それから、2人で明日の待ち合わせの場所と時間を決めて電話を切った。
「はぁ……」嬉しいはずなんだけど、溜息がもれてしまう。
あいつ、きっと絶叫マシーンとかに乗るって言うんだろうなぁ。
俺はジェットコースターとかが大嫌いなのだ。でも……あいつと2人だけで出掛けられるのなら、まぁ、どうにか乗り切ってみるかな?
もしかしたら、神楽だって絶叫マシーン系が苦手かも知れないし――。
神楽との会話の余韻に浸りながら明日の事を考えていると、2歳年下の妹、梨子が勝手に俺の部屋のドアを開けて、ニヤケタ顔を覗かせた。
「お兄ちゃん、今デートの約束してたでしょ〜 彼女居たんだー?」
壁が薄いというのか、地獄耳だからなのか……勘違いも甚だしいぞ!
「ちげーよ。彼女なんていないし」
俺が不貞腐れたように言うと、梨子が勝ち誇ったように笑い出した。
「ふふっ・・・知ってるよーだ、お兄ちゃんに彼女が居ないことくらい。今電話してたのって、神楽さんだよね。あーそっか。神楽さんとデートなんだ? ふーん。いいなぁ、デート」
梨子がそう言ってから「頑張ってね〜」としつこく続けた。
何変な事言ってんだよ? お前、「兄貴が男とデートする」なんていう事を考えるような奴だったのか? ってよりも、「俺が男とデートするような奴」だって思ってるのかよ? 心の中で密かに焦る。
「バカ言うなよ。なんでそうなるんだよ」
自分が同性に惹かれているっていう事を、他人には気づかれたくなくて、慌ててそう言い返した。
すると、梨子は、驚いたような顔をしてから、ニヤッと笑って口を開いた。
「ジョーダンに決まってるじゃん。お兄ちゃんは、巨乳好きだもんね。中学の時からさ」
何か……完全にからかわれてる? まったく生意気なガキだ!
「ふざけんなよ! 年上をからかうのも、いい加減にしろっての」
その後、しばらくの間、梨子と言い合いを続けていると、俺と梨子の騒いでいる声を聞きつけて、おフクロが階段を上がって来る足音がした。
「ちょっと、何騒いでるのよ?」
おフクロの呆れたような声が聞こえた。
「こいつが煩いんだって」
ムッとしながら俺が言った。
「煩い? 何それ! お兄ちゃんが最初に大声出し始めたんじゃないのよ」
負けじと梨子が俺に食いかかった。
「お前が変な事言うからだろ?」 今日こそ負けないぞ……。
「何よ! ホントの事言われて、焦ってたんじゃないの?」
「なに〜 アホな事言うな!」
俺たちが、取っ組み合いをしそうな雰囲気になると、おフクロが2人の間に割って入ってきた。だけど……おフクロの奴ったら、また話を蒸しかえすような事を言い出すもんで、俺は、さらにイライラしてしまうのだった。
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