−甘嘘別館−  
♪ハッピーエンドのBL小説を連載します♪

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Author:りょう
BL小説を書いてます。
よろしくお願いします☆
別館では18禁小説は連載しません。
本館へ行かれたい方は、コメント等でお問い合わせ下さい。
(メールアドレスをお忘れなく…)

☆おことわり☆ 
「出会わなければ」には、実在のバンド、メンバーと似た人物が出てきますが、実在の人物とは一切関係ありません。

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あふれる想いを唄にして・・・10
「まぁ、良いけど……」
 そんなに言うなら……ってあんまり乗り気じゃないフリして、神楽の誘いに乗った。

「ゲーセンによっては、男同士でプリクラ撮れない所もあるんだよ。恋人だったら男同士でも良いんだって。変だと思わない? まぁ、ここは誰でも平気なんだけどさ……」
 不意に神楽がそんな事を言った。
「へぇ……そうなんだ? 何でだろな」
「知らないけどさ……そう言うのって、ちょっと偏見チックだと思わない?」
 神楽の声に胸がキュッと痛くなった。神楽って物事を真面目に考える奴なんだ……智也とかだったら、男同士なんて、ムサいからダメだって言うんじゃね―のとか言い始めて、話が脱線するに決まってる。

「ん……まぁ……」
「俺達カップルとか思われちゃうかな?」
 今度はふざけたような神楽の声が聞こえ、胸がドキドキし始める……あぁ、俺ってもしかして……。
「何言ってんだよ……」
 俺が言葉を濁すと、神楽がパッと顔をそむけ、「じゃ、これな」と言って、さっさとプリクラのカーテンを捲って中に入ってしまった。
「待てよ……」取り残されまいと、俺も慌てて神楽に続いた。
 プリクラの中は、外から遮断されたような変な空間で、俺は落ち着かなかった。さっきの神楽の発言も気になっていたからなのだけれど。

 しばらく1人でキョロキョロしていると、神楽は慣れたもので、既に画面を見ながら何かを始めていた。
「俺が決めていい?」神楽がニッコリ笑って俺に聞いてきた。
俺は微妙な2人きりの世界に慣れないままで、「あぁ、良いよ」って言うのがやっとだった。

「ほら、笑って! 立木」
「え?」
 俺がボンヤリしていると、神楽は楽しそうに機械を操作していった。
「はい、チーズ」「じゃぁ、もう一枚ね」「こっちに座って……」
神楽に言われるまま、俺は作り笑顔をしたり、ふてくされた顔をしたり……。

「写真は撮り終わったから」
 そう言うと、今度は何やらペンで書き始めた。
「なぁ、何してんの?」
「まぁ、待ってなよ。カワイイのが出来るから」




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テーマ:自作BL小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・9
「やるって言って無いし」
 神楽の差し出した手を避けて、俺は「ウシ」を持っている右手をわざと高く持ち上げた。平均身長より少し低めの神楽は、バスケ部所属の俺が高く持ち上げたウシのぬいぐるみには、絶対届かない。
 そんな俺に向かって、神楽が口を尖らせ、小さい子供のように拗ねた顔をした。

「今度おごってやるってば!」
 神楽が、ぬいぐるみを奪い取ろうとして、俺の右腕を両手で掴み、下に向かってグイッとひっぱった。
「あっ!」
 神楽に触れられた瞬間、変に動揺してしまった俺は、ぬいぐるみを掴んでいた手をパッと開いてしまった。

 俺から手を離すと、神楽は、コロコロと床に転がり落ちたウシのぬいぐるみを、サッと拾い上げた。
「えへへ、いただき!」神楽が嬉しそうに笑った。
「チェッ、とられちまった」俺は照れ隠しでそう言い返した。
「ありがと。マジ欲しかったんだよ」
 そう言いながら、ぬいぐるみをギューッと抱きしめている神楽を見て、「あぁ、『ウシ』と代わりたい」なんて思っている自分に気が付いてしまった。

 おいおい……どうしたんだよ……俺? イヤ、気の迷いに違いない。こいつの顔がいけないんだ。入学当時ほど、女っぽく見えないけれど、ふとした瞬間見せる表情が、可愛らしかったりするからだ。
「ウシと代わりたい」なんて、男相手に思っているわけ無いんだ――気の迷い、気の迷い……。

 その後、何種類かゲームをしてから、ゲーセンの中をウロウロ歩き回っていると、いつの間にかプリクラの前に来ていた。
「神楽って、こういうの撮った事あんの?」
「あぁ、ボチボチね」
 聞いた俺がバカだった。色々な女の子と付き合っていたんだから、撮ったことない訳がない。そう考えると、今度は変に胸が痛くなる……。

「立木、一緒にとろうぜ」
 1人密かに落ち込んでいると、神楽が、俺の腕をクイクイと引っ張った。
「え……別にいいけど、恥ずかしくない?」
 本当は撮ってみたいような気もするのだけど、一応、反論してみたりして。男2人で撮るなんて、俺的には、ちょっと変じゃないかな? って気もするから――。
「別にいいじゃん、な? 撮ろうぜ」
 神楽がもう一度誘ってきた。何だか俺、すごく嬉しいんだけど……。




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あふれる想いを唄にして・・・8
 神楽の言った事がハッキリ聞こえた訳じゃなかった。でも、多分「好きな奴がいる」って言ったんだろうと思う。
「まぁ、色々あってね……で、それはいいとして、ゲームでもしてかない?」
 これでおしまいって感じで、神楽が話を変えて、ゲーセンの入り口の方に歩いていってしまった。俺はスッキリしない気持ちのまま、神楽の後に続いた。
 自動ドアがパッと開くと、店の中から冷気が一気に噴出した。
ゲーセンの中は、外の暑さを忘れてしまうほど涼しくて快適で、ジトッとしていた体の汗が、あっという間にひいていくような感じだ。

「立木、あれとって」
 どのゲームをするか迷っていると、神楽が急に立ち止まり、嬉しそうな顔をして何かを指差した。俺は神楽の指の先をたどって見て驚いた。
「え、マジかよ? お前、あんなの欲しいわけ?」
 あいつは、どうやら、クレーンゲームで何か取ってくれと言っているようだ。でも、あの白黒の物体って……「うし」のぬいぐるみだろ?
「いいじゃん。とってよ」
 呆れながら神楽を見ると、神楽は少し不機嫌そうな顔をしながら、大きな目で俺のことを見返した。
「まぁ……良いけどさ」
 変な奴って思う反面、俺はヤケに嬉しかった。なんだろう、この感じ……。
「じゃ、よろしく!」
 神楽が満面の笑みを浮かべた。――何だか、すごく眩しいんだけど?
「分かったよ。取れたら今度なんかおごれよ」
 照れくさくなってしまい、俺はぶっきらぼうにそう言うと、クレーンゲームの方にスタスタと歩いて行った。
「オッケー。でも、取れたらだよ?」後ろから神楽の声がついて来た。
 おごりが有りなら、意地でらも取ってやる!  

「ほら! そこそこ、あーぁ。おしいなぁ」
「ちょっと、神楽、うるせーよ、気が散るだろ?」
 神楽は俺の横で、喜んだり、がっかりしたり、ずっと騒がしいままだった。
ま、それは良いんだけど、失敗したからって腕をバシバシ叩くのはやめてくれない? 結構痛いんだよね。俺は、神楽の叩いた所を擦りながら苦笑いするだけだった。  

 500円つぎ込んだラストの挑戦で、俺はあいつの欲しがっていたぬいぐるみをとる事ができた。
「やった! やれば出来るじゃん、立木。ありがと」そんな生意気なことを言いながら、神楽が嬉しそうに手を出した。




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あふれる想いを唄にして・・・7
「あぁ、いいよ」
 鞄を肩にかけると、神楽の横に並んで教室を出る……何故かわからないけれど、やけに胸がドキドキしていた。

 廊下に出た時は教室よりも多少涼しかったので、ホッとしていたのだけれど、校庭に出た途端感じた、むせ返るような暑さと、照り返す夏の日差しに、俺は思わず目を細めた。9月になったとは言え、まだまだ暑い日が続いている。

「そう言えば、立木と帰るの初めてだよな?」
 隣から、毎日聞き慣れている穏やかな声が聞こえて来た。
「あぁ。俺、部活あるしな。それに、お前って、いつも彼女と帰ってるんだろ? そこには混じれないよ俺。あーぁ、いいよな、神楽は。で、今日は彼女はどうしたの?」
 俺は、単純に羨ましくてそう言った。だけど、神楽は黙り込んでしまい、何となく、気まずい雰囲気が流れてしまった。

「今は彼女いないよ」
 周り中で聞こえていたセミの声が、一瞬何も聞こえなくなった。
「『今は』か。言ってみてー! 次から次へと大変だよな、お前も」
 再びセミの声が煩く響き始めた。
まったく……何なんだ? このモヤモヤした変な気持ち――。

「だって……俺が告って付き合ったんじゃないし、それに、女って良く分からないよ。付き合ってしばらくすると『神楽君って何考えているのかわからない』とか『私といても楽しくないの?』とか、グズグズ言い出すんだから……みんな、俺に何を求めてるんだろうって感じだよ……」
 何だそれ?――俺は神楽の言葉に、少しカチンと来てしまった。
「そういうの嫌だったら、最初から断わればいいじゃん」
俺が言った言葉に、神楽が困ったような顔を向けた。付き合っておいて、そんな贅沢なグチ言ってるお前の事の方が、俺には、よっぽど分からない。
彼女は神楽の「愛」を求めてるんだろ? 「愛」って……!
あれ? 胸が痛いのは何故なんだ?

「けどさ、真剣な顔で『付き合ってください』とか言われると、何だか断われなくてさ。……ホントは、俺――」
神楽の声は段々小さくなって、最後の方は、セミの鳴声にかき消され、殆ど聞き取れなかった。
「好きな奴とか居るんだったら、なおさら、他の女と付き合わない方がいいんじゃね?」




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テーマ:自作BL小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・6
「どういうつもりなんだよ? 自分好みの男の写真を撮るより、我が家の大事な長男の写真を撮れっての!」なんてもっともらしく文句を言った俺だったんだけど、おフクロが台所に行ったすきに、数枚ある神楽の写真のうち、一番写りの良かったものをコッソリ抜き取り、後で自分のアルバムに貼っておいたのだ。
 だって、どう考えたってそうだろ?――神楽は俺の友達なんだから……。

 入学して2ヶ月位過ぎた頃から、神楽が隣のクラスの女子と帰るようになっていた。ある日の放課後、智也が楽しそうに歩いている2人を指差しながら教えてくれた。
 俺は神楽と一緒に帰った事がない――まぁ、俺は部活の日が多いからって理由もあるのだけど――友達の俺でさえ一緒に帰ったことがないっていうのに、何だよ!って思ってしまった俺は、神楽が女にモテルって事に対して、嫉妬心を燃やしていたのだろうか?
 その時の俺には、そのモヤモヤした気持ちが何なのか、さっぱりわからなかった。

 一緒に帰っていた子が、彼女だったらしい、って話を聞いたのは、神楽が別の女と帰り始めた頃だった。
 それから数ヶ月の間に、神楽の彼女は、2〜3回変わっていたような気がする。どの彼女の話も、本人の口から聞いたわけじゃなく、殆どが智也からの情報だった。
休み時間など、俺達と一緒にいる時の神楽からは、「女好き」とか「タラシ」って印象は全く受けない。あいつ本人が彼女の話をしたがらないから、本当に恋人なのかも、どんな付き合いをしているのかも、どうしてそんなに相手が変わっているのかも、俺にはさっぱり分からなかった――。

 
 高校生活にもすっかり慣れ、部活も楽しくて、授業さえなければ、学校は天国のような所だ! なんて思い始めたのは、夏休みも終わり、入学してから半年が過ぎようとしている頃だった。

 その日は部活も休みなので、さっさと帰って、エアコンの利いている部屋で、前日に買った雑誌でも読もうと、ウキウキした気分で、帰る用意をしていた。
「なぁ、立木、部活ないんだろ? 一緒に帰ろうぜ」
 珍しく神楽が俺を誘ってきた。帰宅部の神楽は、いつも即効で教室を出て、彼女と一緒に帰っていたような気がするんだけど……?

 窓の外からは、セミの鳴声が煩いほど聞こえ、ただでさえ、日当たりが良くて暑苦しい教室の温度を、もっと高くしていた。




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あふれる想いを唄にして・・・5
「ホントお前、女には苦労しないよなぁ」
 俺も、智也も羨望の眼差しで神楽を見た。だけど、当の神楽と言えば、「うーん・・・まぁ」なんて、気の無い返事を返してきた。
「ったくさぁ、余裕かましてるぜ」
 俺と智也は溜息を吐きながら顔を見合わせた。
「そういや、女バスの坂下先輩が、神楽の写真欲しがってたぜ」
 智也と俺が所属しているバスケ部でも神楽は有名で、女子部の先輩の中にも、神楽のファンがたくさんいるのだ。
「中村さんなんか、定期入れに神楽の写真入れてたぜ。俺、自慢されちまったよ。まったく、皆、神楽、神楽ってさぁ。俺らは何だっての。なー、立木」
 智也がそう言いながら俺の背中をバシバシ叩いた。俺じゃなくて、神楽を叩けよ……って感じなんだけど?!
「イッテーよ! 智也……俺を叩くなって」
「だって、クヤシーじゃん」
 智也と一緒にブツブツ言っていたのだけれど、本当は、俺も密かに神楽の写真をアルバムに貼ってあったりする。
別に貼ってあるってだけの事で、時々眺めて溜息吐いているとか、そんなキショイ事はしていない……。

 その、俺のアルバムに貼ってある神楽の写真って言うのは、実は、俺の母親が入学式の時に撮ったものなのだ――。

「ねぇ、悟、入学式の時、すっごくカワイイ子見つけたのよ、あんたのクラスに。母さん、思わず写真撮っちゃったわ。いいわよねぇ、あんな子が家にいたら、毎日楽しいでしょうねー」
 退屈な入学式が終わって、グッタリして家に入った途端、おフクロがそう言って1人で興奮した顔をしていた。普段から、わりと思ったことをすぐに言う人なんだけど……。そんな……赤の他人の写真まで撮っちまうなんて、どうなってるんだろうなぁ。
「念のために聞くけど、それって男?」
「当たり前でしょ!」
「あのなぁ、『カワイイ』なんて、男に対する誉め言葉じゃないと思うけど?」俺は、不貞腐れながらそう言い返した。

 毎日楽しくなくて悪かったな! 自分とオヤジの顔を見てみろ。そんなにカワイイ子どもが産まれるわけないじゃないか。まったく、いい年して何バカな事言ってんだよ!
 口に出して言うと、何倍にもなって言い返されると思うから、心の中で文句を言った。
 そして数日後、おフクロが入学式の写真を見せてくれたのだが、どう見ても、俺を撮ったものよりも、神楽を撮った写真の方が多かった。
「どういうつもりなんだよ? 自分好みの男の写真を撮るより、我が家の大事な長男の写真を撮れっての!」  




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あふれる想いを唄にして・・・4
「あぁ、そうだけど」
 ちょっと低めの声でそう答えた。喧嘩を売られたら、買わないわけにはいかない。
でも、それにしたってなぁ、入学早々、クラスに喧嘩相手が出来てしまうなんて、あんまし嬉しい事じゃないよ……心の中で溜息をついていた。

 だけど、そいつときたら、身構えていた俺に向かって、「間に合って良かったよな」って言うと、急に表情を緩めたじゃないか。
俺は、思わずその顔に見惚れてしまった……そして、不覚にも、滅茶苦茶カワイイ――なんて思っていた。
「そ、そうだよな。授業初日から遅刻したくないもんな」
 微妙に動揺したまま、俺は答えた。
「さっきは、悪かったよ。俺、かなり焦っていたから――」
 そいつが俺の顔色を伺うような感じで言った。

 あの時とは程遠い素直な口調と態度に、俺はすっかり力が抜けてしまった。
まぁ、さっきは相当慌てていただろうし、俺があまりにもジロジロ見ていたから、あんなに不機嫌だったのだろう。
「いや、俺も、焦ってたし。えっと、それよか、俺、立木悟、よろしくな。お前は?」
「え? あぁ、俺、神楽秀利。こちらこそ」
 そう言って、神楽は右手を出した。握手なんて、あり得ないだろ――って思っているのに、俺もつられて右手を出していた。
 白くて華奢な神楽の手、俺のごつい手とは大違いで、握ったら壊れそうな気がした。
 神楽の笑顔を見ながら、握手をしたら、何故か胸のあたりがザワザワするような、不思議な感じがした。


 その日以来、俺は神楽と急速に仲がよくなった。
と言うのか、神楽とは席が近いし、話をしていると、楽しかったから、何となくいつも傍に居るようになっていた。
 いや、正直に言うと、神楽の事を、傍で見ていたかったという理由もあったのかもしれない。

 数週間経つと、神楽は、クラスの女子の間で人気者になっていた。
同じクラスの女子だけじゃない。休み時間になると、他の学年の女子まで、神楽を見物しに集まり始めた。
 俺はと言えば、そんな神楽を羨ましいと思っているような、こいつは俺の友達だし、今は俺と話してるんだぞ! なんて言って、あいつに群がる女どもを追い払いたいような、とても複雑な気持ちでいた。

「神楽ー、また来てるぜ」
 部活も一緒で、いつの間にか俺達と仲良くなっていた、同じクラスの悪友、原田智也が、ニヤニヤしながら言った。




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テーマ:自作BL小説 - ジャンル:小説・文学

あふれる想いを唄にして・・・3
「悪い」
 大きな目でジロっと睨まれ、急に恥かしくなってしまった俺は、俯きながら謝った。でも、そいつは次の瞬間、俺の存在なんてすっかり無視して、腕時計を見て「マズイ!」って呟くと、さっさと走り去ってしまった。
 我に返った俺も、時計を見て、慌てて学校へと走り出した。
ヤバイ、マジ遅刻か?
                                                       
 下駄箱に着いた途端チャイムが鳴り始めた。大急ぎで自分の教室に駆け込むと、担任はまだ来てなくて、どうやら授業初日からの遅刻は避けられたようだ。
ホッとしながら、自分の席に着いて息を整えていた。
 その時、教室の後ろの方から、誰かが騒いでいる声が聞こえてきた。
何があったのか気になって、振り返って見てみると、誰かが、「そこ俺の席なんだけど?」と言って、1番後ろの席に座ってる奴を指差していた。
どうやら隣のクラスの奴が教室を間違えて入って来て、席に座ってしまっていたようだ。 
『ドジな奴もいるもんだ』と思いながら、前に向きなおそうとしたその時、俺の斜め後ろの席に、どこかで見たような奴を発見した。
……こいつさっきの、綺麗系な顔した、口の悪い男じゃないか?!
そいつもまだ席に着いたばかりのようで、机に両手を乗せて俯いたまま、肩で息をしていた。
 何だよ、こいつ、同じクラスだったのか? それも、こんな側に座ってたなんて? 
昨日は、全然気が付かなかった。緊張していて、人の顔なんて見てなかったんだろうか?
 あぁ、でも、そう言えば、昨日家に帰ってから、おフクロが、「学校で可愛い子を見つけたから写真撮った」とか何とか、変なこと言っていたような気がする。もしかして、それって、こいつの事だったのかもしれない。
 しばらくの間、騒いでいる奴らの事を見る振りをして、そいつの事をチラチラと見ていた。
柔らかそうで、軽くウェーブのかかった茶色い髪、色白の肌、上気した頬がピンクに染まっていて、やけに色っぽいって言うか何て言うか――。
 俺がアホな妄想の世界に入りかけていると、そいつの頭が微かに動いた。『何見てるんだよ!』なんて、さっきみたいに文句を言われたら面倒だと思い、急いで前を向こうとした。
「あ……」
 俺が前を向くよりも先に、そいつの視線が、俺を捕らえた。
「もしかして、お前、さっきぶつかってきた奴だろ?」
 そいつの言葉に、俺は、次に何を言われるのかと思い、身構えてしまった。




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あふれる想いを唄にして・・・2
 あれは、俺がまだ、まともに恋愛をした事も無くて、これからは、部活に燃えながら、明るく楽しい高校生活を送ってやる! とか思ってて、それから、あわよくば可愛い彼女を見つけて、青春の一ページを飾るんだ! なんて、青い事を考えていた頃の事だったっけ。


 高校入学2日目の朝、俺は猛烈に焦っていた。
寝坊して、予定の時間より2本も遅い電車に乗った。学校の近くにある駅に着いたのは、後5分で始業ベルがなってしまうって時間だった。
駅から学校まで、歩いて約10分。俺はイキナリ遅刻して、先生に名前を覚えられてしまうのだろうか? 
 慌てて改札を駆け抜けて、思いっきり走り出す。部活で鍛えたこの脚だ、上手く行けば、どうにか間に合うかもしれない。――時計の秒針は、遠慮会釈なく確実に進んでいる。
 まだ、開店していない商店街の中を駆け抜け、コンビニの前で掃除している店員を避け、一心不乱に走る。あと少しで学校だ! そう思ったとき、
「わぁ!」
「いってーなぁ! 気をつけろよ!」
 脇道から飛び出してきた誰かとぶつかり、お互いにすっ転んでしまった。
「す……すみません」
 俺だって、すごく痛かったんだけど、文句を言われた拍子に、俺は素直に謝ってしまった。俺とぶつかった相手は、ブツブツ文句を言いながら、道路に落ちた鞄を拾い、立ち上がろうとしている。慌てていたはずなのに、俺は無意識に、そいつが身体を起こす動作を、眺めていた。そして、そいつが顔を上げた瞬間、俺の目は、その顔に釘付けになってしまった。『遅刻』が確定してしまいそうだっていうのに、俺の周りだけ、一瞬時間が止まってしまったようだった。
 おいおい、ちょっと!? その顔、すごい好みなんですけど?
もしかしたら、これってマンガとかにある「運命の出会い」ってやつなんじゃない? なんてことが頭に浮かび、思わずニヤついてしまった。
 いや待てよ、今時、そんな陳腐な出会いなんてマンガでも無いだろ? 現に、一瞬でも「運命の出会いだ!」なんて思った相手は、どう見ても男だ。
 次の瞬間、俺が、あまりにもジッと見つめていたからなのだろう、そいつは、俺にあからさまに不機嫌な顔を向け、キツイ口調で言った。
「テメ、何見てんだよ!」
 顔に似合わないような乱暴な言葉使い。ちょっと、いや、かなりガッカリしてしまった。
……って、丁寧な言葉使いだとしても、相手は男なんだってば。




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あふれる想いを唄にして(完結編)・・・1
 俺は、いや俺達は、いつもの朝を迎えていた…… 

「おい、秀利? 起きなくていいのかよ?」
 布団に包まり、丸まって爆眠している秀利に声を掛ける。
「……」暫く空白の時が流れた
「なぁ、今日って、スチール撮りがあるんだろ?」
 鼻をつまみながら、体をゆする。
「んぁー! ……く、苦しいだろ!」
 半分寝ぼけている秀利が、俺の手を払いのけ、大きな目を益々大きく見開きながら、俺を睨んでいた。

「ほら、起きろよ。今日は早いんじゃなかったっけ?」半分呆れながら俺が言う
「――なぁ、悟、カレンダー見なかったぁ?」
 大きな欠伸をしながら、秀利が頭をかいている。
「昨日ちゃんと見たよ『スチール撮り、遅れないように!』ってあったじゃないか。俺、ちゃんとお前の予定を把握握してるつもりなんだけど?」
「ったく……」秀利が口を尖らせる。
「なんだよ? 書いてあっただろ?」
「あのなぁ、昨日スチール撮り終わったんだって……」
 そう言って秀利がもう一度大きな口を開けて、欠伸をした。


 俺は立木悟(たちきさとる)。28歳、東通電子工業の研究所に勤めている。
そして、眠いところを、俺に起こされてブツブツ文句言いってるのは、俺の同居人、もとい人生のパートナーの神楽秀利(かぐらひでとし)。同じく28歳、男性。職業は、人気ロックバンド、MAZENTAのボーカリスト。ま、二人は学生時代の親友な訳で……


「ちゃんと予定書き直したんだけど? 赤ペンで『休み』って。まったく、酷いよなぁ、せっかくの休日だってのに……」ブツブツと文句が延々と続いている。
「……」

 俺は、自分の横で文句を言っている秀利をみながら、あの頃を思い出していた。

そう! あの太陽が眩しかったあの頃を……




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バンド絡み再び
えっとですね、「放課後シリーズ」は季節ネタが多いので、また、ちょうど良い時期になったら短編でUPする事にしました。

それでですねぇ、今度はまたバンドをやってる人(とは言え、バンド系の話ではありません)が出てくる話です。「出会わなければ」とかぶる部分があるかもしれないのですが・・・ご了承願います☆
お嫌いじゃない方は、お付き合い下さいませ♪

この話は、本館で2年前(かな?)に連載していたものをまとめ直して、続編(まだやってないのですが)の内容を含めて完結編としたものです。

未熟な文章ではありますが、読んでいただければ幸いです!

今日の夜、スタート予定です。
お休み中
休み中です・・・スミマセン

放課後シリーズは季節ネタが多いので、しばらくお休みしようかと思います。

次を何にするか、ちょっと迷ってる途中です
しばらくお待ちください・・・♪
馨の居ない教室で・・・3
「ほら、馨、これ好きだろ?」
 不貞腐れている藤田をギュッとハグしてから、コンビニの袋を持ち上げ、中からゼリーを出した。
「お、やったぁ。マキは気が利くねぇ」
 ベッドの端に座り、俺から嬉しそうにゼリーを受け取ると、ゼリーのカップを手に持ったまま、今日学校であった事を俺に尋ね始めた。

「なぁ、馨、ゼリー温まっちまうよ?」
 藤田は、受け取ってから食べもせずに手で弄んでいたゼリーカップを、自分の額や頬に当て「冷たくて気持ち良い・・・」とか言い始めた。
「・・・今日の夕飯のデザートにするつもりなんだ〜。後で冷蔵庫に入れるから温まっても平気だよ」
 藤田がそう言ってゼリーを俺の額や腕にくっつけ始めた。
「ふーん」
 もうすっかり温くなっているよ。まぁ・・・また冷やせば良いんだろうけどさぁ。

「俺ねぇ、食後のデザートって欠かせないと思うんだよね。すっごく楽しみなんだよ・・・」
 藤田がそれからしばらくの間、子供のような顔をして、デザートの事を語り続けた。
 さっき、「小学生でもないのに」って言っていたわりに、考えてる事は子どもみたいだよな。

「ねぇ、マキ・・・やりたくね?」
 藤田がベッドに並んで座っていた俺の太腿に手をスッと乗せてきた。
 子どものようだった藤田が、いきなり大人になった・・・って感じだろうか。
「何言ってんだよ。病み上がりのくせに」
 俺がそう言うと、今度はまた子供のような笑顔を見せた。
「もう平気。マキの顔見たら、バッチリ元気になった」
 俺は藤田に押し倒されそうになった。
「でも、今日はやめとく」
 藤田の身体を押し返しながら言った。
「何で?」
 あのなぁ、下にはお前の母ちゃんが居るんだぞ! ・・・って今までに何度も言ったセリフだ。
でも、こいつにはそう言う理由があまり通じない。

「・・・体力落ちてるのに、今やったら、また学校行けないかもしれないじゃん。そしたら、明日も会えないんだぜ・・・寂しくない?」
 俺がそう言ったら、藤田の奴はすっごい嬉しそうな顔をした。藤田はこういう言葉に弱いからな・・・。
「俺って愛されてる?」
 横から抱きつきながら藤田が言った。
「あ・・・当たり前じゃん」
 ちょっと照れくさくて、小さな声で呟くと、藤田が、俺の耳朶をハムッと甘噛みした。ゾクッとして鳥肌がたってしまう。

「マキに愛されてるって思うと、嬉しいよ。今日は我慢するけど、今度いっぱいやろうね」
 耳元で囁くように言われ、小さく頷くのがやっとだった。


 翌日、俺は熱を出した。
藤田からのメールによると、誉田が、「予想通りになったな」って言ってニヤケていたそうだ。
 こんな事なら、昨日、藤田とやっておけば良かったかな・・・・。
これで、しばらくはお預け状態になってしまうだろう・・・。




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馨の居ない教室で・・・2
 学校から出て、部活の仲間と別れ、藤田の家に向う途中のコンビニで、フルーツゼリーを買った。
花を持って見舞い・・・なんて、ありえないし、恥かしいし、高いし・・・あいつゼリーが好きだし――。

 藤田の家に着きチャイムを押すと、いつものように、あいつの母親が笑顔で迎え入れてくれた。
藤田の母親は、俺と馨が恋人同士だって事を知っている。だから、俺は目が合うと、ちょっと照れくさくなってしまう。
 何で素直に認めてくれてるんだろう? ありがたい事なんだけど、ちょっと不思議だった。

「馨がね、牧野くんのことずっと待ってたのよ」
 ニッコリ笑顔で言われ、俺は思わず顔を覆いたくなる。
「そ・・・そうですか・・・」
「土日も会えなかったでしょ? すごく寂しがってたのよ。まきちゃんとデート出来ないって、グズグズごねていたわ」
「はぁ・・・」
 マジでに恥かしい――俺、耳まで赤くなっているんじゃないかと思う。
「どうぞ上がって。もう、熱も無いんだけど、用心のため休ませただけなのよ」
「そうですか・・・じゃあ、お邪魔します・・・」
 あいつの母親が、階段の下で俺に向かって手を振っていた。・・・あいつ、絶対母親似だ。

「おい、来たよ」
「入ってよ、マキ」
 藤田の声がした。何だよ・・・熱ないなら、ドアくらい開けられるだろ・・・。
「どうだ、馨? もう熱も下がってるんだろ――」
 ドアを開けて、部屋に入ると、藤田がベッドの上にパジャマ姿で転がっていた。
 パンダの模様のパジャマなんて、この年でどうなんだ? って感じもしつつ・・・まぁ、藤田が着てると可愛いかもしれない・・・。

「うん、全然平気。今日は行きたかったんだけどね、母さんがダメだって言ってさ。もう好い加減、小学生でも無いっていう感じなのにさ――」
「そっか。じゃあ明日は学校行けるんだよな?」
 毎日鬱陶しいと思っていたのに、いざ休まれるとかなり寂しかった・・・という事実を素直に認めてしまった俺は、嬉しくてそう言った。
「もちろん行くよ。ねえ、マキ、今日は寂しかった?」
 ・・・そう、自由に出来るはずだった一日が、退屈で仕方なかったのだ。
「まぁね」
 でも、俺の性格上、寂しかったと口には出せない。
「ねぇー・・もっと寂しがってよ」
 ベッドの上に起き上がった藤田が、俺の肩に手を置いて、小首を傾げていた。
「アホ」
 まるでキスを待っているかのような雰囲気の藤田の頭をコツンと叩いた。
「痛いなぁ・・・」



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馨の居ない教室で・・・1
「まーきちゃん」

 いつも俺を呼んでいる能天気な声が、今日は聞こえてこない。
俺らの関係がバレてしまって以来、藤田は「周りが見えないのか?」ってぐらい俺にベタベタしてきて、正直鬱陶しいって思うときもある。
 今日はその藤田が休みだ。だから、ホッとしていられると思ったんだけど、恐ろしい事に、牧野のベタベタが習慣になっていたのか、寂しいような、何か足りないような奇妙な気分だ。
 藤田以外にも仲の良い友達が居るから、そいつらとゆっくり話も出来るし、自分の思う通りに行動出来るはずなのに・・・なぜだか、何をする気もおきない。

「おや、牧野? 彼女が休みで、寂しいわけ?」
 俺たちの関係を詳しい所まで知らない、クラスメイトの誉田(ほんだ)が俺に声をかけた。
 普通の恋人同士だったら、女がする役割を俺がしているって事に気が付いてるのは、多分、柿本だけなんだろう。
 柿本は一番初めに、俺と藤田の関係を知った奴だ。あいつの事だから、直ぐにクラスの奴らに言って回るかと思ったのだけど、結局、誰にも言わなかったようだった。
 まあ・・・柿本が噂を広める前に、嫉妬に狂ったアホな俺が、藤田と俺の関係を公表してしまったようなものなんだけど・・・。

「別に。藤田となんて、学校以外でも会えるし」
 面倒臭い質問には、誤魔化さず、正直に答える。
でも、俺が『彼女』だって事は絶対言わないでおく。それだけは、何があっても言いたくない。

 抱かれるのがイヤ・・・って事は無い。俺は、認めてしまったのだ――あいつを抱くのは無理だろうって事。
恥ずかしいんだけど、俺は藤田のテクニックに骨抜き状態なのだ。でも、それを他人に言うのは、ちょっとプライドが許さない・・・。

「ふーん。相変わらずラブラブですねぇ」
 誉田が茶化すように言った。
「そうそう、ラブラブだから」
 軽く流すに限る・・・イライラするなよ、俺。
「そんなにラブラブだと、明日には、まきちゃんが風邪ひいてたりして」
 はぁ? お前が、まきちゃんて呼ぶな! と言いたいけど我慢。
「あはは。そうかもね」
 これも面倒臭いので、素直に頷いておく。偉いぞ俺、よく頑張った!

 授業が終わると、部活に出た。
 部活が始まる前、「具合はどう?」って藤田に送信したメールには、「帰りに寄って。顔が見たいよ」という返信メールが来ていた。
 マジ可愛い奴・・・なんて思いながら、部室で1人ニヤケテしまった。
慌てて周りを見回したけれど、どうやら誰にも見られていなかったようで、ホッとした。



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放課後はいつも・・・6(藤田)
 牧野が校庭で俺を抱きしめてくれた、メチャメチャ感激! 俺、やっぱり牧野に愛されてる?!
柿本にはちょっと悪いような気もするけど、柿本がいてくれたから、牧野がこんな大胆な行動をとってくれたんだと思うよ、ありがとな。

 「一緒に帰れない」って言ったのは、ホント言うと、牧野が何て答えてくれるか、試してみようと思ったからなんだ。
 牧野ったら恋人同士になってからも、今までとあまり変わらな態度で、一緒に帰れるように頑張ってる俺の努力って無駄なわけ――なんて・・・。何だか、俺だけが牧野の事を好きみたいじゃない・・・?って。
 ちょっとは気にかけてくれて「何か用事があるの?」とか言ってくれるかと思ってたのに・・・。まぁ、言葉は無かったとしても、牧野がちょっとでも寂しい顔してくれたら、それで満足出来たのに・・・。
そしたら「やっぱり、本当は一緒に帰れるんだ・・・」って言うつもりだったのにさ。

 なのに・・・牧野ったら全然余裕の顔しちゃってるし、煩そうな顔するし・・・「何て言って欲しいんだよ!」とか言って怒るし。だから俺、変な意地張ってしまったよ・・・
 でも、良かった・・・牧野が態度で表してくれて・・・。

 ギュッと抱きしめながら牧野が、俺の耳元で囁いた。
「馨・・・一緒に帰ろう、待っててくれる? 俺、馨の家に寄りたいな・・・」
 牧野の声、学校では絶対聞けないような甘えた声だった。下半身直撃だったよ。
 今日も、マキちゃんの可愛い顔、見られるかもしれないぞ・・・。

「じゃ、柿本、俺やっぱり、マキちゃんと帰るから、先帰っていいよ」
 ニッコリ笑顔で柿本に言ったら、あいつはムッとしたような顔をした。
「ふざけんなよ・・・このバカップル」
「羨ましかったら、柿本も早く彼氏つくれよ」
 俺の言葉に、柿本がますます眉をつり上げた。
「あのなぁ、俺は彼女が欲しいの。男なんていらねーって」
「ふーん。男同士のアレって、すっげー良いのに。ね、マキちゃん」
 牧野が焦ったように俺から腕を離すと、真っ赤になって俯いてしまった。本当に可愛いよなぁ、牧野・・・男っぽいのに純情で。
「・・・お前、学校でそんな・・・」
 学校でそんな・・・って、マキちゃんこそ、熱烈な抱擁してくれていたくせに・・・。
  もう、この状況じゃ、皆にバレバレだろうな・・・。



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放課後はいつも・・・5(柿本)
 冗談のつもりで藤田の肩に腕を回し、その細い身体をギュッと引き寄せた途端、体育館の方からすごい勢いで誰かが飛び出してきた。

「柿本テメー!」

 声のする方を見ると、牧野が血相変えて俺の方に向かって走って来るじゃないか。
 俺が慌てて藤田から手を離すと、次の瞬間、牧野は俺の目の前にいて、左手は俺の胸倉をガシッと掴み、右手は拳を握り締め、怒りにプルプルと震えている・・・って感じだ。

 ヤバイ!――牧野のこんな真剣な顔、今まで見たこと無いぞ・・・

 殴られると思った俺は、焦って目を瞑り、顔を横に向けた。

 ちょっと冗談キツかったか・・・でも、牧野が学校でこんな行動を取るとは思わなかったし―― って後悔してももう遅いか・・・。

 直ぐに殴られると思っていたのに、ちっともその気配が無いから、俺は恐る恐る目を開けてみた。
「まきちゃん、ダメだよ・・・」
 牧野の振り上げられた拳を、藤田が必死で止めてくれていた。
「でも・・・」
「まきちゃん・・・離してあげてよ」
 藤田の穏やかな声が聞こえると、俺の胸倉を掴んでいた牧野の手から、力が抜けていき、目の前いた牧野が、ゆっくりと俺から離れて行った。

「何だよ! 馨・・・柿本と何の用事があったんだよ? そんなにベッタリくっ付きやがって!」
 牧野の怒りは治まっていない様子だ・・・おやおや? 牧野君、藤田のこと馨って呼んでたんだ――。
「落ち着けよ・・・まき。ごめん、本当は用事なんて無かったんだ。ただ・・・・・・ちょっと試してみたんだよ。俺が『一緒に帰れないって』言ったら、まきちゃん何て答えてくれるかな? って思って――」

「「試した?!」」
 俺と牧野が同時に言った。何だよその理由? 男がそんな事するかよ普通・・・。
「お前・・・ばっかじゃねーの! そんなくだらない事すんなよ!」
 言おうと思ったけど、我慢していた事を牧野が言った。やっぱりそう思うよな? 牧野も普通の奴だよな・・・。藤田は見た目だけじゃなくて、中身も女っぽいのかも知れない・・・。

 ホッとするやら、呆れるやらで、2人の様子をボンヤリ見ていたら、牧野が心底安心したような顔をして、藤田の身体を引き寄せると、ギュッーと抱きしめたじゃないか・・・。
 はぁ、こいつらマジ、バカップル。俺を巻き込むなって感じ。

 俺が、牧野と藤田が出来てること言わなくても、この2人は自分達で噂を広めていくことになるんだな・・・。こんな抱擁、めったに見れるものじゃないよ――。



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放課後はいつも・・・4(牧野)
 まったく・・・藤田の奴、時々わけわからない事を言い出すから困ったもんだ。
「一緒に帰れない」って言ったから、「わかった」って言っただけなのに、何でケンカにならなきゃいけないんだよ?
 「そんなの嫌だ・・・」とか「寂しい」とかって言って欲しかったのかよ・・・あいつ?
大体そんな事、思っても無いし、寂しいって程長期間離れるわけでもないのに、男がそんなハズイ事言ってられるかよ・・・

 そう言えば、俺の反応がつまらないとかも言ってたな・・・一体俺にどんな反応しろって言うんだ?
俺は別にリアクション芸人じゃ無いんだから、面白い反応なんて出来ないんだよ!
 藤田の奴、見かけだけじゃ無くて、中身も女みたいだったのかな・・・グズグズ言うところなんて中学時代に、ちょっとだけ付き合って、すぐに別れてしまった彼女に、似ているような気がするよ。
 ・・・まぁ・・・彼女の場合は面倒臭くて嫌だったけど、藤田のそういう所は、カワイイ・・・とか思ったりして・・・。
 はぁ・・・だけど・・・本当はあの時、俺に何て言って欲しかったんだろう・・・藤田・・・?

「よ、牧野。今日はどんな感じ?」
 部室でユニフォームに着替え終わると、俺の周りに部活の仲間が集まってきた。
「おぅ、もちろんバッチリだぜ」
 さて・・・余計な事を考えるのはやめよう。藤田に言ったら、「余計な事じゃない!」って言われそうだけど・・・・
「今日は負けねーからな!」
 右手同士をパチンと合わせた。
「今日も勝ってやるからな!」

 体育館に行って、走り出した頃にはすっかり自分のペースに戻っていて、自分でもホッとしていた。

 2つのグループに別れ、パスを回す練習をしていると、体育館の開け放たれた扉から、藤田の姿が見えてきた。
 チェッ・・・忘れていたのに・・・。そう思いながら藤田の横顔を見ていると、胸がトクントクン高鳴り始めてしまった。あぁ、俺ってやっぱり藤田が好きなんだな――。

「あれ?」
「どうしたんだよ? 牧野・・・おい!」
 俺は体育館の外の光景に気を取られ、受け取ったばかりのボールを足元に落としてしまった。
皆に何か言われているようだけど、内容が耳に届かない・・・
「あのヤロー!!」
 藤田と一緒にいた柿本が、急に藤田の肩に腕を回して、自分の方に引き寄せているじゃないか!

 その瞬間、俺は部活中だって事も忘れ、体育館のドアの方に向かって走り出していた。
「おい、牧野! 何やってんだ!」
 後ろから、コーチが俺に怒鳴りつけている声が聞こえていた。



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放課後はいつも・・・3(藤田)
 牧野ったら、学校だと何でいつも冷たいんだろう? ベッドの上だと熱くて可愛いのに。
俺に甘えて、「もう1回・・・」って言ってる姿なんて、堪らなく色っぽいし・・・まあ、そのギャップも良いんだけどさ・・・。俺しかしらない牧野か・・・特別って感じで良いよね。

 でも、それにしてもだよ、「一緒に帰れない」って言っても平然としてるし、「いつも一緒じゃなくても良い」・・・なんて言っちゃうなんて、それどうなのよ?って感じ。
俺はいつも一緒にいたいって思っているんだけど・・・好きならいつも一緒にいたいものだよね?
違うのかな・・・?
 それとも、俺たちの関係がバレるのが、そんなに怖いのかな・・・。

 どうせ柿本にバレてるって事は、じきに他の奴等も伝わるって事だと思うんだけど――。
俺はバレても平気・・・俺は牧野が大好き・・・全然変な事じゃないと思ってる。家族だって、俺たちの恋愛を認めてくれてるし。
でも、やっぱり牧野には恥ずかしい事なのかな? 彼女じゃなくて、彼氏がいるって事――。

 そうじゃなかったら・・・牧野・・・俺と恋人同士になった途端に、気持ちが冷めてきちゃったとか?

「おい?」
「・・・」
「なぁ、藤田、なにボケッとしてんだよ? そんなんなら俺のこと誘わないで1人で帰れよ」
 名前を呼ばれて我に返り、横を見てみると柿本が、不貞腐れたような顔をしていた。
「別に誘ってないだろ・・・」
 ボソッと呟いたら、柿本が無言で俺の頭をパシンと叩いた。
「イテ! 何すんだよ」
 何て失礼な奴だ・・・何でこいつに声をかけたんだろう・・・? 多分、牧野にヤキモチ妬いて欲しかったんだよな・・・。でも、牧野は全然気にしていなかったし・・・。
「あのなー、一緒に帰ろうって言ったのはテメーだろが。ふざけんのも好い加減にしろよ・・・」
 柿本が横でブツブツ文句を言い続けていた。
「あ・・・そうだっけ?」
 面倒臭いなぁ・・・あぁ、失敗した・・・。そうだ、ついでだから、柿本に八つ当たりしてやる!
「そうだっけ? じゃねーだろ!」

 俺と柿本は、言い合いしながら、校庭を横切り体育館の側まで来ていた。
体育館の開け放たれたドアから、バスケ部の部員達が走り回っている足音が聞こえてきた。

「・・・やっぱ、かっこ良いよなぁ」
 柿本の向こう側にある体育館のドアから、チラッと見えた牧野を見て俺は思わず呟いた。
だけど、柿本が何を勘違いしたのか、急に俺の肩を抱いてきた。
「ん? 何だよ、やっぱりそう言う事? 俺ってそんなにカッコ良いわけ? 藤田君。マキちゃんから俺に乗り換える?」



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放課後はいつも・・・2(柿本)
 さっきから、藤田と牧野がいつものごとく、いちゃいちゃしている。それにしても、こいつら、何でくっついたんだろうなぁ? 特に仲が良かった訳でもないと思うのに・・・、おまけにここは男子校でも無いし、結構女子のレベルは高いと思うのに・・・。俺にはどうもこの2人が理解出来ない。

 2人が女に縁の無さそうな奴らだったら、まだ少しは納得出来るのかもしれない。
でも、そんな事は全然無くて、藤田はわりかし可愛い顔立ちで、女子には人気あるし、牧野だって口は悪いけど本当は優しい奴だって皆知ってるから、密かに憧れてる子も多いって言うのに・・・何が嬉しくて野郎同士で付き合ってるんだよ?
 しかも・・・だ、こいつらの会話からいくと、抱かれているのはどうやら牧野のようだ。これもまた俺には全く理解出来ない。どう見たって藤田が女役だろ?・・・って、まぁ、俺には関係ないから、いいんだけどさ――でも、気になるよなぁ。


「なぁ、柿本〜一緒に帰ろうぜぇ」
 藤田と牧野の関係について考えていると、急に藤田が俺に声をかけてきた。
ちょっと待った――何で俺と帰るんだよ? 俺のこと誘ってますか、藤田君?

「何でだよ? お前、牧野と帰るんじゃないのかよ?」
 一応遠慮しておかないといけないかな? とか思ってみる。
「いいんだよ・・・あんな奴。ちっとも面白くない」
 藤田が思い切り不機嫌そうな顔をした。何だ・・・夫婦喧嘩をしたみたいだ。
「痴話げんかかよ、俺に飛び火させないでくれ」
 犬も食わない何とやら・・・俺は巻き込まれたく無いね。まぁ・・・新しいネタになるかな?とも思ったりするんだけど・・・。
「別に。ケンカじゃないし。いつも一緒じゃなくたって良いんだって・・・牧野・・・」
 そう言った藤田の表情が、ちょっと悲しげで、俺は何だかヤバイって思った。その寂しそうな顔、微妙にそそられるかも・・・。
 でも、待てよ? こいつってやられる方じゃないんだよな? って事は、俺とそういう関係になったとしても、女役は俺? イヤ、有り得ない。俺は男だから、藤田のアレを受け止めたくはない。
「まぁ・・・別に、一緒に帰るだけならいいけどさ」
「何だよ、柿本? 何か考えすぎじゃないの?」
 藤田に言われてハッとした。「一緒に帰ろう」と言われただけで、「気持ち良いこと事しよう」とか言われた訳じゃ無いんだった。
「え・・・?! 別に考えてないし・・・」
 俺とした事が・・・こいつらに感化されて、恥ずかしい事を考えてしまったよ・・・



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放課後はいつも・・・1(牧野)
「ねぇ、マキちゃん、今日用事があるから一緒に帰れない。先に帰るね」
 部活に行く準備をしている途中で藤田がそう言ってきた。別にいつも一緒に帰れなくたって、俺は全然かまわない。帰宅部の藤田に、俺の部活が終わるまで待っていてもらうのも悪いと思うし、クラスの奴の目が微妙に気になるし・・・。それに、俺はこの間から、柿本に観察されているようで、すごく嫌な気分なのだ。
今の所あいつは、俺と藤田の関係を誰にも話して無いようなのだけど・・・。でも、やっぱりあいつに知られていると思うと落ち着かない――。

「あぁ、わかったよ。じゃな」
 俺がそう答えた途端、藤田がやけに不機嫌そうな顔をした。
「マキったらさ、全然寂しそうじゃないね・・・俺は寂しいのにさぁ・・・」
 教室には、まだ沢山のクラスメイトが残っているっていうのに、藤田はまわりも気にせず俺の腕を引っ張りながらグズグズ言い始めた。
「別に、いつもいつも一緒に居なくたって平気だろ? 毎日こうやって学校で会えるし、休みの日だって・・・」
 俺はそう言いながら、さり気なく藤田の手を払いのけた。
「ふーん・・・なんかつまんないなぁ。マキちゃんの反応ってさ」
 口を尖らせ、眉間にシワを寄せた藤田が、俺の頭をペチンと叩いた。
「じゃあ、何て言えばいいんだよ? 『何で一緒に帰れないのさ』とか『一緒に帰ってくれないなんて嫌だ!』とか言えばいいのかよ?」
 そりゃあ、藤田と居るのは嬉しいけれど、藤田の時間まで束縛したいと思っているわけじゃ無いのに・・・。
「・・・そうじゃないけどさ、マキって学校だといつも冷たいんだよなー。ベッドの上じゃ別人な・・・」
「お前ねぇ」
 藤田の発言に驚いてしまい、俺は慌てて藤田の口を手でおさえた。
 教室で何を言い出すかと思えば、ベッドの上だぁ? あのな、いつも思うけど、お前は色々余計な事言い過ぎなんだよ!

 確かに・・・ベッドじゃ、俺、かなり別人だって自分でも思うよ。それもこれも、俺が抱くはずだったのに、お前に抱かれてしまってるからだろ――。
まぁ・・・俺が下手過ぎるのか何なのか、こいつん中に入ろうとしても、なぜか上手くいかなくて・・・。結局、毎度俺が鳴かされてしまってる訳で――って、変なこと考えていたら顔が熱くなってきちまったじゃないか!

「ねぇ、マキちゃん・・・なーんか、いやらしい事考えてるでしょ?」
 さっきまで不機嫌そうな顔をしていた藤田が、ニコニコ嬉しそうな顔をしながら俺の顔を見上げた。
「うるさい! 帰るんだったら、さっさと帰れよ」
 教室にいるって事を思い出し、慌てて藤田の頭をパコンと叩いた。
「分かったよ! 帰るよ」
 藤田が俺の前からサッと居なくなってしまった。


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今日もお休み・・・
・・・ちょっとお休みしてます・・・ゴメンなさい。

出来れば明日はUPしたいと思ってます

教室を出たら・・・7 (牧野)
「じゃあね、馨。あんまりイチャイチャしないようにね、母さんいるんだから」
「分かってるよ、今日は何もしないんだもんね、マキちゃん?」
 藤田が俺の手を取って、可愛い笑顔を向けた。藤田姉弟は普通に会話しているけど、俺としては内容的にちょっと恥ずかしい・・・。
「ふーん、そうなんだぁ? じゃ、私は出かけてくるから」
 藤田の姉貴がそう言いながら、部屋のドアを開けた。
「また彼氏んとこ?」
「まぁね。だって、会いたがるんだもん、あいつ」
 ドアの外で振りむいた藤田の姉貴が、俺達に向かって綺麗に微笑んだ。
やっぱり藤田によく似てる――俺は思わず見とれてしまった。あ、だけど、決して藤田が女だったら良かったとか、姉ちゃんと付き合いたいとか思ったわけじゃない。俺は、藤田馨本人が好きなんだから――。

「はいはい、わかりましたって。じゃあね、いってらっしゃい」
 藤田の言葉に送られて、藤田の姉さんが階段を降りていった。俺は、放心状態のままその様子を眺めるばかりだった。

「さて、続きをやろうか?」
 藤田がそう言って、何事も無かったかのようにゲームを再開した。
「なんか・・・藤田、お前ってすごいよな」
 しばらくしてから俺は、藤田に向かってそう言った。
「え? 何が?」
 ゲームに夢中になっている藤田が、面倒臭そうに呟いた。
「いや、お前の家族がすごいのかな・・・」
 俺は、負けが決まりそうになっていたゲームのコントローラーを投げ出し、藤田に擦り寄ってその華奢な身体を思い切り抱きしめた。
 俺の藤田は、可愛くて、面白くて、明るくて、前向きで・・・俺、ますますお前が好きになる――。

「何もしないように言ったのはお前だろ・・・」
 ゲームオーバーになった画面を睨んだまま、藤田が呟いた。
「あ・・・ごめん」
 俺は謝りながら、藤田の身体から腕を外した。
 だけど、今のでスイッチが入ってしまったのか、藤田が俺に熱い視線を向けた。
「ね、してもいいよ。牧野・・・」
 マズイ・・・。
「バ、バカ言え。お袋さん居るじゃん」
 俺は焦って後ずさりしながらそう言った。
「俺、声出さないようにするから・・」
 それって、俺がやるって事か・・・そりゃ、いつかは、藤田を抱こうと思ってたけど、今日? それも母親がいるのに?
あの・・・俺、まだ女も男も抱いた事ないんですけど・・・。

「いや、そういうことじゃないだろ・・・藤田」
 俺は壁際に追いつめられて、逃げる所がなくなってしまった。
「なら、マキちゃんが我慢する? 声?」
 藤田がギューッと俺を抱きしめた。
「ま、待て、今日はダメ、しない。今度・・・この次の時こそは、俺がお前を抱くから。だから・・・」
 そう言って逃げようとしている俺に、藤田がキスを仕掛けてきた。そして片手は俺の股間へと延びている――おい、それはやっぱり、ヤバイでしょ? 藤田・・・。
「もう、マキちゃんが悪いんだよ。今日は我慢しようと思ったのにさぁ」
 藤田の手が微妙なタッチで動き出す・・・。
「ん・・・ダ、ダメだって」
「何だよマキ・・・その声、誘ってるみたいだよ?」


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