進藤が感心したようにそう言った。確かに・・・一途と言うか、無謀と言うか・・・
「・・・ちょっと俺も驚いた。自分の子供に、俺と同じ名前付けちゃうなんてさ――。いくら字が少し違うとは言ってもなぁ・・・」
「まぁね、俺にも考えられないけど・・・あれは、あの人なりの愛の表現だったんだろ? 先の事考えてねーよな」
「そうだな」
愛の表現方法――か。俺が密かにシュンを絵に描いていた事と同じような事なんだろうか?だけど、いくらなんでもなぁ・・・。
「でもさ、お前のどこが良かったんだろうな? お前もしかしてテクニシャン?」
1人で過去の思い出に浸りそうになっていた俺に、進藤が嫌らしい笑顔を向けていた。
「いや、そんなわけないと思うけど・・・って、何アホな事言ってんだよ」
「はーん、まったく。いつまでも思い出に浸るなよ。アホ」
シュンと過ごした夜を思い出して焦ってる俺に、意地の悪い笑顔を向けながら、進藤が電話の受話器を握った。
「なぁ、鷹人」
「な、何だよ!」
また、進藤にからかわれるのかと思って身構えたら、進藤は再びマジメな顔をして俺を見ていた。
「もし、絵を買いたいと言って来たのが、あの人だとしたらどうする?」
受話器を持った進藤が、最後に確認するように俺に聞いた。
「・・・あの人だとしても・・・売らない」
もしかしたら・・・シュンだったのかもしれない・・・そう思ったけど、俺は何も聞かなかった。
「分かったよ」
個展が終わってから暫くすると、ありがたい事に仕事の依頼が数件あった。 数週間かけてそれらの仕事を片付けたある日の午後、久しぶりに進藤の事務所に訪れた。
依頼主のとのミーティングも終わり、事務所の女の子の入れてくれたコーヒーを飲みながら一息ついていると、進藤の部屋に呼ばれた。
「次の仕事が来てるんだけど、どうする?」
ソファーに腰掛けた途端、進藤がそう言った。
ありがたいけど、この頃休みも無く描いているような気がするのだが・・・。
「急ぎの絵ばかりだったからなぁ、少しじっくりやれるのがあると嬉しいんだけど・・・」
あまり乗り気じゃない返事をしたのだけど、進藤は俺の話を全然聞いてくれていないようだった。
「こういうの初めてだと思うんだけど、やってみるよな?」
やってみるよな? も何も、そういう言い方の時って、俺に何の相談無く、既に進藤が勝手に受けてしまっているんだろ? 俺は心の中で呟いた。
昔からそうだったけど、進藤は結構強引なんだよな・・・。
「どんなの?」
「今日、打ち合わせなんだよ。一緒に来るだろ?」
「それって、一緒に来いって事だろ?」
「その通り」
俺は「はいはい」って答えるしか無かった。まぁ・・・進藤が決めてくる仕事は、ハズレが無いから大丈夫だと思うのだけど・・・。
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