賽銭箱の前には、警察官がずらっと並んでいる。
毎年毎年、大変だろうと思う。警察官は皆、賽銭が顔に当たらないように、透明の防御マスクをかぶっている。だけど、マスクがあるとは言え、誰かが投げた賽銭が、顔面に向って飛んで来たら、あんまり良い気持ちじゃないだろう――。
俺は、警官に賽銭があたらないように、賽銭箱の直前まで進んでいき、警官の隙間から賽銭を投げ込んだ。
――今年がいい年で有りますように、それから、2年になる時のクラス替えでも神楽と同じクラスになれますように、部活でレギュラーになれますように、それから、それから――
目を瞑り、手を合わせ、黙々と願い事をしていると、すぐ横から智也の声が聞こえてきた。
「おい、立木、賽銭少ないわりに、お願いが多すぎるんじゃねーか?」
「あんまり頼んでも聞いてもらえないぜ」
目を開けて隣りを見ると、智也と村上がニヤニヤ笑いながら俺を見ていた。
「いーんだよ。どれか聞いてもらえばさ」
俺はプイッと横を向き、不貞腐れたようにそう言い返した。
神楽の姿が見えないと思い、辺りを見回してみると、少し離れた所にある木の下に、神楽と竹田が退屈そうに立っている姿が見えた。
なんだよ、せっかく長い時間並んだんだから、そんなにすぐ終わらせちゃもったいないじゃないか――って俺は思うんだけど……。
その後、俺は智也達の視線にメゲズ、願い事を3つほど追加した。
「お待たせ。じゃあ、行こうか」
スッキリした気持ちで、みんなの所に行って声を掛けた。
「立木ぃ、欲張り過ぎだぜ、マジ」
村上にデコピンされた。
「俺、待ち疲れちまったよ……」
竹田がブツブツと呟いた。
「ま、良いじゃん。せっかく長時間並んだんだからさ、すぐ帰るんじゃもったいないだろ」
「そういうのって、なんかセコイよなぁ、神楽、どう思う?」
智也の言葉に、神楽が笑いながら頷いた。
「なぁ、俺、頭の良くなりそうなお守り買ってくるわ」
おみくじやら破魔矢の売っている店の前で、智也がそう言うと、さっさと店の方に行った。自分も何か買おうか……と智也の側に行くと、智也が『縁結び』のお守りを買っているのを発見してしまった。
俺も……縁結びのお守り買って……って、どう考えてもありえないよな。大体、男同士の縁結びの神様なんているのかよ?
お守りやおみくじを買った後、俺達はもと来た道を駅の方に向かっていった。
「着物のお姉さんも、少しはいるんだな? やっぱ正月は着物だよな」
たった今横をすれ違った、着物姿の2人組みを振り返りながら、村上が、あまり鳴らない口笛をヒューッと吹いた。
「そうだよなー。あの首の後ろのあたりが、すっごくいいんだよ」
智也がそう言って、手を首の後ろで組んでから、その場でクルッと一回りした。
「そうそう。フーって息吹きかけてみたくなるよな」
「なるなる」そう言って、竹田が村上の首筋に息を吹きかけた。村上は「ギャ」って言って、竹田の腹にパンチを食らわした。
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