−甘嘘別館−  
♪ハッピーエンドのBL小説を連載します♪

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Author:りょう
BL小説を書いてます。
よろしくお願いします☆
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本館へ行かれたい方は、コメント等でお問い合わせ下さい。
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☆おことわり☆ 
「出会わなければ」には、実在のバンド、メンバーと似た人物が出てきますが、実在の人物とは一切関係ありません。

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恋の行方…最終回
 その日は学食でカズミと飯を食った後、次の講義まで時間があったので俺達は学食の端でのんびりとくつろいでいた。
だけど、カズミは昨日の夜レポートで徹夜したせいか、ウトウトし始めたかと思うとあっと言う間にパタッと机に突っ伏して眠ってしまった。
相手が俺だから安心しきっているんだろう・・・まぁ、講義が始まる頃に起こしてやるとするか――。
俺はカバンの中にあるiPodを取り出そうとカバンの中を探り始めた。その時だった・・・

「よ、山崎」
「あ、どうも・・・」
 目の前に現れたのはテニスサークルの先輩、三年の上村さんだ。なかなかのイケメンで優しい人なんだけど、女の子にはちょっとだらしがない人のようだ。元カノだか今の彼女だか時々自分でもわからなくなるらしい。
 彼女と他の女の子達が、上村先輩のことでもめている場面に出くわしたことがある。上村先輩はそのことについて知っている様子は無いんだけど――。

「何だよ山崎。今日は1人なのかと思ったら・・・・・・これ須藤じゃん。お前らいっつも一緒にいるよな」
 俺の向かい側の席で眠っているカズミの横顔を覗き込んでから先輩がそう言った。
「はぁ、仲良いもんで・・・」
 俺はそう言って適当に笑顔を作った。

 俺とカズミが大学に入ってからもうすぐ一年が経とうとしている。だけど、俺達の関係を知っている人は今の所居ない。上村先輩も俺とカズミはちょっと仲の良すぎるやつら・・・程度にしか思っていないだろう。

 カズミとは大学に入った頃、自分達の関係について話し合ったことがある。
いつか、俺とカズミの関係が怪しいんじゃないか――と言われるようになったり、感づかれてしつこく聞いてくるような人があらわれるんじゃないかって。だからその時は、変に誤魔化さず、俺達が恋人同士であることを話してしまおうと決めた。
 ま、あんまり深刻な話にならないように、冗談ぽく話してしまえばいいと思っているんだけど――。
そうすればそれ以上深く聞いてこないだろう。


「ミチがさ、山崎はいつも須藤と居るから、なかなか話しかけられないって文句言ってたぜ。あいつお前のこと気にいってるっぽいよ」
 上村先輩はそう言いながら寝ているカズミの隣に座り込んだ。
 ミチっていうのは・・・確か上村さんの何人目かの元カノだったか? いやいや違うぞ、最近上村先輩が狙っているってカズミが言っていたような気がする。同じ敷地内にある短大の2年生だとか言ってたっけ。
「はぁ、そうなんっすか? ミチ先輩・・・ねぇ」
「なに、その興味ない感じ。ミチって結構胸デカイし、キレイっぽいし、良いと思わね?」
 胸がデカイとか何とか、ホントに俺は興味が無いんだよね。いかにも体目当てみたいな付き合いが多い上村先輩とは感覚が違うんだよ――。胸は無くても、俺と同じブツがついていたとしても、心底好きだと思える相手と付き合うのが本当の恋愛だと俺は思うのだ。

「まぁ、キレイっちゃキレイですよね。でもミチ先輩には俺なんかより、上村先輩の方が似合ってると思いますよ」
「あはは。そうか? そう思うか?」
 俺の言葉を聞いた上村先輩は、メチャメチャ嬉しそうな顔をしながら頭をかいた。

「あ、山崎くん発見!」
 その時、渦中の人、ミチ先輩が上村先輩の後ろに現れ、俺に向かって手を振った。面倒だと思いながら俺は小さく頭を下げた。
「何だよ、みっちゃん。俺も居るんだけど・・・」
 上村先輩はミチ先輩の声に反応して後ろを振り返りながら文句を言っていた。
「上村先輩は良いの、いつだって話出来るんだもん。山崎君とは話す機会があんまりないし・・・」
 ミチ先輩がそう言いながら上村先輩の後ろを回って俺の隣に座り込んだ。
「残念だけど、須藤も居るし」
 上村先輩が意地悪くそう言った。するとミチ先輩は俺の正面で眠っているカズミに視線を向け、チッと舌打ちをした。ミチ先輩の本性が見えたような気がして、俺はますます彼女に対して苦手意識を強めていた。

「なーんだ。須藤っちも居たのか。でもいいや、今寝てるし。ねぇねぇ、山崎くん、前から誘おうと思っていたんだけどさ、今度一緒に映画とか行こうよ」
 ミチさんは目の前の上村先輩もカズミの存在も無視するように体をこちら側に向け、俺に話しかけた。
「えーっと、休日は忙しいから・・・」
 俺はとりあえず、やんわりと断わろうと試みた。「休みの日が忙しいイコール恋人がいる」ってことにいて欲しかったのだ。

「休みの日じゃなくても良いわよ、平日の夜とかもやってるじゃない」
 だけどミチ先輩は気づいてくれなかった・・・。しかもミチ先輩は俺の腕にさり気なく胸を押し付けてきたじゃないか。わざとなのが明確すぎる・・・。俺はカズミにはない柔らかな胸のふくらみに少し戸惑ってしまった。

「あの、悪いんですけど・・・俺、付き合ってる人居るから、時間がある時にはそいつと居たいんですよ」
 俺は早く話を切り上げたいと思い、そう言いながら、必要以上に近づいてきたミチ先輩を避けるように椅子を横に移動させた。
こうやってハッキリ意思表示をすれば諦めてくれるだろう――そう思ったのだけど・・・・・・。
「うそ?! 彼女とか居るんだ? ちょっとショック。でも、良いじゃない・・・その人が忙しくて会えない時とかあるでしょ? そういう時に行こうよ、ね?」
 自分の誘いを断わるなんて信じられない・・・とでも言いたげな、微妙に不機嫌な顔をしながらミチ先輩がもう一度誘ってきた。

「みっちゃん、そんなに強引に誘うなよ・・・山崎が困ってるだろ? なんなら俺が付き合ってやるし」
 上村先輩がそう言ってミチさんをたしなめた。・・・ってより、自分をアピールしたい感じかな。
「だって、山崎君にはいっつも須藤君がくっついてるから、こんな時でもないとなかなか誘えないんだもの」
 ミチ先輩が口を尖らせながら言った。
カズミが一緒でも一緒じゃなくても、ミチ先輩の誘いに乗るつもりはこれっぽっちも無いんだけど・・・。

「悪かったね、僕が居て」
 早くこの場から逃げ出したい――そう思っていると、目の前に居たカズミがムクッと起き上がってミチ先輩をキッと睨みつけた。俺の背中をツーッと冷や汗が流れた。周りの空気が一瞬凍りついた感じ。 だけど、すぐにカズミは可笑しそうにクスクスと笑い出した。俺はそんなカズミの様子を見てホッとため息をついた。

「そうよ〜。須藤君がいると、何だか山崎くんに声かけにくいのよねー。なんでかなぁ? 別に気にしなくてもいいと思うんだけどね。変よねー」
 そう言ってミチ先輩もクスクスと笑いだした。
「そうでしょー? 先輩、何でだかわかる?」
 カズミが笑いながら言った。
なんとなく不穏な空気を感じ、不安な思いでカズミを見つめていると、俺の視線を気付いたカズミが、こちらに向かってパチンとウインクして見せた。俺に任せておけって感じなのだろうか?

「うーん?」
「何でだか教えてあげようか?」
 そう言った時、カズミはもう笑っていなかった。少し怒っているようにも見えるけど――もしかすると・・・。
「え? えぇ・・・まぁ・・・」
 ミチ先輩はそう言いながらあからさまに不満そうな顔をしてみせた。
「妙な言い方だなぁ、須藤」
 隣で聞いていた上村先輩は不思議そうにカズミを見た。

「こういうことなんだってば」
 カズミがパッと立ち上がって俺の横まで来ると急に屈みこみ、座っている俺の頬にチュッとキスをした。
「はぁ?」
 上村先輩が素っ頓狂な声を上げた。
「わかんないかな?」
 カズミがイライラしたような声を出し、もう一度俺にキスをした。今度はキッチリ唇を狙ったキスだった。こんな行動までとるなんて・・・カズミはかなりミチ先輩に腹を立てているに違いない――ボンヤリ考えながらカズミのキスを受けていたら、次第にディープなキスになってきてしまい、俺は慌てて頭を振った。

「あ、ミチ先輩。俺の恋人、こいつなんです。だからゴメンなさい、一緒に映画とか行けないです」
 俺はそう言ってから席を立ちカズミの横に並び、ミチ先輩に向かってペコリと頭を下げた。

「ちょっと待ってよ、今のなに? ホモの真似までして私に山崎君を諦めさせたいの?」
 ミチ先輩が怖い顔をしながら俺達を睨みつけた。ミチ先輩は、今のカズミのキスが、俺を諦めさせるためにとったウソの行動だと思っているのだろうか・・・。

「いや、真似とかそういうわけじゃ無いと思うけど・・・・・・」
 上村先輩が苦笑いしながらそう言ってから「・・・そういうわけじゃなかったら・・・マジでゲイカップルなのか?」とぼやくように呟いた。
「好きなように思ってくれて良いですよ。とにかく、ミチ先輩とは付き合えないんで、ゴメンなさい」
 俺は爽やかにそう言うと、カズミの肩に腕を回し、二人で学食を出て行った。


「あーあ。やっちゃったなぁ・・・」
 学食を出て人気の少ない場所にあるベンチに腰を下ろすと、しばらくしてカズミが呟いた。ちょっと後悔しいている感じなのだろうか?
「・・・気にしなくて良いよ。上手く断われなくて、ズルズルとしつこく誘われそうな感じだったから、正直助か
ったよ」
 頭をクシャクシャと撫でながらそう言うと、カズミが顔を上げてニコリと笑った。
「ゴメンな・・・フライングで。なんかさ、半分寝ぼけてたんだよ・・・卓志が女にのぼせ上がっている夢見ちゃってさ。んで、眠りが浅くなってきた所に、ミチ先輩の猫なで声が聞こえてきたから・・・。俺の卓志に何言ってん
だよ! って思っちゃって・・・」
 カズミは寝起きは機嫌がイマイチなことがあるから――。夢見が悪かったらなおさらって感じか。
「俺、愛されてるってことだろ? すっげー嬉しいんだけど」
 俺がそう答えると、カズミがホッとしたような顔をした。
 
 恋人として付き合うようになってから、カズミも俺のことが好きだと言葉や態度であらわしてくれるようになった。だけど、それは俺達二人だけで居る時に限ったことだったから――今回のは一番ストレートだったな・・・。
上村先輩とミチ先輩がどう思ったかわからないままだし、これからは少し痛い視線もあるかも知れないな。だけど、最初から覚悟していたことだから・・・まぁ、良いか。

「そうだよ、すっげー愛しちゃってる。ホント自分でも信じらんないくらい」
 カズミがそう言いながら俺の背中をパンパンと叩き、その後、腹を抱えて笑い出した。
「俺も愛してるぜ、カズミ・・・つーわけで、午後サボる?」
 愛の告白をされて急に二人きりになりたくなった俺は、隣で笑っているカズミに小さい声で問いかけた。
「・・・うーん。愛してるけど、講義は受けて帰る」
 次はカズミのお気に入りの教授の講義だから、無理だとはわかっていたけれど・・・。
「チェッ・・・隣の席で邪魔してやる」
「邪魔したら今日はオアズケだからな」
「えーマジ?」
「マジ・・・」
 シュンとしょげかえっている俺に、カズミが笑いながら「椅子の上で手を重ねるくらいなら良いよ」と小さな
声で囁いた。やっぱりカズミって可愛いよな――。俺は嬉しくてベンチに置かれているカズミの手に自分の手
を重ねた。その途端カズミの頬が赤くなり、慌ててカズミは俺の手を払いのけてしまった。
「ココじゃダメだろ?」
「ハイハイ・・・わかりましたよ」
 学食でキスしたのは誰だよ・・・と思いながら、カズミの真っ赤な頬を眺めていた。

「さて、行こうか」
 カズミがそう言って立ち上がった。
「おっと、もうそんな時間か? って言うより、もっと早く時間が過ぎて欲しいんだけどなー」
 俺はカズミの隣に立ち、そう呟いくと、カズミがまた可笑しそうに笑った。

 チェッ、なんだよその余裕ありありな感じ――帰ったらタップリかわいがってやるからな! カズミ。



 と言うわけで・・・俺達は同じ大学に通うようになり、楽しくてラブラブな学生生活を送っています。
 二人の親密な部分の話も、いつか話すことが出来れば・・・なんて押し付けがましい事を思っている俺でありました。

最後まで読んでくれた皆様、どうもありがとう。俺はカズミと一緒にもっともっと幸せになります!

 それでは、またどこかでお会いすることがあれば――


  



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恋の行方…34

「あら? 帰るのね」
 階段を降りていると居間のほうからカズミのお母さんの声が聞こえて来た。その途端、カズミが慌てて繋いでいた手をパッと離した。
 少しでも長くカズミと繋がっていたいのに――そう思った途端、フウとため息が漏れてしまった。

「はい、おじゃましました。ケーキとっても美味しかったです、ご馳走様でした」
 俺はすぐに気持ちを切り替えるとカズミのお母さんに挨拶をした。カズミと付き合うことになれば家に来る機会も増えるだろう――今のうちに良い印象を与えておかなくちゃ・・・。
「あら、良かったわ。また遊びに来てね。あ、そういえば、良美が変なこと言ってたみたいだけど・・・何だか山崎君とはもう別れたからとか・・・」
 カズミの母親がそう言いながら居間から顔を覗かせた。
俺の背中をツーッと冷や汗が流れ始めた。良美さん、余計なこと言ってないと良いんだけど――。 

「あ・・はい。そうなんです。すみません・・・」
 俺は慌てて笑顔を作ると、カズミの母親に向かって頭を下げた。
良美さんと別れて和美君と恋人として付き合うようになりました・・・なんていえるわけがない。普通の親だったら、簡単に理解してくれるなんて思えないから――。

「そうなの? まぁ、良美は何だか全然気にしていないみたいだったけど・・・でも、良くわからないこと言ってたのよね」
 カズミの母親は俺とカズミの顔を交互に見て、眉間にシワを寄せた。その様子に、俺とカズミは苦笑いを返すだけだった。
「愛情に近い友情がどうのこうの・・・とか、初めてカズミに負けたとか・・・? カズミあんた、何のことだかわかる?」
 俺は、良美さんの言ったことを理解していないカズミの母親に感謝してしまった。これからもあまり深く考えないでくれると良いんだけど――。

「さぁ・・・? 全然わかんないよ・・・」
 カズミがごく普通に答えた。カズミは思ったよりも度胸が据わっているのかも知れない――。
「お母さん、すみません。良美さんとは・・・別れることになったんですけど、カズヨシ君とはこれからも仲良くさせてもらいたいと思ってます――よろしくお願いします」
 俺は今の俺が出来る精一杯の挨拶をした。両想いっぽくなったとはいえ、これから二人の付き合い方がどんな風に変わっていくのか、まだよくわからない。
・・・出来れば、カズミとはずっと仲良くしていたいけど――。

「あら、全然構わないわよ。良美ったら本当に好き勝手やってる子だから・・・ゴメンなさいね。山崎君も疲れちゃったのよね・・・きっと」
「え・・・いえ・・・・・・」
 お母さんの言葉に思わず頷きそうになってしまった。だけど、まさか「そのとおりです」とも言えず、俺は頭をかきながら俯いた。
確かに良美さんとの付き合いに疲れていたけれど、別れた本当の理由は他にあるんだもんな――。

「そうだよ・・・姉貴は・・・その・・・マイペース過ぎるんだよ」
 俺が黙ってしまうと、カズミが慌てたように言葉を続けた。
歯切れの悪い言い方になったのは、良美さんが俺達のことを知っているから、強く出るのは得策じゃないと思ったんだろう。
「まぁ、でも、和美に良い友達が出来て、母さん安心したわよ。良かったわね、和美」
 あまりにも純粋に俺達の友達関係を喜んでいるカズミの母親を見ているうちに、俺は少し罪悪感を覚えてしまった。だからと言って、カズミとの関係をただの「友達」に戻すつもりは全然無いんだけどね――。
「うん・・・良かったよ」
 カズミが俺の方を見ながらそう言った。カズミは俺と目があうと、恥ずかしそうに微笑みながら小さく頷いた。カズミのそんな様子が嬉しくて俺は満面の笑みを返していた。

 その後俺は、もう一度カズミの母親に挨拶をして玄関を出た。

 しばらく歩いていくと急に足音が近づいてきて、突然背中をポンと叩かれた。ビックリして振りかえると、そここはカズミが息を切らせながら立っていた。
「母さんに買い物頼まれた・・・」
 グレーのパーカーを羽織ったカズミがそう言いながら俺に小さな財布を見せた。
「そうなんだ? じゃ、途中まで一緒に行ける?」
 ラッキー! もう少し一緒に居られるんだ?
「えっと・・・コンビニが駅のそばにあるから、ついでに送っていくよ」
 カズミがそう言って俺の隣に並んだ。もしかしたら、カズミも俺と一緒にいたいって思ってくれているんだろうか――俺はくすぐったいような気持ちで歩き出した。

 駅まで約10分・・・かな・・・。
少しでも長く一緒に居られるようにと思い、俺はいつもよりも遅いペースで歩いた。
カズミの腕が微かに触れた瞬間、手を繋ぎたい衝動にかられ、微かなもどかしさを感じた俺だった。



 帰りの電車にゆられながら、俺はさっきまでのことを思い出して小さくため息をついた。
 抱きしめた時に見せたカズミの驚いた表情、唇の感触・・・夢みたいだったな――それに「僕も好きみたい」なんて言葉を言ってくれたっけ・・・。
良美さんは良美さんで、俺がカズミと付き合うことをアッサリ許してくれたし――。
まさか、こんなにトントン拍子に話が進んでしまうなんて今でも信じられない感じだ。

 夢オチとか? ―― いや、まさかねぇ・・・


 その夜、俺は微妙に不安な気持ちのまま布団に転がって携帯を眺めていた――

 夕食の時、いつまでたっても箸を動かさない俺に母親の拳骨が直撃した。メチャメチャ痛かったのだけど、そのおかげで、やっぱりカズミとのことは夢じゃなかったんだと実感できた・・・けど・・・それでも、夢じゃ無かったけれど、もしかしたらカズミの一時の気の迷いだったりして? それともからかわれていたとか? なんて、どうしても悪い方向に考えてしまう俺だった。

「メール・・・来るかな?」
 俺は手の中にある携帯をボンヤリと眺めていた。期待と不安で胸が苦しい感じだ・・・そんな風に思っていると、携帯から俺の大好きな曲が流れ始めた。
「よし!」
 俺はメールが届いたと思い、確かめもせずに携帯を布団の上に放り出し、両手を握り締めガッツポーズをとっていた。
「あれ?」
 メールだとすぐ止まるはずの着メロが、なかなか鳴り止まない・・・ってことは?
「お? メールじゃないじゃん!」
 携帯を手に持ち、確かめてみるとメールではなくカズミから電話が掛かっていることがわかった。

「はい・・・・・」
 俺は慌てて通話ボタンを押し、携帯を耳にあてた。
「あ、えっと、須藤です」
 カズミの声が電話から聞こえてきた。下腹にズキンと来た。正直者の俺が好きな相手に反応している感じ――。
「さっきは、ありがとう・・・」
「え、うん・・・どういたしまして・・・」

 挨拶の後、俺達は妙に緊張したようなギコチナイ会話をしていた。
だけど、週末に見に行く映画の話になったら二人とも急にテンションが上がって、普通の会話が出来るようになった。まだ初々しいカップル・・・って感じだろうか――。


 その後、カズミに促されデートの予定もたてた。のんびりしたカズミと違うような感じで、意外とシッカリした性格なんだということがその時わかった。
まだまだ、お互いに知らないことがたくさんある・・・まぁ、これから少しずつ知りあっていけばいいさ。
これからは友達から一歩進んだ関係になるんだから――そう思った途端、再び俺の中の雄が反応しそうになった。
 未知の関係についても・・・・・・色々勉強していかないとな――。


 それから、電話の最後に、良美さんが合コンで新しい彼氏を見つけたという話をわざわざ携帯で知らせてきたんだという話を教えてくれた。どうやら良美さんの今度の相手は、お金持ちのボンボンらしい。
 カズミは、良美さんの行動が軽くて節操がなさ過ぎると文句を言っていたけれど、俺としてはホッとしたような思いだった。


 
 そしてその週末、俺は初めてカズミとデートをした。
とは言え、周りから見れば、普通に友達同士で出かけているようにしか見えないと思うけど。でも、それでも、俺はカズミと一緒に出掛けられてメチャメチャ幸せだった。



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恋の行方…33
「カズミも友達やめるのはイヤだろ?」
 俺は眉間に微かなシワを寄せて困ったような顔をしているカズミの目を、そっと覗き込んだ。
「そ、そりゃそうだよ。せっかく趣味があって、一緒に居ると楽しいって思える友達ができたのに・・・」
 カズミがボソボソと呟くように言った。俺はホッとしてカズミの髪をスッと撫ぜた。
「だったら、そんなに悩まないでよ」
 俺の言葉を聞くと、カズミの表情がパッと明るくなったように思えた。
「・・・あ・・・うん。そうだな」
「じゃあ、付き合ってくれるってことで良いよね」
「え? あぁ、まぁ・・・」
 照れくさそうにカズミがそう言った。多分、俺の言ってる「付き合う」って意味とは違う気持ちでカズミは答えたんだと思う。それでも俺は嬉しかった――。

「大好きだよ・・・」
 たまらず俺は、カズミをギュッと抱きしめて耳元で囁いた。それから俺は答えを求めるように「カズミは?」と呟いた。
「うん・・・まぁ・・・あのさ、好きか嫌いかって聞かれたら、好きなんだけど・・・」
 カズミが俺の視線を避け俯きながら答えた。
「それでも良いよ。俺の『好き』とは違うのはわかってる。でも、嬉しい」
 俺はカズミを抱きしめている腕にキュッと力を入れた。カズミは頭を小さく振りながら、俺の胸に顔を押し付けた。
 あぁ、ホント・・・ドキドキして仕方が無い――。

「あ、あのさ、受験勉強頑張ろうな」
 しばらくの間俺の腕の中で小さくなっていたカズミが、モゾモゾと腕の中から抜け出しベッドに腰掛けた。
「何だよ〜そんな事、思い出させるなよ・・・」
 幸せ気分に浸っていた俺は、急に現実に戻されたような気分になり、シュンとうな垂れながらカズミの隣に座り込んだ。カズミと触れ合っている腕や脚が熱を持っているような感じだった。

「だ、だって、一緒の大学に行くんだろ?」
 カズミが焦ったようにそう言った。
「そーだったな。なぁ、講習会、一緒に行こうな」
 俺はカズミにを近くに感じたくて、髪を撫でたり頬にそっと触れたりしていた。俺が触れるたびにカズミの頬がますます赤くなっていく――。

「う・・・うん。あ、映画にも行くんだよね?」
「そうそう。週末に行こうぜ。やった、デートだ」
「いや、そのデートって言うほどのものじゃ・・・」
 カズミが可愛くて、俺はカズミの手の甲に唇を押し当てた。するとカズミは驚いたように俺の手を振り払った。
「夏休みになったら、海にも行こうな」
 めげずに俺はそう言った。だって、カズミはちっとも俺のそばを離れようとしないんだ。俺のこと、嫌いなってはいないはず。映画だって一緒に行こうって思っているんだから――。

「え、まぁ・・・受験生だけど・・・一回くらいなら良いかな」
 カズミが小さく頷きながらそう言った。
「部活引退したら、毎日一緒に学校行こう」
「・・・そ、そうだね」
「学校帰りに一緒に勉強しようぜ」
「あ、うん・・・」
「大学に行ったら、一緒に住もうか?」
 俺はカズミの肩に手を回した。
「え? イヤ、まだそんな」
「カズミ・・・大好きだよ」
 俺は次々と言葉を投げかけた。そのうち、かカズミは俺の肩にチョコンと頭をもたれかけて来た・・・。信じられないような状況だ――。

「何か・・・僕も・・・みたい」
 小さな声が聞こえてきた。俺の「大好き」への答えなのか? カズミも俺のこと好きだと思ってくれたのか?!
「みたい・・・って何だよ」
 俺は照れくささのあまり、カズミの頭にコツンと額をぶつけると、ぶっきら棒にそう呟いた。 
 本当は「僕も何?」って突っ込みたい所だったけれど、そこまで言ったら、きっとカズミは答えてくれないだろう。きっと、俺の良いように考えてもいいってことだよな・・・?
「だって・・・まだ、何となく・・・」
 迷ったようにカズミが答えた。
「ま・・・良いや。すっげー嬉しい」
 俺はそれ以上聞かずにいることにした。とにかく、カズミも俺のことが好きみたい・・・って言ってるんだ。あっと言う間に両想いになったじゃないか!


 それから俺達は身体を寄せ合ったまま色々な話をした。だけど、緊張のあまり、俺は自分でも何を話していたのかよくわからなかった――。でも、とにかく、メチャメチャ幸せなひとときだったってことは確かだった。


「そろそろ帰らないと・・・」
 窓の外を見ると、すっかり外は暗くなっていた。本当はいつまでもカズミと一緒にいたい気分だったけれど、俺はカズミの右手を握りながらそう呟いた――。
「・・・あぁ、そうだよね」
 俺の言葉を聞いてカズミが慌てたように顔を上げた。
「明日、朝練サボっちゃおうかな」
 カバンを背負って帰る用意をしてから、俺はカズミの座っている前に戻り、ポツリと呟いた。
明日もカズミに会いたい・・・そう思った俺の口からは、自然にそんな言葉が出ていたのだ。
 だけど――
「ダメだよ。山崎は走るの好きなんだろ?」
 当たり前のようにカズミにそう言われ、俺は無性に寂しくなった。今の今までいい雰囲気だったのに――。
でもまぁ、まだまだ俺の気持ちの方が強いんだから仕方ないか――。

「だって、今は走ることよりもカズミと居る方が好きなんだもん」
 俺はカズミの肩に手を置いて身体を屈め、カズミの額に唇を寄せた。俺の顔が近づくと、カズミがスッと目を閉じた。唇にキスしちゃいたいよな・・・だけど今は我慢だ・・・。
 俺が唇を離すと、カズミが俺を見上げて寂しそうな顔をした後、一生懸命笑顔を作った。
「あさって、会えるじゃない。映画観てからどっかに遊びに行こうよ」 
 俺はそう言って目を瞬かせているカズミの頭に腕を回し、ギュッと抱きしめた。
「どっか・・・・・・ねぇ」
 今の俺は、二人っきりでベタベタ出来る所に行きたいんだけど――
「あ、えっと、CD見に行くとかさ」
 俺の心の声が届いてしまったのか、カズミが慌てたようにそう言った。
「うーん。そうだな。どこが良いか、お互いに考えておこう」
 公園とか行ってのんびりするのも良いかな・・・そう思ってカズミを見ていると、パチッと視線が合った瞬間、カズミは俺の身体に顔を押し付け、両腕を俺の腰に巻きつけた。
「う・・・うん。了解」

 しばらくそのまま抱き合っていたけれど、さすがにもう帰らないといけないと思った俺は、カズミと携帯のアドレス交換をして、その後二人でカズミの部屋を出た。
 先に階段を降り始めたカズミの隣に並び、俺はカズミの手をサッと握った。カズミが驚いたように俺の横顔を見つめていた。


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恋の行方…32
「あのね、二人で勝手に僕のことを、『あげる』だの『もらう』だの言ってるけどさ、僕はモノじゃないんだからね!」
 カズミが怒ったようにそう言った。だけど、その顔を見るととても怒っているようには見えなくて、思わず俺は笑顔を向けてしまった。俺を見たカズミは、真っ赤になって困ったような顔をするだけだった。

「はいはい、わかってるわよ、カズミはモノじゃなくて、『恥ずかしがり屋で無愛想な男の子だ』って事」
 良美さんが笑いながらからかうようにそう言うと、カズミが良美さんをギロリと睨んだ。
「ちょっと、姉貴! 何だよその言い方!」
 だけど、良美さんはカズミの文句など聞こうとしていないようで、ぷいと顔をそらすと部屋から出ようとドアの方に歩いていってしまった。

「ねぇ、それよりカズミ、二人でイチャイチャするのはかまわないけどさ」
 ドアの前で立ち止まった良美さんが声をひそめながらそう言って、くすっと笑った。
「・・・イチャイチャって・・・何だよ・・・」
 カズミが不機嫌そうな声で言い返した。
「だって、さっきギューッて抱き合ってたじゃないの」
 良美さんがそう言って振り返り、パチンとウインクして見せた。

「いや、そうじゃなくて・・・」
 カズミとしては不本意だったんだから、イチャイチャとか言われたらいい気分はしないだろうけど――。
「まぁ、それは良いんだけどさ。ねぇ、あんた達」
 良美さんが再びイヤラシイ笑顔を浮かべて俺とカズミを交互に見た。
「何だよ・・・」
 カズミがベッドの上で身構えた。俺も良美さんが何を言い出すのかとヒヤヒヤしていた。

「家ではエッチいことしたらダメだからね」
 良美さんが右手を口元に添えながら小さな声でそう言った。
「はぁ?」
 カズミは一瞬何を言われたのかわからなかったようで、キョトンとした顔で良美さんを眺めていた。
その後、良美さんが微妙な手つきをすると、カズミが顔を真っ赤にしてプルプル震えだした。
「姉貴のアホ!・・・・・・そんな事するかーーーー!」
 だけど、良美さんは怒り出したカズミを見て、楽しそうに笑っているだけだった。
「まぁ、カズミが声を我慢すれば、色々と出来なくないけどね」
 部屋のドアを開けて出て行く寸前に良美さんがそう言ってもう一度笑った。 
「・・・声って・・・・・・?!」
 そう聞き返したカズミに、良美さんは不敵な笑顔を浮かべたまま投げキスをした。
部屋の外からは良美さんの機嫌よさ気な鼻歌が聞こえてきた。

 
「何なんだよ、姉貴の奴・・・・・・」
 良美さんが出て行った後、カズミは力が抜けたようにベッドの上に座り込んだ。
俺はカズミがあまり不機嫌ではないように思えて、微妙に期待していた。良美さんとは無事別れられたことだし。
でも、まぁ一番の問題は・・・カズミの気持ちだけど――。

「さて・・・良美さんのお許しも出たことだし」
 俺はカズミの前に座りなおしてから、カズミの両肩に手を置いてジッと目を見つめた。
「・・・な、何?」
 カズミは俺から視線を外しソワソワし始めた。だけどちっとも逃げようとしていないんだよな――。
「カズミ、こっち向いて」
 俺はソッポ向いてしまったカズミの顔を俺の方に向けたくて、右手でカズミの頬に触れた。するとカズミは驚いたようにビクッと体を震わせてから上目づかいで俺を見た。
カズミのその表情があまりにも可愛くて、俺は思わずニヤニヤ笑い出してしまった。そんな俺を見てカズミが不思議そうに目を瞬かせた。
 
「あのね、改めてカズミに言いたいんだけど」
 俺は咳払いを一つしてからそう言った。目の前で微かに震えているカズミ・・・腕の中にギュッと抱きしめてしまいたい!
「な・・・何?」
「カズミ、俺と付き合ってくれる?」
 俺は自分でも顔が赤くなるのがわかった。言っちゃったよ・・・とうとう。
男に告白なんてありえない? そんなのもう、どうだって良いんだ!

「付き合うって・・・もう友達じゃん・・・」
 わかっているのかわかっていないのか? カズミがはぐらかすように答えた。
「あのさ、ただの友達じゃなくて――俺はカズミと、将来的にはエッチな事もするような、そんな付き合いをしたい・・・って思っているんだ」
 ストレートにそう言った。回りくどいこと言って、誤魔化すようなことはしたくない。
「またまた・・・エ、エッチなこと・・・だなんて・・・」
 カズミが顔の前で一生懸命手を振って拒否しようとしていた。だけど、俺の気持ちは止められない。って言うか、このぐらいでメゲテはいられない、そう思っていた。だって、カズミを失うなんて考えられないんだよ。
「すぐにじゃなくて良いんだよ。少しずつ俺のことわかって行って欲しい。俺もカズミのこと、もっともっと知りたい。カズミと一緒に居るのが楽しいってわかったから・・・もう、離したくないって思った。
良美さんにも嘘ついていられないって・・・」
 俺がそう言うと、カズミが困ったような笑顔を向けた。
「そりゃさ、僕も・・・山崎といるのは楽しいけど・・・」
 困ってるみたいだけど、嫌がってない。そう確信した俺は、話を一歩進めることにした。
「なぁ、カズミ? キスもイヤじゃなかったでしょ?」
「え・・・・まぁ・・・」
 俺の問いかけに、カズミは真っ赤になりながらも小さく頷いた。

ヤバイ・・・・・・マジで可愛すぎる。

 その後、カズミは何かを一生懸命考えているようだった。俺はたまらずカズミの頬に軽く触れるだけのキスをした。カズミは相変わらず逃げもせず、ボンヤリした表情で俺を見上げていた。
そして、俺がもう一度キスをしようとすると、急に目が覚めたようにカズミが頭を振り出した。
「ちょっと、や、山崎・・・」
 慌てたらダメだよな・・・小さく頭を振っているカズミを見ながら、俺はそう思った。
「な? あんまり深く考えなくても良いよ。取り合えず、このまま友達のちょっと延長みたいな感じで居られたら俺、すごく嬉しいし・・・」
 友達の延長・・・だけど俺はカズミが好き、そして恋人としての付き合い方がしたいと思ってる――。
俺の気持ちは伝えられたし、後はゆっくり進めて行くしかない。

 頑張れ俺。カズミは俺のこと、嫌いじゃないんだ――。


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