「俺の方がビックリしたよ。お前、パソコンの前に座ったまま、また動かなくなってたし……」
パジャマ姿の秀利が、ブツブツ呟くように言った。
「悪い――。なんかさ今日は俺、お前と出会った頃から今までの事が、映画みたいにずっと頭の中に流れてる感じなんだよ」
秀利の方に身体を向けて、許しを請うように、その目を見つめた。
学生の頃と変わらない、澄んだ瞳が俺を見つめ返した。
「だから、さっき泣いてたんだ? 離れてた頃の事でも、思い出してたの?」
秀利が照れたように笑った後、急に悪戯っ子のような顔をし、涙を拭うかのように指を俺の頬に当てた。
「え? 俺、泣いてた?」
夢見て、泣いてた?――俺は恥ずかしくなって、頭をポリポリとかいた。
「な〜んてね、うそ」
秀利がニッコリ微笑みながら、俺の鼻をキュッと摘んだ。
「ったく…何だよそれ……」
俺は秀利のオデコを人差し指でツンと押した。
秀利が幸せそうな顔をして、俺にギュッと抱きつき、耳元に唇を寄せた。
「愛してるよ、悟」
俺は秀利の頬を両手で包み込み、目を見つめながらゆっくり唇を重ねた。
――俺も愛してるよ――
「なあ、悟ったら、そんな過去の事を考えるより、俺達の未来の事を考えようよ」
唇を離した後、秀利が俺の両肩に手を置き、俺の目を覗き込みながら言った。
「え? あぁ。そうだよな」
秀利の微かに濡れた瞳を見て、俺は照れてしまい、頬が熱くなるのを感じた。
「じゃ、近い未来の計画なんだけど……」
「何?」
「この後、昼飯食べたら、映画見て、買い物に行って、夕食は、この間お前が教えてくれた、会社の近くの居酒屋で……なんてのは、どう?」
「はぁ? 未来には違いないけど、近すぎない?」
「良いじゃん。わかりやすい未来で。だって俺、久しぶりに、おばちゃんの肉じゃがとひじきが食べたくなったんだよねー」
秀利が、昔と変わらない、俺の大好きな笑顔を向けてくれた。
「わかったよ。じゃ、このメールに急いで返信するから、秀利は出掛ける用意をしてて――」
「了解。早く終わらせてよ」
「オッケー。お前の為に、すぐに終わらせるから」
軽くキスすると、お互いの作業に取り掛かった。
俺は、愛する人の側に居られる幸せをかみしめながら、ノートパソコンのキーを打ち始めた。
―― おわり ――

