんだよ。お前らは?」
 智也が気持ち悪いほどの笑みを浮かべながら、陽子の方を見た。
「なんだ。私達も同じ」
「そうだったんだ。一緒に来れば良かったよな?」
「誘ってくれれば良かったのに。神楽クンが居るなら喜んで来たのに!」
 あずさがそう言っている横で、京子も唇を尖らせながら、文句言いたげに智也の事を見ていた。寄って集って神楽、神楽って……ホントに、今年も新年からこうなのか……。

「あぁ、悪い悪い。でも、こうやって会えたじゃん」
「まあ、そうだけどねぇ」
 京子はそう言うと、嬉しそうに神楽に向かって手を振っていた。神楽は、困ったような顔をしながら、恥ずかしそうに京子に手を振りかえした。まったく……いちいちみんなの機嫌とらなくても良いんだよ!――って言いたい。

「そうだ、お前らさ、この後予定なかったら一緒に遊びに行かねーか?」
 智也が、みんなの顔を見回した。
「いいなー。みんなでどっか行こうぜ」
 村上も竹田も急に張り切り出した。
「あれ?」その時、突然、陽子が驚いたような声を上げた。
「ねぇ、神楽クン、指輪してるね? それも左手薬指じゃない」
 その途端、みんなが神楽の手に注目した。神楽の指には、昨日の夜買った指輪がはまっている。 
「ホントだ…指輪なんて初めてじゃない? もしかして、彼女とペアなの?」
 京子が急に残念そうな声をだした。
「お? そういやぁ、そうじゃん。さすが女子は目が早いね」
 智也がそう言って、神楽の左手をぐいっと掴んだ。
「よー神楽ぁ、これ、どうしたんだ?」
 神楽の指にはまっている指輪を、くるくる回しながら智也が言った。
「これ? もらったんだ」
 おい、それ……違うじゃん?

「えーホントに?! 指輪くれるなんて……もしかして、年上の人?」
 ものすごくガッカリしているみたいだけど、聞いておかなくちゃって感じで、あずさが身体を乗り出していた。
「まあね。ってな訳で、俺はそろそろ帰るから」
 神楽が席を立とうとした。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・53
「ところでさ、腹へらねぇ?」

 次から次へと話題が変わっていく。そんな軽いノリの会話も、冬休みを部活や掃除ばかりで楽しめなかった俺にとっては、メチャメチャ楽しかった。

「へった、へった。ハラペコ」
「じゃぁさ、ハンバーガーでも食おうぜ」
「え?」
 智也の言葉に、俺と神楽は一瞬立ち止まり、顔を見合わせた。
「いいよな?」
「……」
 返事をしない俺と神楽が、行く事に賛成したんだと思っているらしく、皆はさっさと店に向かって歩き始めてしまった。
「しかたねーか……」
 溜息をつきながら、横にいる神楽を見ると、神楽も浮かない表情で、俺を見返した。
「うーん。朝昼ハンバーガーねぇ……まあ、いいけど……」
 俺達は顔を見合わせて、溜息を付いた。

 店に入り、列に並んでいる間、正面のメニューをぼんやり見上げていた。
どう考えても、朝と同じものは食べたくない。違うセットメニューにしよう。もちろん今度は、オレンジジュース――。

「牛のチチじゃないんだ?」
 注文を終えて待っていると、隣りでトレイを受け取っていた神楽が、ニヤニヤ笑いながら、俺の耳元で囁いた。
「っせーよ。いちいち……」
 不貞腐れてそう言い返すと、階段を上りかけていた智也の声が聞こえてきた。
「何コソコソやってんだよ、お前ら? 先行くぞ! 2階だからな」
 俺と神楽は、もう一度顔を見合わせて苦笑してしまった。

 5人でテーブルを囲み、休み中の話やテレビの話をしていた。
家にいてこき使われるより、こうして気の置けない仲間と話している方が、はるかに楽しい――。
 しばらくの間、休み中に見たバラエティ番組の話題で盛り上がっていると、階段の方から、聞き覚えのある声が響いてきた。

「あー! 原田くんたち、来てたんだ?!」
 振り返えると、そこには、智也が密かに片思いしている前島陽子と、その友達の久野あずさ、水島京子の3人が立っていた。
「うわ! 神楽クンもいる! お正月からついてるね」そう言って、あずさが京子に満面の笑みを向けていた。
「あけましておめでとう……神楽君」
 京子がちょっと恥ずかしそうに、だけど、神楽に向けてだけ、正月の挨拶をしていた。

 ちょっと水島ぁ……ここには5人いるんだけど?

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・52
 賽銭箱の前には、警察官がずらっと並んでいる。
毎年毎年、大変だろうと思う。警察官は皆、賽銭が顔に当たらないように、透明の防御マスクをかぶっている。だけど、マスクがあるとは言え、誰かが投げた賽銭が、顔面に向って飛んで来たら、あんまり良い気持ちじゃないだろう――。

 俺は、警官に賽銭があたらないように、賽銭箱の直前まで進んでいき、警官の隙間から賽銭を投げ込んだ。

――今年がいい年で有りますように、それから、2年になる時のクラス替えでも神楽と同じクラスになれますように、部活でレギュラーになれますように、それから、それから――

 目を瞑り、手を合わせ、黙々と願い事をしていると、すぐ横から智也の声が聞こえてきた。
「おい、立木、賽銭少ないわりに、お願いが多すぎるんじゃねーか?」
「あんまり頼んでも聞いてもらえないぜ」
 目を開けて隣りを見ると、智也と村上がニヤニヤ笑いながら俺を見ていた。
「いーんだよ。どれか聞いてもらえばさ」
 俺はプイッと横を向き、不貞腐れたようにそう言い返した。

 神楽の姿が見えないと思い、辺りを見回してみると、少し離れた所にある木の下に、神楽と竹田が退屈そうに立っている姿が見えた。
 なんだよ、せっかく長い時間並んだんだから、そんなにすぐ終わらせちゃもったいないじゃないか――って俺は思うんだけど……。
 その後、俺は智也達の視線にメゲズ、願い事を3つほど追加した。

「お待たせ。じゃあ、行こうか」
 スッキリした気持ちで、みんなの所に行って声を掛けた。
「立木ぃ、欲張り過ぎだぜ、マジ」
 村上にデコピンされた。
「俺、待ち疲れちまったよ……」
 竹田がブツブツと呟いた。
「ま、良いじゃん。せっかく長時間並んだんだからさ、すぐ帰るんじゃもったいないだろ」
「そういうのって、なんかセコイよなぁ、神楽、どう思う?」
 智也の言葉に、神楽が笑いながら頷いた。

「なぁ、俺、頭の良くなりそうなお守り買ってくるわ」
 おみくじやら破魔矢の売っている店の前で、智也がそう言うと、さっさと店の方に行った。自分も何か買おうか……と智也の側に行くと、智也が『縁結び』のお守りを買っているのを発見してしまった。
 俺も……縁結びのお守り買って……って、どう考えてもありえないよな。大体、男同士の縁結びの神様なんているのかよ?

 お守りやおみくじを買った後、俺達はもと来た道を駅の方に向かっていった。
「着物のお姉さんも、少しはいるんだな? やっぱ正月は着物だよな」
 たった今横をすれ違った、着物姿の2人組みを振り返りながら、村上が、あまり鳴らない口笛をヒューッと吹いた。
「そうだよなー。あの首の後ろのあたりが、すっごくいいんだよ」
 智也がそう言って、手を首の後ろで組んでから、その場でクルッと一回りした。
「そうそう。フーって息吹きかけてみたくなるよな」
「なるなる」そう言って、竹田が村上の首筋に息を吹きかけた。村上は「ギャ」って言って、竹田の腹にパンチを食らわした。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


  

テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・51
「神楽、お前は?」
「……俺は……アーチストかな」
 黙ってみんなの話を聞いていた神楽が、ポツリと答えた。滅多に自分の事を話さない神楽が、自分の夢を口にした……きっと、それって本当の夢に違いない。

「そうなんだ……美術系とか?」
 俺は初めて知った神楽の夢の話をもっと聞いてみたくて、話の先を促そうとした。
「んー? まだ、ハッキリ決めてない」
「そっか……」

 神楽がはっきり決めてないと言っているのに、村上達の会話は勝手に暴走し始めていた。話を大きくするのが好きな奴等だからなぁ……

「そう言えば、美大とか行くとさ、裸モデルのデッサンとかあるんだよな?」
「え? マジ?! じゃ、俺も、あーちすと希望!」
 サラリーマンかな? とか言っていた竹田が、そんな事を言い出した。
それにしたって、理由があまりにも安易過ぎるじゃないか。
「だけどさ、モデルって言ったって、美人や若い女ばかりじゃないだろ? ってことは、おばはんや、ヤロウの場合もあるんだよなー」
 智也が現実的な話を始めると、村上は明らかにガッカリしたような顔をして溜息をついた。

「だけどさ、男性モデルを見て、恥ずかしそうに絵を描いてる女子を見るのも楽しくない?」
ガックリしている村上と打って変わって、竹田は顔を輝かせた。
「竹田、お前って、マニアックだなぁ?」
「まぁね」
 智也と村上と竹田の3人は、初詣に向う人ごみの中、興奮したように『裸体モデル』談議に花を咲かせていた。

 俺は周りを歩いている人達の目が気になって、3人から少し離れて歩くことにした。智也の横にいた神楽も、少しずつ移動してきて、俺の横に並んだ。
「あいつら周りが目に入ってないよな」
「ま、良いんじゃない。周りだって、それ程気にしてないと思うし」
「そうだな……あ、それよかさ……神楽、お前の夢、叶うといいよな」
 どんなアーティストになりたいのかなんて、ホントは決めているんだと思う。俺は、いつか、その夢を話してもらえるような、近い友人になりたい。
「あぁ。俺、叶えるよ。きっと」
 ハッキリとした口調でそう言った神楽の笑顔が、ヤバイほど眩しいって思った。
 『裸体モデル』の話は、いつの間にか、クラスの話題に変わっていたようだ。俺と神楽も再びみんなの話の中に戻っていた。
 だらだらと喋りながら、長い参拝客の列を進み、やっとの事で賽銭箱の近くまでたどり着いた。  

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


  

テーマ:自作BL小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・50
「何も見なかったのかよ? 俺は紅白見て、その後は当然、行く年くる年。あれって、ちょっと感動すんだよねー俺」
 竹田がそう言ってマジメな顔をした。
「へー? 意外だな」
 俺は感心したような、驚かされたような妙な気分だった。
学校に居る時の竹田から想像すると、お笑い番組とかを見ながら、大口開けて笑ってる……って感じだよな――。

「俺、ドラえもん。やっぱ年末と言えば、ドラえもんだろ?」
 智也の大きな声に、皆が一瞬固まった。側を歩いていた、大学生らしき2人組みの女達が、笑いながら横を通り過ぎていった。
そのスタイルで、ドラえもんとか言われると、ちょっと引くんだけど――。

「何か、すごい……驚きって感じ?」
「お前、小学生みてーだな」
「智也がドラえもんなんて、考えられないよなー。しずかちゃんの入浴シーンが目的か?」
 暫しの沈黙の後、皆に一斉にからかわれた智也が、ムッとしながら、隣にいた神楽の頭をポカリと叩いた。

「お前ら知らねーのか? ドラえもんと言えば、小学校の国語の教科書に載ったりしてんだぞ?」
「へぇ? そうなんだ」
 俺らの時って、そんなのあったっけ?
「お前、何で、小学生の国語の教科書の内容を知ってるんだよ?」
「ん? だって、俺、将来小学校の先生になるんだ。その位予備知識として知っておかなきゃな」
「ふーん。お前が先生ねぇ?」
 教室ではいつもバカな事ばかりやってるようだけど、実は、先の事までちゃんと考えているんだ――その時、少しだけ智也が大人に思えてしまった。

「所で、みんなは将来何になるかって、ちゃんと考えてるのか?」
 突然、智也が進路指導の先生のような話し方で、両側にいる俺達の方に順番に首を傾けた。
「お前に言われるとはなぁ……」
「何か、解せないよなぁ」
 村上と俺は、思わず顔を見合わせてしまった。
「んー? なにか? 俺が将来の事を真面目に話すのは変だって言うのかよ」
 智也が俺達4人の前に回りこみ、みんなの顔を見回した。
「いや、そうじゃないけど――」
「じゃ、ほら、まず立木から言ってみ」
 肩をポンと叩かれ、仕方なく考える。俺、今まで真剣に考えた事が無い。
「え……俺、普通のサラリーマンかな」
 足元の砂利を見つめながら、そう俺が答えると、竹田も「多分、俺もそうだな」と言って足元の小石を蹴った。俺達位の年齢で、将来の事を真面目に考えている奴って、どの位いるんだろう?

「うちは両親とも美容師だから、そっち方面かな。小さい頃から決まってるみたいなもんだよ。でも、俺、あんまし器用じゃないから」
 村上が暗い顔をしながら溜息をついた。   


   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・49
 2人で電車に乗り込み、待ち合わせの駅に向った。

 車内は微妙に混んでいて席が見つからず、どうにか1つだけ空いていた席に神楽を座らせた。神楽は「途中で交代するから起こせよ」と言ってくれたけど、あまりにもグッスリ眠っていたので、俺はそのまま、神楽の前に立って、神楽の寝顔を観察していく事にした。
 降りる駅に着く頃、神楽を起こしたら、バツの悪そうな顔をして「ちゃんと言えよ」と怒ったような声を出した。

 電車を降りると、駅のコインロッカーに荷物を入れて、待ち合わせの場所に急いだ。
「おーい、おっせーよ、お前ら」
 お気に入りのニットキャップをかぶった智也が、手を振りながら、大きな声で俺達を呼んだ。
「おう、久しぶり。賀正!」
 人込みを抜けて、みんなの側に行くと、智也がそう言いながら、俺の肩を叩いた。
「ちっ……あけおめ」
「右に同じ」痛がっている俺を見て、神楽が笑いながらそう言った。
「なんだよ、その新年の挨拶……」
 俺達の心のこもっていない会話を聞いて、村上も竹田も呆れ顔だった。
「……まったく、乱れた日本語だなぁ。『あけましておめでとうございます』って正しく言ってみ?」
 お前がそんな普通の事を言うんだ? って思って村上の顔をマジマジと見てしまった。村上の奴は、ニヤニヤ笑いながら、「ほら3人で、はい、『あけましておめでとうございます……だってば』」って、もう一度言った。
「っせーよ。その『言ってみ?』とか『だってば』ってのは乱れてねーのかよ」
 人の忠告を、黙って聞いているわけの無い智也に突っ込まれて、村上は笑いながら肩をすくめた。
「さ、行くぞ!」
 智也が声を掛けると、やっとみんなが歩き出した。

「そういやぁさ、昨日、紅白とか見た?」
 参道に到着し、人込みの中を歩き始めて、しばらくすると、竹田が聞いてきた。昨日の夜……かぁ。
「いや、特に何も見なかったし」
 見てるわけ無いんだよな、ずっと外に居たんだからさ。そう心で呟きながら、神楽の顔を見た。
「俺も」
 わざとらしく「同じだな?」って言いながら、神楽が俺を見て、ニコッと笑った。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・48
 一生懸命エッグマフィンをほおばっている神楽の手元を見つめて、昨日買った指輪を確認した。――良く似合っているじゃん――そう思ったら、何だかすごく満足したし、幸せな気分になった。

「おい、立木? 食べないの?」
 神楽に声を掛けられ、見つめていた事が恥ずかしくなって、パッと視線を逸らし、目を瞬かせる。
「あぁ、食べるけどさ……いや、なんか急に眠くなっちゃって」
 『電車で眠れなかったし……』とか言い訳をしながら、ポテトに手を伸ばした。
「じゃあ、どっかで少し寝ていく?」
 神楽が、ストローを咥えながら、上目遣いで俺を見た。
「え……ど、どこで?」
 俺は、焦って、手に持っていたポテトをトレイに落としてしまった。
「ん? 駅の待合室とかでさ」
 慌てている俺を見て、神楽が不思議そうな顔をした。
「あ、そーか」
 自分が咄嗟に考えてしまった事に、顔中が熱くなる。
「何考えてんだよ、立木?」
 俺を見ている神楽が一瞬怒ったような顔をした。マズイ……引かれてしまう。
「いやー、ま、色々ね」
 俺は、少しオドケタようにそう言って場を切り抜けようとした。まったく……俺のアホ……
「変な立木」
 神楽が眉間に皺を寄せながらそう言った。
……そうなんだよな――俺、お前と居ると、変になるんだよ。普通じゃない事考えたり……ごめんな、こんな友達で――。
 その後、ちょっとやけになりながら、ポテトを口に押し込んだ。

 朝めしを終えた後、智也達との待ち合わせのまでかなり時間があったので、駅の待合室の中で仮眠を取る事にした。
 昨日の夜一睡も出来なかった俺は、椅子に座った途端、深い眠りに付いた。
 
 そして……寝る前にセットしてあった携帯のアラーム音で目が覚めると……何故か神楽が俺の膝の上に頭を乗せて眠っている。
 辺りを見回してみると、既にホームに電車が来ていて、ガラス張りの待合室には俺と神楽の2人だけだった。
「マジかよ……」

 昨日の夜から、拷問に近い仕打ちを受けているような気がするのは……俺だけだよな――。
「おい、神楽! 電車きてっぞ」
「ん、わかった」
 神楽が寝惚けたように、俺の膝の上から起き上がり、頭をブルッと振った。
「さ、乗ろうぜ」
「おう、悪い……。また、爆睡しちゃったよ」

 悪かないけど――正直、キツイよな……。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・47
 その後、お互いに当り障りの無い会話をした。

 自分が、普通の友達以下の存在なのかもしれないって思うと、変にドキドキしていた気持ちも、すっかり、どこかに消え去ってしまった。

 話をしているうちに、日の出の時間が近づいてきた。白んできた空を見ると、太陽の昇る辺りが一段と明るくなっている。
「ほら、立木、初日の出!」
 急に神楽が立ち上がって、昇り始めた太陽の方を向き、目を瞑って、何かを祈るように、両手を合わせた。長い睫毛が涙で濡れているように見えた。
 一体、何を祈っていたのだろう――。

「なんか、感動しちゃったよ。俺」
 神楽が俺の方を振り返った。頬が赤く見えるのは、朝日のせいなのだろうか?
「……」
 俺は無言で神楽の顔を見つめていた。
「そうだ、明けましておめでとう。立木」
 何も反応しない俺に、神楽が少し困ったような顔を向けながら、正月の挨拶をした。そっか……新しい年になったんだ。
「……おめでとう。今年もよろしく」
 改めてこういう挨拶をするのは、少しくすぐったい。
「こちらこそ」
 いかにもっていう正月の挨拶を交わした後、照れくさくて、2人で顔を見合わせて笑ってしまった。

 そうだ、これから親友になれば良いんじゃないか?! 今年は、もっと色々な事を相談しあえるようになろう――そう思ったら、少しブルーだった心の中もすっきり晴れ渡ったような感じがした。

「あー! 朝の海って、気持ちいいなぁ」
 そう言ってから、波打ち際まで走って行った神楽が、子供のようにはしゃいでいた。石段に座ったままだった俺は、携帯を取り出して立ち上がり、波から逃げ回りながら1人で遊んでいるあいつの姿を、そっとカメラにおさめた。 

「なー、立木、腹減った!」
 しばらく散歩中の犬とじゃれていた神楽が、こちらに走って戻って来た。
「じゃ、朝めし、食いに行くか」
 石段から立ち上がると、神楽の横に並んで、道路の向こう側にあるマックに行った。

「えっと、飲み物は、コーヒーと、あ、立木は?」
 俺の分も一緒に注文してくれていた神楽が、俺の顔を見た。
「俺? ミルク」
 俺の顔を見ていた神楽の目が、いたずらっぽく笑った。
「ミルクでいいの?」
 その顔は、『ジュースが飲みたいんじゃないの?』って言いたい顔だな!?
「良いんだよ。朝はやっぱ、牛のチチでしょ?」
 俺達のやり取りを聞いて、店員が不思議そうな顔をしていた。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・46
 寒さをしのぐ為に、所々に焚き火がたかれていたので、俺と神楽はその焚き火から、それ程離れていない所にある、石段に座ることにした。
神楽は、俺が背中に背負ってるリュック中から、毛布を出すと、俺と自分の膝の上に掛けようとしていた。
「一緒でいいよな? 一枚しかないから」
 神楽がそう言いながら俺の方を見た。
「え? お、俺は平気だよ」
 電車に乗っていた時と同じように、俺はまた、酷く緊張してしまう。
「無理すんなよ。いいじゃん、男同士だし」
 ……そうなんだ。俺達は男同士なんだよ。そう思うと、余計複雑な気持ちになってくる。
「じゃ……ありがと」
 2人で毛布を膝に掛けたまま、暫くお互い無言で座っていた。
俺の心臓は、鼓動が神楽に伝わってしまうんじゃないだろうか? ってくらいドキドキしていた。

 友達だと思っている俺が、神楽が傍にいるだけで胸を高鳴らせている――なんて事を本人に知られたら、絶対に引かれる……っていうか、嫌われる。それだけは、避けなければならない事態だ・・・。
 
 自分の昂ぶる気持ちをどうにか抑えようと思い、焦って俺が口にした話題は、神楽が最も一番嫌がりそうな話だった。
学校でも神楽は、誰かに彼女の話をされると、必ず眉を潜めて、話題を変えてしまうのだ。前に、俺も余計な事を言って、神楽を怒らせてしまったことがあったのに……それなのに、俺ったら……

「なぁ、神楽さ、お前の好きな相手って――もしかして、年上だったりする?」
 横に並んで座っているから、表情は見れなかったけれど、きっと眉間にシワが寄ってるはずだ。
「なんで?」
 神楽の抑揚の無い声が聞こえた。やっぱり聞かれたくないんだ……。
 暴走してしまいそうだった俺の心が、急になりを静めた。

「なんかさ、前に告白出来ないって言ってたのが気になってさ。俺じゃあ、力になれないのかなって」
 思いつく言葉を口に出してみた。そうだよ、俺たち友達なんだから、そういう話をしても良いじゃないか?
「ありがとう……でも、もう良いんだ」
 悲しげな声が聞こえてきた。
「もう良いって?」
 もしかして、告白したのだろうか? 
「悪い。聞かないで」
 どうしてなんだよ? こんなにいつも側にいる友達なのに、何も話してくれないなんて?
「わかった、ごめん。もう、聞かないよ」
 神楽……俺は、お前の親友にもなれないのか?  

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・45
「……仕方ないなぁ」
 俺は、神楽の頭が、隣りの人にぶつからないように、神楽のフラフラ揺れている身体を、静かに自分の方に引き寄せた。
 その後ずっと神楽の頭が俺の肩に乗っかったままで、眠ろうとしていた俺はあまりの緊張に、結局、一睡も出来なかった。
 電車が海の近くの駅に到着したので、俺は肩にもたれ掛かっている神楽に声をかけた。
「おい、着いたぜ」
「ん、わかった――」
 神楽が返事をしてから、微かに身じろぎした。だけど、どうやら、まだ、目が覚めていないようだ。
「神楽、電車降りるよ」
 もう一度声をかけた。
「わかってるって――」
 返事をするだけで、ちっとも目を覚まさないので、神楽の身体を揺すってみた。
「ほら、行くぞ」
「ん……もう少し……」
 神楽が、可愛い声でまだ眠い事を訴えた。きっと家で寝ていると思ってるんだろう――。
「だから、降りるっての」

 寝かせておいてやりたいような気もするけど、このまま電車に乗って、戻って行ってしまうわけにもいかないし……俺はそう思いながら立ち上がった。 
すると、俺に寄りかかっていた神楽は、急に寄りかかるものが無くなって、電車の座席に倒れそうになり、慌てて身体を起こしていた。
「あれ? 寝ちゃってたんだ俺……」
 神楽が眠そうに目を擦った。
「そうだよ。グッスリだったよ」
 俺の肩でね……。
「そっか。ごめん……立木は眠れた?」
「いや、眠れなかった」 
 お前のせいで……なんて事は言えない。俺が勝手にドキドキして、眠れなかっただけなんだ。

「可哀相になぁ、初詣の時つらいぜ? きっと」
「まぁな――」
 色々な意味で、俺って可哀相だったかもしれない。

 海岸に出てみると、そこにはすでに、沢山の人が集まっていた。
学生のグループとか、酔っ払ったご近所グループとか、ちょっと妖しい雰囲気の人達とか……それから、当然のように自分達の世界に入っている恋人同士とか、とにかくいろいろな人達がいた。

 あたりを見回していると、爆音が聞こえてきて、海岸沿いの道路をバイクと車の集団が騒がしく通り過ぎて行った。
 冬の海はかなり寒い。正月でもなければ、こんな寒い所に好き好んで来る奴なんて居ないよな……なんて思いながら、波の音が聞こえてくる、沖の方に目を向けてみた。海からの風に、思わずブルッと身体を振るわせた。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・44
「これ、無理だわ」 
 かなり頑張ったんだけど、今回は思うように行かない。クレーンに引っかかっても、パンダ自身の重さで、ツルンっとクレーンから逃げてしまった。
 横に居る神楽は、何度も「あーあ……」とガッカリした声を出していた。

「多分とれねーよ。ごめんな」
「立木にとって欲しかったのにー!」
 神楽が、俺の背中を叩きながら、子供のように文句を言った。
 他の奴だったら「気持ち悪いからヤメロ!」って即効文句を言うだろう……でも、神楽だと微妙に嬉しかったりする。ホント……ヤバイよな――。

「じゃあさ、この小さなストラップのパンダなら取れると思うから」俺は神楽に喜んでもらいたくて、慌てて、横にあったクレーンゲームにコインを入れた。
 その小さなパンダ君は、難なく1回で取れてしまった。俺って上手い? って、それならさっきのパンダも取れるはずだよな。
ホントは俺の心の中に、「あんなでかいパンダ、持ち運びたくない……」って気持ちがあったから取れなかったのかもしれない――神楽よごめん。
 そんな俺の気持ちに気付かない神楽は、嬉しそうに俺からストラップを受け取った。
「これで許してよ。な!?」
 ちょっと引け目を感じながら、神楽の目を覗き込んだら、神楽は腰に手を当てて「フン」と言いながら俺を見上げた。
「しかたないなぁ」
「ごめんな……じゃなくて、ちょっと待てよ、なんでお前、そんなに威張ってんだよ? せっかく取ってやってんのに!」
 どうも俺は、神楽に甘くなってしまうんだよな。まったく、ダメダメな俺……。
「へへへ。ごめんな、立木。ありがと」
 そう言って、神楽は、パンダのストラップを箱から取り出すと、さっそく携帯に付けて満足そうに微笑んだ。

 ゲーセンを出た後は、大晦日の街をブラつき、結局ファーストフードの店で話し込む。
 ずっと2人で過ごしている間、学校では見られないような、あいつの素顔を何度も見ることが出来て、俺はすごく嬉しかった。
例え、荷物持ち的な存在で誘われたとしても、それでもあいつにとって俺は、一番心を許せる相手なんだろうから……。

 午前3時ごろ、そろそろ海に向かおうか? って事になり、2人で電車に乗り込んだ。日の出の時刻は6時過ぎ、海に着いてからも時間が余りそうだけど、着いてからむこうで時間を潰せばいい。
 電車に乗って座席に座ると、神楽は、あっという間に眠ってしまったようだ。

 しばらくすると、神楽の頭が、俺の肩にコツンとぶつかった。
電車が揺れる度に、神楽の体が、俺と神楽の向こう側に座っている人の間を、行ったり来たりしていた。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・43
 何気なく手に取ってみたのは、シルバーの細い指輪で、英語のような文字が書かれたものだった。俺的には、こんな風にシンプルな指輪の方が神楽には似合うだろうな――なんて思いながら、親指と人差し指で摘んで眺めていた。

「ちょっと見せて」
 神楽が急に近寄って来た。
「え?」
「立木が持ってるやつ」
 俺が手に持っている指輪を指差した。
「あぁ、良いよ」
 神楽が差し出していた右手に指輪を乗せてやると、神楽は、すぐにそれを指にはめ、手を顔の前にかざし、暫く眺めていた。

「これにしようかな」
 俺の顔を見ながら、まだ迷っているんだけど? っていうような表情をした。
「良いんじゃない。お前に似合うと思うよ」
 俺がそう言ったら、神楽が一瞬驚いたような顔をした。
「そう? 立木がそう言うんなら、これにしよう」
 照れたように笑いながら、店の人に金を払うと、すぐに自分の指にはめて、「気に入った」と嬉しそうな顔をした。
 神楽が、俺の選んだ指輪をしてくれた事が、嬉しいような、くすぐったいような、不思議な気持ちだった。

 指輪を買った店からホンノ数分でゲーセンの前に着いた。
 着いた途端、いきなり神楽が俺をクレーンゲームの所まで引っ張って行き、
「これだよ。この大きい奴。これ欲しいんだ」
 と興奮したように俺の腕を引っ張った。
「え?」
 ガラス張りの箱の中からは、かなりでかいパンダがこちらを眺めていた。

 ……おいおい、まさか、これ取るのか?

「パンダ取れたらさ、リュックに入れていこうと思ったんだけど、これじゃ顔がでちゃうかもな」
 神楽がのん気にそんな事を言っていた。
 これ、リュックに入れるのか? で、それを俺が背負うのか? ……激しく恥ずかしくなって来た。
「……今回はパンダか? お前って、白黒の動物が好だなぁ? じゃあ、次はペンギンかシマウマだよな――」
 半ば呆れたように言ったんだけど、神楽本人は、幸せそうな顔をして、巨大なパンダ君を見つめていた。

「なんだって良いじゃん。俺が好きなんだから」
 はいはい、お姫様。って心の中で思いながら、嬉しそうにクレーンゲームの中を覗きこんでいる神楽の頭をポンポンと叩いた。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・42
 初日の出? 海? 俺はてっきり、ゲーセンとかで遊ぶのかと思っていたのだけれど、どうやら違うみたいだ。
神楽は、何か計画を立ててきているんだ――って……俺はどうするつもりだったんだろう?

「ふーん。海ね」
 何も考えていなかった俺は、思わず気のないフリをした。
「立木は嫌だった?」
 神楽が心配そうに聞いて来た。
「いや、別に……」
 笑顔で答えたら、神楽が安心したように笑った。

「で、立木、荷物持ってよ」
「はぁ? 分かったよ。ったく勝手だよなぁ」
 どうしてだろう……神楽に頼まれると嬉しいような気持ちになってしまう。
ホントに……これが、惚れた弱味って言うんだろうなぁ。
「サンキュ。やっぱ、立木と来て良かった」
 神楽に見つめられ、俺は思わず視線をそらしてしまった。

 俺と来たかった理由が、荷物持ちだとか、クレーンゲームの為だとかなのかと思うと、少しショックだけど――そう思いながら、俺は、渋々そのリュックを受け取った。神楽は荷物も無くなり、スッキリしたような顔をして、駅の外に向って歩き出した。

「おい、電車に乗るんじゃないのか?」
「まだ、乗らないよ。まずはゲーセンね。取って欲しいのがあるんだ」
 神楽がそう言ってさっさと歩いて行ってしまった。俺は、慌ててリュックを背負うと、神楽の後を追った。

 ゲーセンに向う途中、道端で、指輪やブレスレットを売っているのを見つけると、神楽が吸い寄せられるように近寄って行った。
「なぁ、立木、ちょっとこれ見ていっていい?」
「あぁ、別にいいけど」
 嬉しそうに色々な指輪を手にとっている神楽の横で、俺は、少し寂しいような気持ちになった。
 神楽の趣味とか興味を持っている事とか、俺は、全然知らないんじゃないか? 考えてみたら、学校でずっと一緒に居るけど、テレビの話題とか、智也達のくだらない話に付き合っているって感じで、神楽は、自分の話を殆どしていないようだ。

「これ、どう思う?」
 ボーッと考え事をしていると、神楽が俺の腕をツンツンと引っ張り、シルバーでゴツイ感じの指輪を乗せた手を、俺の目の前に出してみせた。
「え? あーっと、何だか、いまいちじゃない?」
 神楽の細い指なら、もっとシンプルで細めなものが似合うんじゃないかな?
「そうかぁ? うーん、じゃあ、どれがいいかなー」
「あ、でも、気に入ってるなら、さっきのでも良いんじゃない?」
「そうだなぁ」
 その後も、色々と迷っている神楽の横で、俺も、いくつか指輪を手に取って眺めていた。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・41
 おフクロ、梨子、俺の顔を順番に眺めながら、オヤジが酔った目を瞬かせた。
「梨子が勝手に言ってるだけだよ。ホント訳わかんない」
 オヤジに変に勘ぐられないようにそう言ってから、俺は急いで玄関のカギを開けた。
「じゃ、行ってきます」
 振り向かないように、玄関を出て行くと、オヤジの心配そうな声が聞こえてきた。
「そうか……悟、喧嘩してるなら、ちゃんと話し合うんだぞ」
 オヤジ――全然違うんだけど……まぁ、良いか。
「喧嘩じゃないって……ったく、梨子のアホ」
 俺は口の中で呟いた。

 外に出た途端ブルッと震えが来た。指の先に痛みを感じるような寒さに、思わず空を見上げた。
 携帯用カイロの袋を破ると、両方のポケットに1つずつカイロを突っ込んだ。フーッと吐いた息が、街灯の下で白い靄となって消えた。
 いつものように先に駅についた俺は、壁に寄りかかりながら、神楽がやってくるのを待っていた。

 しばらくすると、神楽が、黒のダッフルコートに身を包んで、俺の前に現れた。白い毛糸の帽子に、フワフワで長めのマフラー、白い毛糸の手袋――。
かなり似合うとは思うけど……近くに来たあいつを見て、胸の鼓動が急に早まってしまった。
「お待たせ」
 ニッコリ笑顔で神楽が俺を見た。……眩しい! って感じだろうか。
「おう」
 動揺を隠しつつそう言って、駅の改札の方に歩いていこうとした。
「ちょっと待ってよ。なぁ、立木、これ持って」
 神楽が、歩き出した俺を呼び止めると、背負っていたリュックを下ろして、俺のほうに差し出した。
「はぁ? なんで?」
 結構大きなそのリュックを見て、呆然としてしまう。
「んー? だって、お前の方が体デカイじゃん。立木が背負った方が、似合うと思うんだよね」
 そう言ってニッコリ笑っている。その笑顔に騙されないぞ……。
「何だよその理由? お前の荷物なんだから、お前が持てよ」
「まぁ、いいじゃん。なぁ、お願い!」
 神楽が毛糸の手袋をはめた手を顔の前で合わせ、小首を傾げていた。ちょっと、それって反則でしょうが……。
「ちぇ……で、中身は何なのさ。まさか、弁当だとか言わないよな」
「違うよ。毛布持ってきた」
「え? 何で毛布がいるんだよ?」
「初日の出、見に行こうと思ってさ。海は寒いっしょ?」
 神楽がニッコリ笑っていた。   

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・40
 中国のどこかの地方では、年越しに餃子を食べると縁起が良い言われている――とかいう内容の番組をテレビで見て以来、おフクロは毎年のように大晦日に餃子を作っていた。
 ここは中国じゃないんだけどね。それに中国では水餃子だろ? おまけに、夜中には年越し蕎麦も食べるんだろ?
 まぁ、日本って国は、何でもありの国だと思うんだけど……と口には出せないので、心の中で呟きながら夕食にありついた。
 夕食の後、少し休んでから部屋に戻り、ベッドに置いてあった携帯を手にとると、神楽宛てにメールを打ち込んだ。
― 夕食終わった。いつでもOK ―
 送信すると、すぐに、神楽から返信メールが来た。待っていてくれていたようで嬉しくなってしまう。 
― 俺、これから夕食 ―
― じゃ、十時に駅でいい? ―
― 了解 ― 
 
 9時半を過ぎると、俺は、ベンチコートを着込み、手袋をはめ、財布、携帯、それから使い捨てカイロをポケットに入れて、部屋を出た。
居間に行って、おフクロに一声かけ、玄関に向かう。

「明日、何時になるの?」
「はっきり分からないけど、昼飯食べて解散かな?」
 玄関までついて来たおフクロに聞かれ、適当に答えておく。

「悪い事すんじゃないぞ!」
 靴を履いていると、ビールの入ったコップを片手に、オヤジが顔を覗かせた。
「わかってるよ」
 俺がそう答えると、オヤジはいまいち納得しないって顔をしていた。
そんなに自分の息子のことが信用出来ないのかねぇ? 俺はこう見えても、小心者だって、知っているだろ? 

「お兄ちゃん、神楽さんと仲良くね」
 その時、2階から降りてきた梨子が、そう言いながら、すげー意味深な顔で俺を見た。
「なっ――」
 焦って俺は、梨子を睨みつけた。
「良いわねー悟」
 おフクロまで余計な事を!

 顔だけ覗かせていたオヤジが、俺たちのやり取りを聞いているうちに、ますます顔をしかめて、居間から出てきてしまった。足元がちょっとフラついている。かなり酔っているかもしれない。

「悟、男だけで行くって言ってただろ。本当は女の子とだったのか? ダメじゃないか! 高1の分際で!」
 オヤジが俺の肩に手を置くと、酒臭い顔をぐっと近づけてそう言った。
「女の子とじゃないって。男ばかりだよ。神楽も男だし」
 顔をそらし、そう言うと、オヤジの手を払いのけた。その勢いで、よろけたオヤジを、おフクロが慌てて支えていた。
「じゃ、何だ? その仲良くってのは?」

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・39
 その時、本棚にあったアルバムの中から何かがヒラリと落ちた。手にとって見てみると、それは、神楽と撮ったプリクラのシールだった。
パンダなのに仏頂面している俺、なんか笑えるかも――。

 それから、掃除も忘れてアルバムを捲っていた。
俺、写真に写る時は、何気に神楽の側に居るんだな……。そして……メチャメチャ嬉しそうな顔してるじゃん、俺ったら――。

「ねぇ、悟? 片付け終わったのなら、降りてきて、お餅切ってちょうだい! お餅」
 階段の下からおフクロの声が聞こえ、途端に現実に戻されてしまった。
急いでアルバムを本棚にしまうと、部屋の外に向って返事をする。
「まだだって! 終わったら、行くよ」
 まったく――早く学校が始まって欲しいもんだ。

 部屋の片付けを適当に終えると、またおフクロに、呼びつけられ、俺は小間使いのように働いた。
餅を切って、年賀状を出しに行って、オヤジを起こして部屋を掃除して……。
その間、梨子とおフクロは台所で、ずっとお節料理を作っていたようだった。台所の近くに行くたびに、良い匂いがプンプン漂っていた。

 夕方になると、俺はバテバテになっていた。俺の分の仕事(ホントはおフクロがやるべきだろ!)が全部終わり、やっと自由になった気分だ。
こんな事なら、日々の掃除をもっとキチンとやっておけよ! と言ってしまおうかと思ったのだが、反撃を考えると、おフクロ本人には言えなかった。

 1日中働き詰で、冬だって言うのに、かなり汗をかいてしまったので、食事前に風呂に入る事にした。
 やっと1人でのんびり出来ると思い、体を洗い終わると、湯船に浸かって、ゆっくり身体の疲れを癒した。

「いつまで入ってるのよ? お兄ちゃん、ご飯だよ!」
 湯船に浸かってウトウトしていると、梨子の声が聞こえてきた。もうそんな時間だったんだ? 頭を振ると、俺は慌てて返事をした。
「分かった。今出る」

 身体の芯から温まり、すっかり良い気分で、洗いたての服に着替えると、みんなの待っている食卓に付いた。
「ごめん。お待たせ」
「まぁ、悟は休み中、良く働いてくれたから、疲れたわよね。ご苦労様」
 おフクロがそう言って、俺のコップにビールを……じゃない、コーラを注いでくれた。
「あ、サンキュ」
 優しいおフクロは、ある意味コワイ――。

「さ、いただきましょ」おフクロの一声で、今年最後の夕食が始まった。

 食卓の上には、毎年恒例の大量の餃子が皿に並べられていた。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・38
「お兄ちゃん、やっぱり?」
 満面の笑みを浮かべた梨子が俺を見つめている。
「もしかして、悟は私のライバル?」
 俺を睨むように薄笑いを向けているのは、おフクロ……。
「ち、違うっての。あー掃除掃除。早く終わらせよー」
 いつものペースで2人に突っ込まれてしまい、俺は慌てて水道の蛇口をひねり、泡だらけのスポンジを洗った。

「それが終わったら、障子貼りも頼むよ。悟」
 おフクロが、してやったり――って顔をしながら、買い物のメモを財布にしまった。
「わかってる」
 俺は不貞腐れてそう言った。
「はい、それならよろしい」
 おフクロは偉そうにそう言うと、梨子と一緒に台所を出て行ってしまった。
 ホントに人使いの荒い母親だ――。うなだれている俺を台所に残し、おフクロと梨子は買い物に行ってしまうのだった。

 台所のガス台を掃除し終わると、今度は障子を剥がしにかかった。とりあえず、障子紙を剥し終わると、一休みしようと思い、部屋に戻って漫画を読み始めた。
 すっかり漫画に夢中になっていると、携帯の着信音が部屋に響いた。
「なんだ……智也か」
 智也からのメールは、初詣の待ち合わせ時間と、メンバーの知らせだった。
 学校で話していた時は、10人近い人数だったが、みんな予定があるようで結局、いつもつるんでる、智也、竹田、村上、神楽、それから俺の5人で行くことになったらしい。
 待ち合わせは元旦の午前11時……という事は、それまでの間、ずっと神楽と2人で居られる訳だ。嬉しいけれど、考えたら、ちょっと緊張してしまう。

 あ、そうそう、おフクロには、夜中から神楽と2人で出かけることは、話していない。「大晦日の夜から、智也達と年越しして、そのまま初詣に行く」と言ってある。そうでもしなきゃ、あの人は何を言うか分からない。想像するだけで恐ろしくなってしまう。
 俺は、おフクロのニヤケタ顔を思い出し、慌てて障子貼りの準備に取り掛かった。
 
 そして、ついに12月31日。おフクロと梨子は朝から忙しそうだ。オヤジは昨日まで仕事だったらしく、疲れきってまだ眠っている。
俺はと言えば、今日も朝から働いていた。自分でもすごくエライって思う。おフクロに毎日のように家の中の片付けを手伝わされたあげく、今日は、自分の部屋を掃除するようにと言い渡された。
 渋々、テストやプリントの束を整理して、本棚の中で倒れている本や雑誌を並べていた。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・37
 今年も残す所あと3日となっていた。おフクロと妹の梨子は、朝から忙しそうに、お節料理の材料や、正月用品で足りない物を書き出していた。
その横で俺は、ガスレンジの掃除をさせられていた。何で俺がやるんだ?って毎年思うのだけど……。

「私、絶対料理上手になるんだー。で、彼氏とのデートには、自分が作ったお弁当持っていって、公園とかで一緒に食べるの。イイ感じでしょ?」
梨子がそんな事を言いながら、夢見る乙女みたいな顔している。
 果たして、口の悪いこいつに、彼氏なんてものが出来るのだろうか――? 
「父さんみたいな、イイ男見つけなさいよ。梨子は、結構かわいいんだから ね。安売りなんてしちゃダメよ」
 買い物のメモを書きながら、おフクロが梨子を見て、ニッコリ笑った。
「……なんだかんだ文句言ってても、おフクロはオヤジに惚れてんだなー」
 俺が、油まみれのガスレンジの部品をスポンジでガシガシ洗いながら、そう言ったら、おフクロが「あたり前よ。何言ってんの悟ったら」と言って、少女のような笑顔を見せた。その意外な反応に、俺はビックリしてしまった。

「まぁ、2番目は神楽クンだけどね」
 おフクロが俺を見て、ニヤリと笑った。やっぱりそう来たか――。
「あっそ――。所でさ、梨子はどんなタイプが好きなんだよ?」
 おフクロの発言を軽く流して、梨子に話を振った。いい年したおばはんが「2番目は神楽クン」とか言ってるのなんて、恥ずかしくないか? ったく、神楽は、俺の友達なんだっての。

「えーと、そうだなぁ、お笑い系の人がいいかな。顔はぁ、良すぎると引け目感じちゃうから・・・程ほどで」
 相変わらず夢見る少女のまま梨子が言った
「良かった〜梨子は、私のライバルにはならないみたいね」
 とおフクロが言うと、「母さんと争うなんて嫌だもん私」と梨子が呟いた。
おフクロに勝つのは大変そうだけどさ……って、おフクロのヤツ、恋愛するつもりでいるのかよ?
「まぁ、面白いかどうかは別として、やっぱり優しい人が良いわよねぇ」
「うん。そうそう」
 おフクロと梨子が「ねーっ」とか言いながら、顔を見合わせていた。考えてみると、流れ的にマズイかもなぁ……と思って大人しくしていたら、肩をポンと叩かれた。
「で、悟はどうなのよ?」
「え?」
 聞かないふりをしていたのに、話を振られて焦ってしまい、手元が狂ってスポンジについた泡が飛び散った。
「人に聞くばっかりじゃダメだよねー」梨子が二ヤッと笑顔になった。
「そうだなー美人で……えっと」

 美人で巨乳で、おまけにスタイルも良くて――高校入学前の俺だったら、迷わずそう答えていただろう。でも、今、俺の頭の中には、巨乳になんてまたく無縁のあいつの笑顔が浮かんでいた。   

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・36
 誰がピアノを弾いているか気になり、音楽室のドアをほんの少し開けて、中を覗いてみた。驚いたことに、ピアノの前には神楽が座っていて、その横顔はなぜかとても悲しげだった。
俺はしばらく、我を忘れてあいつの横顔を見つめていた。

 その時、音楽準備室のドアが開く音がして、誰かがあいつの側に近寄って行った。音楽の佐藤先生だ――。
神楽は先生を見つけると、恥ずかしそうに笑って何か話し掛けた。先生は微笑みを返えしながら、神楽の肩を軽くたたいて、ピアノの所に置いてある楽譜を見ようとした。すると、慌てたように神楽が楽譜をかくす――。俺は、急に2人のやり取りを見ているのが辛くなり、目を逸らした。

 もしかしたら――あいつは、こうやって放課後を過ごしていたのだろうか? 音楽室で、佐藤先生と2人で……。そうか、あいつの好きな人って、訳ありの相手って――。
 俺は音を立てないようにドアを閉めて、その場を離れた。

 家に帰るまでずっと、2人の事が気になっていた。
夕食後、部屋にこもって音楽を聴いていた。しばらくして、ふと、ベッドに投げてあった携帯に目をやると、小さな光が点滅して、メールが来ている事が分かった。

─ 初詣、年越しで行かない? ─

 携帯を開いて、最初に目に飛び込んできたのは、神楽からのメールだった。
年越しって……夜からみんなで、騒ぐのも疲れるのもなぁ――携帯を眺めながら考えていると、再びメールが来た。
― メール読んだ? 年越しすんの、立木と2人がいいんだけど ―
 え、マジ?
― いいけど、何で? ―
 送信してから、急に恥ずかしくなった。俺の期待する返事が来るはずは無いから――。
― また、欲しいのが、あるんだ ―
 はぁ? またかよ。夜中に行くこたなでしょ? そう思いつつも、俺は、神楽の誘いは断われない。だって、俺はあいつの事が好きだから。あいつと一緒にいたいから。
― わかった ―
― サンキュ ―


 2学期も無事に終わり、冬休みが始まった。
冬休みと言っても、コーチの予告通り、バスケの練習はあるし、おまけに、家ではおフクロから年末の大掃除の予定を入れられてしまったし――。
学校で勉強を……いや正しくは居眠りをしてた方がよっぽど楽なのに。
 そして、部活が休みに入ると、毎日おフクロにこき使われる日々が始まった。

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・35
「あぁ、ちょっとね」 その「ちょっと」が気になるんだよ……。
「風邪ひいたかと思ってさ」
「全然大丈夫。昨日の夜、ちょっと用事があって、寝るの遅くなってさ。朝起きられなかったから、サボった」 俺の問いに神楽が、淡々と答える。
「なんだ。心配して損したぜ」 サボリか…神楽でもサボるんだ…。
「……ごめんな。心配掛けて」
「いや、良いよ。じゃ……特に用じゃなかったんだ。ちょっと気になったから」
本当は、ちょっとじゃない。すごく気になったんだ……。
「ありがとう」 神楽が照れたような声を出した。
「いや別に……」
「な、立木……」神楽の言葉が止まる。
「な、何だよ?」俺が聞き返すと、
「……おやすみ」神楽の語りかけるような声が聞こえた。
「おやすみ……」
 何だよ、具合が悪いわけじゃなかったんだ。だけど……あいつが言ってた、夜遅くなるような用事って何だったんだろう――気になったけど、聞くのも恐いような気がしてしまう。

 それから、あっという間に、期末テストの時期が過ぎ、冬休みまで残すところ数日という頃になっていた。
冬休みも、コーチの趣味で正月以外はバスケの練習になりそうな嫌な予感がする今日この頃だった。
 でも、その短い休みの間に、俺は神楽を初詣に誘おうと、密かに考えていた。遊園地以来、一緒に帰れる時もなく、休みに遊びに行くことも無かったから、どうにか2人で出かけられたら……なんて考えていたのだ。
「なぁ、正月の初詣さ、皆で行かねーか?」
 ある日の昼休み、今日こそは、神楽を誘ってみようって思ってタイミングをはかっていたのに、俺が神楽に声をかける前に、智也が皆を誘い始めてしまった。
「立木も神楽も暇だよな。他にもいねーか?」
 智也の奴は、その辺に居た皆に声かけまくって、結局、男ばかりの集団で初詣に行く事が決まっていた。
「詳しくは休み中にメール送るから」そう言って、智也は、一仕事終えたかのようにすっきりした顔をして、校庭にサッカーをしに行ってしまった。
 ホントは神楽とゆっくり初詣をしたかったけれど……まぁ、いいか……。
 その日の放課後、部活が終わった俺は、コーチから頼まれた用事を済ませてから教室に一度戻ろうと思い、いつもは通らない音楽室の前を通った。
 誰も居ないと思っていた音楽室からは、ピアノの音が聞こえていた。
耳を澄まして聴いているとピアノの音色にのって、誰かの歌声が微かに聞こえてきた。  

   
続きが気になる方はポチッとよろしくですFC2 Blog Ranking


テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学

■ ブログ内検索

■ RSSフィード

■ リンク

このブログをリンクに追加する

■ Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ


copyright 2005-2007 −甘嘘別館−   all rights reserved. powered by FC2ブログ. designed by マンション購入記
ホームページ アフィリエイト レンタルサーバー FC2ブログ 専門学校