ゼリーのグラスやスプーンを片付け始めたシュンが、考えるような仕草をしながら話始めた。
「・・・」
「・・・サチと・・・付き合うの?」
シュンが俺に背を向け、テーブルを元の場所に戻しながらそう聞いた。
「サチさんは・・・」
「待って・・・」
シュンが俺の言葉を止めた。
「え?」
「やっぱり、いいや・・・聞かないほうが」
シュンが後ろを向いたままそう言った。
「あのねシュン、サチさんは進藤と付き合っているんだ」
俺の言葉を聞くと、シュンの動きがピタリと止まった。
「何それ・・・」
振り向いたシュンが、俺を見て不思議そうな顔をした
「俺じゃないんだ。サチさんが好きだった人って」
「・・・じゃあ、なんで・・・あいつ・・・」
シュンが呟くように言った。何かを考えているような表情だった。
「何でだろう・・・」
シュンの瞳が、以前のように俺に何かを訴えているようで、急に胸が苦しくなった。
「鷹人・・・」
しばらく黙って俺を見つめていたシュンの瞳が、見る見るうちに涙で一杯になっていた。
「良かった・・・鷹人・・・」
椅子に座ったまま両手で顔押さえ、シュンが涙声でそう言った。
「・・・鷹人が生きていて・・・本当に良かった・・・」
小さな声でそう言うと、シュンはそれからしばらく、声も出さないで泣いていた。俺はどうして良いか分からず、傷が痛むのも忘れてシュンの背中をずっと撫で続けた。
「俺、大丈夫だから、そんなに泣かないでください。心配掛けて、済みませんでした。あの・・・仕事に復帰するまで少し時間が掛かるかも知れないけど・・・」
「・・・良いんだよ・・・仕事の事なんか。俺、鷹人が刺されたって聞いて、すぐに病院に飛んで来たかった。鷹人が死んじゃったらどうしようって思った・・・もし、もう2度と会えなくなったら・・・俺」
シュンが顔を上げ、ポタポタ流れる涙を拭こうともしないで俺を見つめていた。
「俺・・・鷹人が・・・」
何かを伝えようとしているのがわかる。だけど、その言葉は、2人の間では、もう言ってはいけないって思っていること・・・。
「鷹人が・・・鷹人が生きていてくれて・・・それから・・・サチが進藤さんと付き合っているってわかって・・・良かった・・・」
「もう泣かないで・・・俺、生きてますから・・・。一緒に良い本作りましょうね。シュンと一緒に仕事が出来て、俺すごく嬉しいですよ」
そう声をかけて、笑顔を作る。言いたい言葉は心の中で呟きながら・・・。
それから、背中を撫でていた手を、シュンの頬にそっとあてた。
「シュンには笑顔の方が似合うよ・・・」
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